目白くるひどい男の家の木に/鳥飼茜「先生の白い嘘」

[まとめ買い] 先生の白い嘘(モーニングコミックス)

今までいろいろな漫画を読んできたつもりでしたが、これほどまでにひどい男が出てくる漫画を読んだことはなかったよ。早藤、早く捕まって! 逮捕されてしまったほうがいいよ! 出所しても同じことを繰り返しそうだけど! ほんとうに早く捕まって。

あらすじはAmazonから。
「このマンガがすごい! オンナ編」2014で第9位を獲得した、注目作家鳥飼茜の青年誌最新作、登場!原美鈴は24歳の高校教師。生徒を教師の高みから観察する平穏な毎日は、友人・美奈子の婚約者、早藤の登場により揺らぎ始める。二人の間に、いったい何があったのか?――男と女の間に横たわる性の不平等をえぐる問題作、登場!
第一話は掲載誌の公式サイトからお読みいただけます。

品の良いタッチの絵柄に惹かれ、昨秋第一巻が無料配信されていたときに読んでみました。上で公開されている第一話の穏当な雰囲気からは想像を絶する展開が、早速第一巻の中盤に待っています、ぎゃー。いやいやいや、これ漫画だし、現実社会にこんな鬼畜な男がおるわけなかろうて、漫画ひとつでこんなに心がざわつくこともないんやで、とその時はそっと閉じ、第二巻を読むのは控えておきましょう、そうしましょう、としていたのです。なにしろ第一巻から、人妻にレイプされてEDになってしまう男子高校生のお話で飛ばしてきたりしているのですから。

しかし、先日、なにかのきっかけで続く二巻をポチり、人生で読んできた漫画の中で読んだこともない最悪の鬼畜な展開に身がおののく、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』で峠草平がベルリンでしでかしたことが可愛く見えるくらいの鬼畜さ! 指を震わせながら第三巻をポチリ、暴かれる学園の女王の暗部に再び旋律。恐る恐る第四巻をポチり、怪文書騒動の見開きでガクガクブルブル。引き続き第五巻をポチリとした後に山中行軍の場面で膝が震え、最新刊第六巻の「うわ キんモ」に慄然・・・。女性教師の日常を描いた漫画で、ここまで怖い目に遭うなんて読み始めたときには思ってもみなかったですよ。

この恐ろしい場面の中心にいるのは毎回「(主人公の)友人・美奈子の婚約者、早藤」なのですが、本当に早く逮捕されていただきたい。男の人ってこんなに恐ろしい生き物なんでしたっけ?

物語は男女間の圧倒的な性の不平等をテーマにしています。読み終わったあと、良質な漫画評ブログを読み漁り、心の中にざらりと残る読後感のもやもやをすっきりと言語化してくれているテクストを探し漁ったりしました。これは女性が読んだら「ぎゃー、女の敵!」で済まされられるけど(済ませちゃいけない)、男の人が読んだらそうはいかないんでしょうな。集団暴行を描いた真木よう子主演の「さよなら渓谷」を見終わった後の男たちのゲンナリとした顔を思い浮かべたりもしました。

鳥飼茜さんご自身のインタビュー記事もありますので、こちらもあわせてぜひ。鳥飼さん、美人・・こんなふんわか美人からド直球弾劾漫画が繰り出されるのか・・・。
身近な性被害を“男女平等”でごまかしたくない 『先生の白い嘘』作者・鳥飼茜が語る

早く完結してほしい、そして早藤を早く逮捕してほしい・・・、心からそう願います。「漫画ってファンタジーだよね、ある意味・・・」と頬に涙を伝わせながら明後日の方向を眺めたくなったりもします。気力体力が充実してるときにどうぞー。弱ってるときに触れるとかなりエネルギーを奪われてしまうと思います。

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