河童の話

河童を探している人が、最近近所に出回っているらしい。
玄関のドアの前に真っ白いお銚子がおいてあったら、それは、河童を探している人が目印に置いていったものだという。夜ふけてからこっそり家に入って、押入れの中にいる河童をさらっていくのだそうだ。「あんたの家も最近来ているんじゃないの?」と姉がいう。誰もうちに河童を探しになんか来ていないはずだ。だいいち私の家に河童などいない。
お手洗いの前の小さい物入れの中に、死んだおばあちゃんがくれた緑色のお裁縫箱が置いてある。ある夜のこと、真夜中にトイレに行くとき、その物入れのドアが開いていた。物入れは、その小さいドアが開くと、自動的に中の電気がつく仕組みのものだ。廊下の先にぽわっと灯りがついている。その中のお針箱の蓋があいているのが見える。誰がいじったのだろう、私一人しか暮らしていないこの家で。蓋を閉めようかそのままにしておこうかと考えていたとき、何かの気配がした。近くにいた猫の耳がピンと立ったのがぼんやりした灯りの中で見えた。玄関の前で物音がしたので、そっちの方向を見ている。ドアの向こうのなにかを見ている。気味が悪くなり、足音を立てずに玄関まで近づき、ドアの覗き穴から外を見る。誰もいない。ただ、ドアの前に白いお銚子がちょこんと立っているのが見えただけだった。
という夢を見た。気味の悪さで目が覚めた。
もう一度寝ます。風邪悪し。
芥川龍之介の「羅生門」「河童」ほか6編 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 近代文学編)
芥川龍之介の「羅生門」「河童」ほか6編

4 COMMENTS

MI子

夢としては吉夢だと思います。
しかし見ている間はいやな気分だったでしょう。
そして目覚めたときも。
ウカちゃんを撫でてゆっくり横になってください。

返信する
スガ

河童って吉夢なの? えっ!
続編で、私の家の窓が全部割れるというのも見ました。いやーん。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください