ピカソ 魂のポートレート展


サントリー美術館はこぶりな美術館だと思うのですが、その中にいっぱい、今までみたことのない作品が。作品の脇に添えられた、作品名を書いたカードの「1979年 代物弁済」という文字が、あぁ・・・税金すごかったんだね、ピカソさん・・・。
展示の順は、若いときの作品から最晩年まで時系列で並んでおり、その多様な表現力に圧倒される。入ってすぐに今回一番見たかった、上の作品初期・青の時代の「自画像」が。油彩なのに、ものすごい透明感があって、思ったよりもとても明るい色の作品でした。背景の青がすごくきれい。唇がやさしいきれいなサーモンピンクでした、意外。上の画像だと随分血色悪そうなんですけどね。

「牧神パンの笛」、あたたかで穏やかな地中海の海をバックにたたずむ青年二人。大きな作品でした。その他「ピエロに扮するパウロ」「海辺を走る二人の女(駆けっこ)」など有名な作品が続き、一番印象的だったのは、「ミノタウロスと牡牛」というコーナー。
ミノタウロスとはギリシャ神話に出てくる半身半獣の怪物。凶暴で性猛々しいミノタウロス、ピカソは自分をその怪物に重ね合わせて作品を生み出すのですが、それがまぁ、「えぇー、ただのエロオヤジじゃん!」という赤裸々で生々しいものばかり。おどろおどろしい赤い夕焼け空(だと思う)の下でワイルドっぷりを発揮しつつ若い娘っこを強姦したり、奥さんを意味する大きな手がミノタウロスを抑えようとするのだが、ミノタウロスご本人は若い愛人の死体を抱きしめ、画面の片隅には次の若い愛人が、ベールをかざし、その遺体を覆おうとしてるのか・・・、ほんとにもう心理的葛藤をなんら隠すことなく、一枚の絵にしてしまう、このおっちゃんのエネルギーときたら!!!

ドラとミノタウロス(コンポジション)

ヴェールをかざす娘に対して 洞窟の前のミノタウロスと死んだ牝馬
すごい! ミノタウロスのコーナーは、魂のポートレートというタイトルにふさわしい、ひきつけられてやまない絵がたくさん!! 
そしていろいろなものが渦巻いちゃった男盛りのときを経て、最後はなにかが虚脱してしまったかのような「若い画家」という作品を残して彼はこの世を去ります。あの青白い、まるで死ぬ寸前の修道士のような青の時代の「自画像」と比べて、軽やかさを通り越した筆の数も少ない明度の高い作品。エミリー・ウングワレー展でも、彼女が亡くなる数日前に描いた作品がいくつか展示されていましたが、それまでの作品と違ってやわらかい透明な色合いで描かれた「彼の地」そのものの作品を見て、人は死の間際にこんな作品が描けるのかと衝撃を受けましたが、それと同じようにうぉっと驚きました、それでもまだなにかが渦巻いているんですね、ピカソさん!、と。
私の知らなかったピカソという大画家の人生を時系列でおがめる大変有意義な展示です。展示は次の日曜の14日まで。夜はこちらの夜間ペア割引券(PDF)を印刷してペアでいくと、大変おっとくーな値段で鑑賞できます。その後は半券握り締めてお茶かディナーをするがよろし! 代物弁済っ!
※作品画像は、ピカソ・オンライン・プロジェクトから拝借しました。無断転載ごめんなさい。圧倒の収蔵量です。絵の細部も細かに確認できますよ。みなさんも一度ぜひー。
http://picasso.csdl.tamu.edu/picasso/
※しかし、ホンダがF1撤退するような不景気なご時勢じゃ、今後数年間はこんなグォージャスな展示が見られなくなるかもね。不景気ってつまんないねぇ。

2 COMMENTS

カヲル

ピカソは辿ってきた道を探ると
とても真似どころか、かする事も出来ないくらい
凄い人だってのが判るよね。
床屋のオヤジは私にも描けると
行く度に言ってますが。。

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MI子

昔テレビでピカソさんの娘さんが、
(何番目の妻の子かは忘れました。顔がピカソそっくり)
「父は偉大な芸術家だが、
わたしの夫だったらとっくに絞め殺していた」と
真顔で言ってましたよ。

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