妻亡くしQOLがなんだって?

入院中の父親の容態がよくない。全く食べてくれない。「心臓と肺はよくなってきてはいるんですけど、食べてくれないことには退院は難しいですね」とドクターが。食が細くなっているため、ペースト状の食事がでてくるのだがこれも誤嚥性肺炎を招きかねない。つい半年前までは母親の介護ができていた人が、あれよあれよという間に弱くなっている。四十九日を前に心不全を悪化させ、酸素欠乏症に陥り入院。持ち直したように見えたのに、秋にまた病院に戻ることになりそこから退院できていない。父親からしてみれば「数字は悪くないんですが」、生きる気力がなくなってしまったんです。「毎晩寂しい寂しいとおっしゃってて」妻をなくしたことがまだこたえているのです、「まったく食事を取ってくれず」、あの人がいないこの世に生きてどうするというのでしょう、ということなのでしょうか。夏の心不全の原因だって「強いて言えばストレスでしょうか」とドクターもおっしゃっていたじゃないですか。「お父さんのクオリティ・オブ・ライフが、これでよいのかって看護師としてでなく一個人の人間として考えてしまって」看護師さん、ありがとう、私たち、この病院が好きだし、病院の窓からお父さんの好きな山が見えるし、できたらここに少しでも長くいさせてあげたいの。

「大晦日に何食べたい? わたしもここに泊まって一緒に年越しだよ」と病室で話しかけなくてはならないほどの容態になるなんて、夏には想像していなかった。女性だったら「あれが食べたいこれが食べたい」とすぐ思いつくのに、父親ったら執着がないのか「なにというものは特にないな」と返してくる。「鰤は?」「あれなら食べられるかな」、食べられるかなじゃないんだよ、食べるんだよ! 食べて年を越すの! 年を越して夏の一周忌を執り行うの! 

という急展開の年末を迎えております。参りましたな。

2 COMMENTS

いち

お父さん、鰤食べて「ああ、美味しいな」と
思ってくれると良いね。
何かが美味しいと思えたら、
人間、元気がちょっと出てくる気がする。

うむ。

寒いから、ウカヌマさん風邪引かないようにね。

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