今週の本と映画と高層階/吉村昭のゴールデンカムイ 「赤い人」

おねいちゃんが東京に遊びにきたので二泊三日でつきあった。「高層階から夜景撮りたい」青年甥も一緒だったので、横浜と虎ノ門と池袋の標高の高いところを渡り歩いて楽しかった。池袋では初めてのサンシャイン水族館へ。ビルの上のちっちゃい子供だましな水族館かと思っていたけれどなかなか侮れない展示内容で、館内のタリーズの休憩時間も含め3時間も滞在してしまいました。あそこにタリーズ作った人、偉い、慧眼!

吉村昭「赤い人」

新装版 赤い人 (講談社文庫)

囚人たちの北海道開拓裏面史。明治十四年、赤い獄衣の男たちが石狩川上流へ押送された。無報酬の労働力を利用し北海道の原野を開墾するという国策に沿って、極寒の地で足袋も支給されず重労働を課せられる囚人たち。「苦役ニタヘズ斃死(へいし)」すれば国の支出が軽減されるという提言のもと、囚人と看守の敵意にみちた極限のドラマが展開する。(講談社文庫)

吉村昭の本は年に数冊読むようにしているのですが、この十年読むたびに「野田先生、吉村昭結構読んでらっしゃいますよね?」と思う機会が多々あり、本作はその中でも「ゴールデンカムイの種本じゃないですか!」な内容で、あ、もしかしてファンのみなさんの間では一般常識だったりしました?

明治初期、石狩の奥地・月形村に樺戸監獄を作るところから始まります。
樺戸は石狩の奥地。当初、羊蹄山麓の胆振地方、十勝川沿岸、石狩川上流須部都太が集治監の候補地としてあがり、後に樺戸集治監初代典獄となる月形潔自らが土地の選定を現地に足を運んで行う。彼らは馬を使って室蘭から苫小牧経由で札幌へ二日間の旅程で到着している。札幌から須部都太までは道なき道を行くが、所々に入植している民家に宿を借りつつ歩みを進める。
月形自身は福岡藩出身で佐賀の乱の鎮圧で出世した人物だが、たとえば船着き場などで村の長として出迎えにあがる人物がかつての仙台藩支藩の家老であったりする。明治維新とは。

囚人の過酷な生活は想像以上の苛烈なもので、農地づくりの開墾も道作りも想像していた何倍も過酷。あの赤い囚人服だけの装備で夏も冬も裸足で働かされる。二人組で鎖で繋がられた状態で、脱獄した者には3kg近い鉄球を足首につけられ、そこの皮だってズル剥けだし、お腹もすくし、食べるものもないし、樺戸集治監開設一年目には医療品も人権もなくて冬場には足のあかぎれがひどくなり足先から腐り最悪切断される、そして死ぬ。ひどすぎる。

札幌の麦酒工場も出てくるし、「猥雑ノコト有ル」ため房内に囚人が偶数にならないようになってるし、看守の仕事は想像より厳しく重責で減給も半分とか全額というレベルのエグさで門倉看守部長はあのゆるさでよく勤まってたなって呆れ驚くし、海賊房次郎(大房房次郎)も稲妻小僧(坂本慶次郎)も贋作師熊崎長庵も出てくるし、炭山労役で失明する囚人ももちろん。明治42年4月には山火事の延焼から網走監獄は焼け落ちているし!! 

ご興味がありましたらぜひ。吉村昭の文章は淡々と進むので、感情を持っていかれる暇がないのですぐ読めると思います。はー、「北海道の道には囚人の死体が埋まっている」というのは比喩でもなんでもなかったんだな、と(遺体は共同墓地に埋葬されていたそうです)。Kindle unlimited で読んだけど、面白かったので電書で書い直しました。皆様もぜひ。

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なんか最近欲しくなっちゃった★
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※腕が痛くてじっとしていられなくて映画は見てない一週間でした。

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