海賊とは海賊房太郎(大沢房太郎)のことです。
物語の完結とゴールデンカムイ展
「大傑作金塊争奪ロードムービーッ!ここにて完結っ!」、と心がざわめきっぱなしだったのが四月の終わり。五月の後半になってから連載完結記念 ゴールデンカムイ展に行ってきました。
野田先生がお持ちの、登場人物たちが作中で使っている刀剣や銃、また登場人物が身につけていた衣装や古道具などが、物語の流れとともに展示されておりました。圧巻の展示数です。インカラマッの斜めがけバッグはこういう作りだったのか、作れなくもないっ! グラデカラーに染め分けられた糸の刺繍が施されたマタンプシ(はちまき)などを間近で見られたのも素晴らしかったです。
展示されていた銃は、もしかしたら過去の大陸での戦争に実際に使用されたものだったのかもしれません。そういった品物からにじみ出てくる隠しきれない血生臭さと、それでも戦争なんかなければ登場人物たちがあんな辛い思いをしなくて済んだのにという気持ちで胸がいっぱいに。せっかく戦地から生きて帰ってこれたのに金塊争奪戦に巻き込まれて命を落とした名もなき帰還兵たちのことを思うと(漫画なのに)。歴史に地続きの出来事を交えながらフィクションを描くことは難しい作業だったと思います。ほんとうに、お疲れ様でした、ありがとうございました。
作品に関していえば、巻数でいうと23巻、話数でいうと231話の「出産」が物語の折り返し地点だったのかなと思います。鯉登少尉が「(この成り行きをすべて)見届ける」と宣言し、月島を取り戻すきっかけにもなったインカラマッの出産のエピソードです。これ以降、鯉登少尉の鶴見中尉への盲信がゆらいでき、作品からも中尉のオーラが薄らいでいくように感じられました。もちろん最終話まで金塊争奪戦という暴走列車は続くのですが(巻数にしたら10巻近くも!)、ともあれ、物語が終わってよかった。もう誰も死ななくていいのだから(漫画なんだけど)。
公式グッズ
そんな気持ちで各シーンをしみじみと思い出しながら、東京ドームのゴールデンカムイ展をじっくりと見て参りました。特に長い待機列に並ぶこともなく入場でき、館内は混雑していましたがぎうぎうというほどでもなく。物販はすでにだいぶ品薄になっていたのかもしれません。缶バッチやクリアフォルダ、絵葉書などはほとんどが密封されているガチャ仕様。「グッズに5万円も使っちゃったー」というTweetを見かけましたが、こんなガチャなら仕方ないのかも(その方は、もしかしたら高額なカラー複製原画を買ったのかもしれませんしね)。
私は図録とクリアフォルダを購入しました。「ヤングジャンプコミックス クリアファイルコレクション 第2弾(11~20巻+シークレット1枚)」というものです。密封されているのでどんな柄かはわかりませんので、えいやっと選びました。門倉とキラウシニシパの18巻の絵柄が欲しかったのです。こちらの ↓ イラストです。
次点がキロランケニシパの19巻。背景のオーロラが美しいのです。
展示会を出たあと立ち寄った喫茶店で「門倉でありますように」と願いながら早速開封しました。そしたら17巻の尾形の柄でした、「なんだ尾形か」です、ぎゃふん!
そんな「ゴールデンカムイ展」でございました。
最後に
残されたひとたちが、うっかり海賊房太郎の夢を叶えていたのがよかった。
展示会場の後半で、天井から谷垣源次郎の絵が吊り下がっているのを見つけました。樺太で出会った映画技師たちと、アシリパさん一行がアイヌの文化を残そうとアイヌの民話「斑紋鳥(ケソラプ)の身の上話」を撮影したときの一コマです。
このとき監督のアシリパさんは、演者のチカパシに民話のあらすじを伝え、もっと真剣に演技しろと叱咤します。
「いいかチカパシ! この場面はな
身寄りのない主人公を保護して旅へ連れて行き
悪いカムイたちと戦い立派な男に育て
新しい家族まで持たせてくれた
そんなひととの永遠の別れの場面なんだぞ!」
(21巻204話「シネマトグラフ」)
物語の完結、ほんとうにありがとうございました。素晴らしいロードムービーでした、早くタランティーノに実写化してもらいたい、ぐすん。
おまけ
地上波で放映されず単行本特典として制作されたこの二話、アマプラで見られますのでお早めにどうぞ!