つちふるや100分映画をふたつみつ／「生きる LIVING」「長ぐつをはいたネコと9つの命」「アナザーラウンド」「TOVE」

カズオ・イシグロとビル・ナイの「生きる LIVING」

見てきた。ビル・ナイ！！　

1950年代の勤め人は身なり良く、ステッキ代わりに立派な柄の傘を持ち、三つ揃えのスーツを着て、通勤列車で新聞を器用に畳んで読む（ただしコンパートメント風４人席で着席して）。ほんっと現代の勤め人はラフですよね！　ラフになっちまいましたよね。背広も「18世紀後半から21世紀初頭にかけて着ていた洋服」というくくりになって過去のものとなっていくのかしら。

酒場でスコッチランド民謡を歌うシーンで胸を打たれた。あの海辺の酒場って、もしかして「日の名残り」のラストで出てくるところと同じだったりするのかな。イギリスの海岸沿いにはああいう桟橋がたくさんあるのかなどうかな。あと、カズオ・イシグロ、小津安二郎がほんとうに好きなんだな。

黒澤明の「生きる」は未見ですが、アマプラで予告版動画を見た。あまり改変なく忠実にリメイクしていそうな印象をうけました。黒澤明のは予告編からしてなんだかとてもくどそうなので、体力があるときに見てみようと思います。

それにしてもビル・ナイ！！　
ビル・ナイや　ああビル・ナイや　ビル・ナイや。
102分映画です、ご興味ありましたらぜひー。

字幕版「長ぐつをはいたネコと9つの命」

ＳＮＳで「長ぐつをはいたネコと9つの命はいいぞ」だの「公開後、死神ウルフのファンアートが海外で激増している」という声を多数見たので、劇場へ。

シュレックを見たことがないのですが、本作はドリームワークスのシュレックのスピンオフ作品なんですね。いろいろな童話のキャラクターが入り混じって進む物語はさながら藤田和日郎先生の「月光条例」みたい。主人公の長靴を履いた猫の声はアントニオ・バンデラスがあてていて、かわいらしいビジュアルとは裏腹に大人の激渋ボイス。悪役のビッグ・ホーナーがボリス・ジョンソンそっくりで、なかなか面倒なやつ。いろいろな映画への愛もてんこもりで、死神ウルフのファンアートがなぜ増えたのかも納得できる爽やかなアクション・コメディ・ロードムービー・アニメーション活劇でした。102分映画。

しかしながら、隣にバカップルがいて大変迷惑だった。そういうことを劇場内でするのなら、配信を待って家でやっとくれ。

マッツ・ミケルセンの「アナザーラウンド（原題 Druk）」

原題の「Druk」は、デンマーク語で「どんちゃん騒ぎ」の意味。コメディ映画だと聞いて安心して見始めましたが、違うじゃん、全然違うじゃん、ほろ苦・激苦・大人の映画ですやん！　

食卓で子どもたちが夕飯をとっているのに、「今日は同僚の誕生日だから外で食事する」とパパであるマッツ・ミケルセンが家を出ていくシーンがあります。え、何時？　
その飲み会メンバー４人で楽しく飲みふけ酔っ払い、人のいない道路ではしゃぎまわるシーンがあります。ねぇだからそれって何時？　白夜の国め！！
ラストシーンの波止場のマッツ・ミケルセンのダンスが美しすぎてちょっと目のやり場にこまった。きれいでもない色のＴシャツにチェックのシャツを羽織っちゃう冴えない男として振る舞うマッツ・ミケルセン。そんな彼がラストシーンの波止場で牙をむくのです、「俺がダサいだけの冴えない中年男の役をやると思った？　残念でしたーー！」とばかりに。ちくしょう、北欧の至宝め！！（ニヤニヤしながら）。

登場する彼らの家や家や暮らしぶりも美しく（なんてたって北欧家具の生まれの国！）とても素敵だった。しかしほろ苦い。犬が元気でよかった。メガネ坊。デンマーク映画は子役のみなさんもお達者で見応えありました。2時間映画。

トーベ・ヤンソンの伝記映画「TOVE／トーベ」

トーベ・ヤンソンの伝記やムーミン以外の作品もほとんど目を通しているので、いろいろと確認する意味で視聴。あぁーーそうだったのかーーそっかー、そっかー。最後に登場するトゥーリッキちゃん、物語のなかのビジュアルそのものすぎてちょっとびっくりしちゃったんですけど！ フィンランド・スウェーデン合作作品、102分映画。

全然関係ないけど、長谷川町子（1920年生まれ）とトーベ・ヤンソン（1914年生まれ）って仲良くなれそうな二人だと思うのよね。交流なかったのかな。