総括スカーレット
ドラマの中で描かれているような場面に生身の人間が実際に出くわしたら、大げさに泣くわけでもなく大声でがなりたてることもなく、案外あっさりした反応だったりするけど、心の動きだけはどうしても隠しきれなかったりする。今朝最終回を迎えた「スカーレット」はそういう演技ができる役者さんたちがたくさん登場するドラマでした。
オープニングのクレイアニメが、このドラマで描く物語を語っているのだと気がついたのは年が明けた頃。大変な力作のクレイアニメだし、またその物語のあらましがわかったところで「じゃ見るのやめた」という気分に一ミリもならなかったとても丁寧な作り。
俳優陣が素晴らしかった。特に主演の松下洸平さん、妻の貴美子と口論しているとき、喉の奥で熱い塊を飲み込みそれをこらえるような表情をしたときは、こういう演技ができる俳優さんがいるんだと感心したものです。
あの人はほんとうに33歳なんでしょうか? ドラマの後半戦ではとてもそうは思えない落ち着いた佇まいでした。八郎沼という琵琶湖にも負けないビッグサイズの湖沼を生み出し、彼はさっそうと次のステージに進んでいくんでしょうね。
林遣都さん、最終回の直前回では、地方の自治体の観光課長そのものになりきっていて驚きました。一体どういうところに取材にいって、役作りをしたのでしょう。主人公の友人役の大島優子さんもよかった。HUNTERとかじゃない、農作業用の白いゴム長と野菜を入れる背負い籠があれだけ似合う元アイドル、なかなかいない。母親役を演じた富田靖子さん、あんな素敵な女優さんになっていたのか、目標にしてきたい。主役を演じた戸田恵梨香さん、女子中学生から中年のお母さんまで見事に演じきっていた。作陶の訓練もよくされたんだと思う。この先が楽しみですなぁ。さぁ、早くケン・ローチ監督、日本にやってきて!! この布陣でなにかひとつ映画を作ってください!
また、「なんでか知らないけど、みんなが集まってゆるーく情報共有できちゃう不自然な設定の飲食店」がなかったのもよかった。地方を舞台にしたドラマは「あんな毎日みんな喫茶店に集まらんじゃろう」と思うことが多いけど、スカーレットはそのへんがうまかった。友達の実家が経営している雑貨屋が商売の先行きがよろしくなく喫茶店に鞍替えしたとか、下宿人の男性が勤めている喫茶店に用事があって行くとか、男同士だけでゆっくり話ができる、寡黙な亭主が仕切る居酒屋「あかまつ」とか、登場する飲食店の設定が自然でよかった。
サウンドトラックの巻
で、わたくし、このドラマのサウンドトラックを買おうかどうかモニョモニョしているのですが、アマゾンのレビューを見て逡巡しているところ。詳細はこちらを御覧ください。
そうか、まだまだ収録曲数が足りないのか・・・!!! 主人公の貴美子が作陶するシーンで流れるピアノの楽曲が素晴らしくよくて、あの楽曲をいつもそばに置いておきたいんだけど、アレが入ってなかったら寂しいなー。
この思い、数年前に体験したことがあります。あれはそう、ユーリオンアイスのサウンドトラックを購入し、「キングオブJJとかサマルカンド序曲が入ってるのは嬉しいんだけど、大会が終わったあと酔っ払ったユーリが踊りまくって『ビーマイコーチヴィクトール』っていうときにかかってたあの曲(Yeah Yeah Yeah ハヤシベトモノリ)が抜けているのはなんてことでしょう!」と憤激していたときのあの気持ち。
などと嘆いていたら数カ月後に第二弾が登場し、嬉しいことにお目当ての曲はそちらに収録されておりましたので、ホクホクしながら購入しました。第一弾が2016年12月、第二弾が2017年7月の発売です。その時差7ヶ月、出してくれて感謝します。
で、スカーレット、なんとこの3月にサウンドトラック第二弾が発売になったそうです。なんだってーーー! 2枚あれば間違いなくあの楽曲も入っていることでしょう。
というわけで、よいドラマ、よい俳優、よい女優、よい音楽の、よい朝ドラが終わってしまいました。半年間ありがとうございました。亜鉛結晶釉、辰砂、自然釉!! 覚えましたよ!