片桐はいり「グアテマラの弟」/映画「洋菓子店コアンドル」

グアテマラの弟 (幻冬舎文庫)

このエッセイは、片桐はいりさんがグアテマラに住む弟さんに会いに行くお話。「グアテマラの弟」、なんて詩的なタイトルなのでしょう! 池澤夏樹の小説のタイトルにありそうではないですか。ここから小説が始まってもよいくらいです。

「こんなところに日本人」じゃないけど、どんな辺境の土地でも地球上に日本人がいない土地はないんじゃないかしらと思うんだけど、片桐はいりさんの弟さんはグアテマラで暮らしてるそうな。学生時代にふらっと立ち寄って気に入った街に、大学卒業後に戻り、現地で年上の奥様と結婚し、スペイン語学校とバックパッカーが集う日本語食堂を切り盛りしてらっしゃる。子供時代は仲良くなかったこの姉弟が、太平洋を隔てているというのに、飛行機で丸一日とちょっとかかる土地だというのに、おとなになってからはその不仲の時間を埋めるように仲良くなっていく。電子書籍はあとがきがないのですが、書籍版では弟さんのあとがきが読めるそうです。あぁん、やっぱり書籍版買えばよかったぁ。

こういう旅行記をiPhoneに放り込んでおいて、旅先で読むのはまた楽しいのですよ、そこで描かれている土地と全然違う場所だとしても。


洋菓子店コアンドル [DVD]

神楽坂のアグネスホテルの脇に小さい「ル・コワンヴェール」というケーキ屋さんがあります。私はそこのチョコレートケーキが大好物なんですが、そのケーキ屋さんにこの映画のポスターが飾ってありまして、てっきりこのケーキショップが舞台の作品かと思ってhuluで鑑賞してみた。したらばそういう話ではございませんでした。

この写真からわかるとおり「世間知らずで鼻っ柱だけは強い蒼井優がキャリアも腕もある江口洋介と出会い、反撥しつつもケーキ作りを通してお互いの理解を深め、二人で洋菓子店を切り盛りしていく」というストーリーなんだろうなーと思ったら、やっぱりそういうお話でした。意外性ゼロ☆ 

物語自体は中目黒とか砧とかそういうハイソな土地が舞台らしく神楽坂のその店がロケ地かと思ったらまったく別の土地のケーキ屋さんで撮影したようで、「ル・コワンヴェール」さんはケーキ提供してるだけでした。作中、確かに店頭に並んでいるケーキと同じものがそれぞれ出てて、食べ物が核の作品なのに随分安直な扱い方で映画のつくりとしてそれでよいのかと(別によいのか)。
大江戸豆腐屋物語の「あかね空」でも何回かでてきた豆腐を食べるシーンが全部冷奴で、しかも豆腐を切りもせずがぶりついてて「江戸の食文化をなめとんのかぁ、フードコーディネーターがつかなかったんかぁ」とちゃぶ台ひっくり返すところでした。食べ物の表現、大事! ましてやランドセルにつけてる木の人形をケーキに乗っけるとや!

あかね空 (文春文庫)

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