青蜜柑老後は金で買えますか?/早川裕子「新版 老後はお金で買えますか」/生前は母がお世話になりまして

新版 老後はお金で買えますか?―14の実例全てが教訓

1995年に書かれた老後本を2010年に補足して出版されたものです。

1995年の老後というのはなんだかもう凄まじくって「バブルの最中、坪1500万と言われた(せんごひゃくまん!)千駄ヶ谷の実家の土地を売ったら十数億転がり込んできてしまい、相続税対策として日本中の土地を買い求めた、しかしその値段も下がってしまい、確かに相続税対策とはなった。これがとるべき正しい対策だったのかどうかは今でも判断つかない」話だとか、「ケチケチばあさんがケチケチしつづけ二十億も溜め込んだのに、最後は木造の民家で垂れ流しのまま孤独死してしまった」だの、「良家のボンボンとして生まれ育ったおじいちゃん、千坪あった都心の土地は切り売り切り売りしていま残ってるのは二百坪。お人形さんのような嫁と一緒に暮らしてたけどそのばあさんが死んでからは、お手伝いの人に養子縁組を迫られ(撃退)、そのお手伝いの姉たちにどうしてうちの妹を養子にしないんざますかと詰め寄られ、近くの親戚が『おじいちゃんが危ない!俺が見守らなくっちゃ』と警戒していたところ、おじいちゃんが一度だけ仕事したことのある三十も年下のフランス人が潜り込み『ぼくー、おじいさんの養子になりましたねー、あ、このフランス人男性ですか? 僕のパートナーです、おじいちゃんと僕とパートナーの三人で仲良く暮らしてまーす』などという事案に発展! 早く誰かhagexさんに教えてあげてなきゃな事案に進展!」だのまぁすごい事例集だらけで。
よく日本の資産の六割は老人たちが握ってるという話を聞きますが、1995年のこの本を読んでみると、あながち間違っちゃない情報なんだろうなと理解できます。

 

母親が寝たきりになる前、この病気は完治することがなさそうだと知ってしまった私は、母親の定期貯金のちょっとした残額を見て「これ卸して、やってみたいこととか行ってみたい場所があれば一緒に行かない? わたしもお金出すよ」と持ちかけたことがある。最初は「それもいいなぁ」と言っていた母親ですが、其の話を出した一ヶ月後に「それでもいくらかかるかわからないから、取っておくわ」と答えてきました。いまになってみれば、そんな状況でもその時の母は元気だったんだから無理してでも連れ出せばよかった、家のリフォームとかもっと早くやってあげればよかったと思う。
難病指定になってから母親の医療費はかかっても月一万円、その他自宅においた医療機器が別に一万円かかるくらいで、健康保険でほとんど賄うことができ国には手厚くみてもらいました(だから破綻するんだけれども・・・)。施設に入ることもなかったのでお金はそんなにかからなかったのですから、最後の二年間は国民年金だけでも毎月の暮らしにお釣りがでるくらいだったんですから。

7月の始め、母親が亡くなる二週間ほど前のこと。姉と二人で実家で介護する機会があり、空き時間に二人で金融機関を回って各所に散らばっていた預金を調べてみたことがある。果たしていくらになるのかと電卓を叩いたら、ちょっとした金額になった。母親は「うちにはお金がない」「金がない老後は惨めだ」とよく言ってたけれども、あらまこんなに。十分な葬儀代だって準備されているし、このあとどこか老人ホームに入ることだってできそう。
「おかあさーん、調べたらこれだけあったよ、安心していいよー、なにも心配することないよ」と伝えたら、「えぇー、そんなにあるの?」と本人がびっくりしていた。「んもう、お母さんったらしっかり者なのにうっかりやさんねーあははうふふ」とその場は和やかにおわったものでした。

・・・しかしいま、思うとそれがよくなかったんだと思う。あれでお母さん安心しちゃって「じゃーもーいっか、それだけあればお父さんもなんとかなるよね。うん、もーしんどいから死んじゃってもいいかな」って気分になっちゃたんじゃないかと思う。

 お・か・あ・さ・ん! 

 そこで安心して死んじゃったりしないでっ!

『たかが金、されど金とはこのことよ』とこの本を読み終えたいまそう思う。

 

作者は、子供のいない大叔父夫婦(祖父母の弟さんですよ!!!)を十年以上かけて面倒みることになるんですが、もう一度いう祖父母の弟さんですよ!! そんな縁遠い人を!? 大叔父夫婦、旦那さんは元NTT、奥さんは元教師ということで資金的にはまったく問題なかったのですが、とにかくつましく暮らしていらっしゃったがいよいよ二人して老人ホームに。ここでまとまった金額を動かすことになるのですが、倹約家なのでちょっと渋る。「最初はわしが家内の面倒見るから」と月額30万で済んでいた費用も、おじいちゃんも体力がなくなってきてからは二人分面倒見てもらうことになり月額63万までになっていく。そんなのが一年続いたら年間720万になりますね、きゃー! 支払い請求は著者のところに送られてくるが、著者は夫婦の銀行口座を管理させてもらっていて、しかもその口座にしっかりとお金があったからよかったようなものの、それもなかったらこのご夫婦はどうなっていたことでしょう。著者さんは結局最後にご夫婦と養子縁組を組み、遺産も相続することになるのですが、そうでもしなければなかなか報われないお話。大叔父夫婦って・・・わたしの記憶を辿ってもじいちゃん・ばあちゃんの兄弟って会ったことないっすよ・・・。

上の相続税が怖くて土地を買い漁った家族の話は「振り回されるほどのお金に接するな」という教訓だと思うし、二十億あっても垂れ流しの孤独死の話からは「金があっても信頼できる人間がいなければ意味がない」ということだと思う。この本で紹介されていたお金がなくても爽やかに立派に生きていけるご老人の話は、心優しい友人やゲスくない立派な親族に囲まれた人ばかりだった。あぁつまりは、人、人であるということよ。しっかりと生きよう。不義理せずにきちんと生きるのだ。

山崎元さんが「つまりは年金+数万円で十分暮らせるから、一億貯めようなんて言われても耳を貸さず、FXも株も投資用物件もやらずインデクス投信だけで備えるのだ」と言ってるのがあながち嘘じゃないのかもしれませんな。

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!


しかし、うぅぅぅ・・・・
「生きるつらさは大変」80代夫婦が無理心中か(2016/10/09 06:27)

2 COMMENTS

シモムラ

お・か・あ・さ・ん!
実家のそばで子育てをしていると、母の有り難みをひしひしと感じます。私にとって世界の中心は「おかあさん」なのかなぁと。自分の軸に母がいるというか……お父さんゴメン。

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ukasuga

ね、ほんと、「お・か・あ・さ・ん!」でしょー!?
我慢強く病に耐えた人でしたが、ほんとに安心しちゃってもう。
お父さんって・・・ほんと、ねぇ、いやそのいやその・・・

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