本も好きファッションも好き雨の月（私のことじゃないよ）／la kagu の明日はどっちだ？

神楽坂駅前にある、新潮社の本の倉庫跡地を利用した隈研吾建築都市設計事務所による「la kagu」。運営はサザビーリーグ。開業当初は「神楽坂駅前に、本とライフスタイルが一体化した素敵ショップができた！」と思っていそいそと足を運びました。その日のことをいまでも覚えています。深く記憶に刻まれた思い出は「買えるものがない、なんにもない」。一枚八万円もするメゾン マルタン マルジェラのプルオーバーとか、一本１５万くらいするマルニのマフラーとか、マチが広すぎて実は使いにくいんじゃないかという懸念が晴れないひとつ１８万もするジェイ&エム デヴィッドソンのハンドバッグや、アムステルダムの女性はサイズがでかいですなぁーと嘆息しちゃう一本五万円のアクネ ストゥディオズのパンツとかしか売ってないんですもの。ライフスタイルコーナーは「ごめん、それ、ミッドタウンの三階で見た！」「あ、すみません、それ、銀座のアコメヤさんで見た！」「それは室町のコレドで見たなー」。二階のアウトドアコーナーは、本格的アウトドアには物足りなく、街着としても先進的すぎる難しウエアが多め。家具売り場はかわいいです。

田園都市線から東西線乗り継いでやってきた若くておしゃれなカップルとか、東西線で中野方面からやってきたおぼしき品のいいサブカル女子のお客さんを見かけますが、あそこで洋服や鞄や靴を買ったと思しきショッピングバッグを提げている人を見たことがありません。人の話し声がわんわんとまわる高い天井の下のカフェは学生のカフェテリアみたいで落ち着かない。大人・・大人はこういう場所が好きなのか？　私が思い描く大人はこういうところが好きなのか？　さらにさみしかったのは店員さんが本に対して愛情が薄いというか商品知識がなく、「この本ありますか？」の質問に応えられる人が少ない。

「あれ、本とライフスタイルが一体化した素敵ショップじゃなかったの？」と思うわたしは、2014年開業当時のニュースを読み返しましたの。
Fashion Press 神楽坂に新商業施設「ラカグ」オープン − 衣食住に“知”を融合した大人のライフスタイル提案

多分ねー、店舗コンセプトであるところの「融合された知」というものが、期待していたほど濃くないことが寂しい原因ではないのかと思うの。「この本はディスプレイなのかしら、それとも買えるものなのかしら」ってことがまずわからないの。本の所在を尋ねられる店員さんもいないの。作家さんごとの売り場もないの。新潮社さん、もっと本たくさん持ってるよね？　それこそ売るほどあるよね？　もっと並べてみてもいいんじゃないかしらー。

本屋さんなのか、デフレ日本では買う人の少ない洋服ばかり並べた本屋さんなのか、本を読みながらくつろげるカフェなのか、どういう店舗がわかりかねて毎回戸惑う。本を読む人と１枚８万円のブラウスを買う人が同じユーザーとして姿を結ぶとも思えない。店舗を２週間休業して大規模改装したあともまだそういったお洋服を売ってた。「わー、すてきなセレクトご本と、すてきなセレクトウエアが一度に買えて、私、超幸せ！」ってなるのかな？　ならなくね？　ヴィンテージのシャネルのバッグとかＹＳＬのジャケット売る素敵古着屋さんを入れたほうが、本読みさんとの価値観が近いんじゃないかちらどうかちら、pass the batton とか。「すてきセレクトご本と、80年台のYSLのジャケットが一度に買えてわたし、超幸せ！　東西線に乗って神楽坂まで来てよかった！」という喜びは、なんとなく想像できるのよー。がんばってほしい。もっと本置いてほしい。本の売上だけ比べたら、お向かいのかもめブックスさんのが頑張ってるんじゃなかろうか。la kagu さんがんばってー！