ヒッピーてうオランダうさぎ春の野に/リンドグレーンの妖精のお話と一枚の半カーフのおはなし

週末、実家に帰った。中央高速道路は新宿から八王子あたりまでは新緑がまぶしく、藤野のあたりでは山桜が終わるところ、山梨県内に入って爆睡し記憶がないが、小淵沢の農地ではソメイヨシノが満開で、富士見・茅野・諏訪は春が訪れたばかり、岡谷から南へ向けて進路を取ると山々に山桜と枝垂れ桜、伊那のあたりは牧草地帯に緑がまぶしく(羊が見られてちにゃー)、駒ヶ根では桜蘂で空気が桃色に染まり、しばらくすると、果樹園に白い花が広がるようになる。このあたりは梨やリンゴの果樹園が多く、そりゃもーリンゴひとつで息子を大学に行かせたとか、ナシひとつで娘を留学に出したとかそんなおうちが続くのです(少々、私の妄想が入ってます)。
そうです、林檎の花の季節です。
白くてかわいらしい花の季節です。
そこで、私の記憶は小中学生の頃に引き戻される。
今、思えば童話とも正しい少年少女文学のどちらに分類されるかわかりかねるのだが、少女文学としておきましょう。とてもかわいらしい挿絵の絵で、ある少女が妖精と出会い、夜の林檎の森で繰り広げられる妖精たちの集まりをそっと覗くというもの。アメリカじゃなくてヨーロッパが舞台の話で、どこの物語かも覚えていない。なにかかわいいモチーフがあったはずなんだけど、話のエッセンスとしてはそれしか思い出せず、モヤモヤとした気持ちをtwitterにぶつけたところ、れーなさんから「ここのブログ記事から該当のものが見つかりませんか?」とリプライをいただく。
そのURLがこちら。
http://blogs.yahoo.co.jp/megamiyoutae/archive/2007/05/04
私が記憶していたのはこの物語でした。
わたしがりんごの花にあこがれたのは、リンドグレーンの『五月の夜』という作品がきっかけです。りんご園に住む女の子が、誕生日にレースのふち飾りのついたすてきなハンカチをもらうのですが、その夜、妖精がやってきて、今夜王子様がおきさきを選ぶ舞踏会があるのに、自分にはドレスがないから、そのハンカチを譲ってくれと女の子に頼み、女の子はハンカチをあげて、代わりに妖精の舞踏会を見せてもらう、という話でした。
そこからさらに私の記憶は、今から数年前に飛びます。六本木ヒルズのクラシクス・ザ・スモールラグジュアリというハンカチーフの専門ショップがあります。そこで数年前(リーマン・ショックの前後)、一枚のハンカチーフに出会いました。「プロポーズされる瞬間、世界のお嬢さんたちは、みなこの一枚を持っておくべきよね☆」などと嘯いた一枚のハンカチーフ。当時、このハンカチを店頭でみたとき、脳の奥でなにかが反応するものがあったのだけど、その正体がずっとつかめずにいた。上のブログ記事を読んで、「私のあのハンカチーフは、あの妖精のハンカチーフだったのか!!」とやっと気がついた。二十何年ぶりの邂逅です。

リンドグレーンの「五月の夜」は「親指こぞうニルス・カールソン」に収録されています。大塚勇三さんの訳です。物語の主人公は「レーナ」(なんと!!!れーなさん、もしかして知ってた?)。
林檎の湾という意味の「エッペルヴィーケン」というりんご園が続く土地に暮らす主人公のレーナは、街からやってきたおばさんから誕生日プレゼントをもらいます。
それは、うすくて白い、小さなハンカチで、ふち飾りもレースもついていました。こんなにかわいいハンカチは見たこともなかったので、レーナは、とてもよろこびました。
そのハンカチが妖精のドレスになり、私の記憶の中にはこのハンカチーフのイメージが刷り込まれていたのですね。あぁなんて長い旅だったこと! 指輪物語で王が帰還するように、金融市場にミセス・ワタナベたちが帰還するように、今、私の中には妖精たちが帰還してきたのです。
ネットで調べたら、「五月の夜」が収録されているのは「親指こぞうニルス・カールソン」の外箱付きの短編童話集だという。今は絶版らしいのですが、アマゾンで探したら苦もなく良好そうな状態の本が見つかり、早速購入し、届いたところです。

小学校の頃、図書館で借りたのかな? あぁこのイラスト! この細かいタッチの挿絵! この森の中の妖精たちの舞踏会の様子! パラパラめくっていくと、泥だらけになった王女さまや、鉢植えの中から首飾りを取り出す少女などが目に飛び込んでくる。あまりの懐かしさにじわっと涙が出てくる。この子たちは、私がこのページをめくるまで、ずーっとこの本の中で待っていたんだね。おかえりなさいー。長野の山の中で小学生の私が出会ったあなたたち、浜矩子になりつつ有る私の暮らす新宿区の本棚へようこそ!
で、話は昨日の夕方、父親が高速バスのバス停まで私を送ってくれているときに戻ります。
「今、果樹園で林檎が咲いてるじゃん。白くて大きくて高速道路からも見える花」
「・・・高速から見えるくらい白くて大きいのは梨の花だよ?」
「・・・え?」
「林檎の花は小さくて、高速からは桜が咲いてるみたいにぼやーっとしか見えないはずじゃー」
「えー?あの空向いてはなみずきみたいな角度で咲いてる花は、じゃ、梨の花なの!?」
「そうじゃよー」
「えー!!!」
はい、わたくし、生まれてから昨日まで梨の花と林檎の花を間違えて認識していたようです。恥ずかしい! うろ覚えさんの帰還じゃて!!!
高校生になった姪っ子の部屋がぬいぐるみだらけだったという話をしてたとき、母親がこう言った。
「ほら、あの、ヒッピーちゃんっていううさぎのぬいぐるみの・・・」
うん、おかあさん、それ、ミッフィーちゃん。うろ覚えの遺伝子は母親からもらったのだから仕方ないですわね。
土曜は寒波が戻り、日曜は長野市に雪が降り、そんな中でも川内優輝さんが長野マラソンで一位でゴールしたり、そんな長野での短い滞在でした。山菜料理いっぱい作ったのじゃが、アク取りしたりで指の先がまだ黒い。

5 COMMENTS

Sっちゃん

なつかしー!!!
アストリッド・リンドグレーンは小学生時代のバイブルでした。学級図書で借りまくリ、図書館でも借りまくり、それでも足りなくてお誕生日に親にねだったり…。
浜矩子ならぬ、樹木希林を目指す私の本棚にも、「ようこそ」しようっと!!
名作は、時を越えるね!

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たかとり

見つかって良かったですね!
わたしもおぼろげな記憶の向こうに眠る本が何冊もあります。ホントに良かった。
(きっとそういう本が今のわたしを形作ってきた…)
ってリンドグレーンとはピッピの人か!
そして21世紀までご存命だったんですねぇ(びっくり)。
ピッピの映像は知らなかったのですが、
時代を経て浦和サポやドイツの某チームサポが
あの音楽のチャントで歌い跳ねているわけで
天国の彼女も苦笑されているだろうなぁ…。

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スガ

そうなのよー!!! よい本にめぐり逢えますように! アマゾンのマーケットプレイスには今回助かりました。
Sっちゃんの小学生時代のバイブルだったのですね。そうか、すごいなリンドグレーン。生きが長いぜ!
>『長くつ下のピッピ』シリーズは全世界で1億3000万部以上を売った。
ひー!!!!すげー!!!

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スガ

えー浦和のひとたちはピッピの音楽で踊るの!? ちょっと調べてきます。
私も今、ウィキペディアってきてびっくりしたのだけど、つい最近までご存命だったのですよね。そして「長くつ下のピッピ」は彼女が三十代後半のときの作品だそうで、1945年から執筆開始。昭和の日本の少年少女に夢を与えてくれたわけです。
全然関係ないけど、このまえTwitterで「息子の小学生の担任が平成生まれ!!」という書き込みを見て、ほんっと、まぁ、昭和も遠くなったもんだと・・・。

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たかとり

あ、追加情報を載せようと思ったら既にレスがー。
2010年8月に歌われはじめた比較的新しいチャントですね。
つ元歌?(Eintracht Frankfurt:いま乾くんがいますかね)

http://www.youtube.com/watch?v=SF8ltQMUVMg
つ浦和

(→アウェイですが比較的綺麗に歌えて録画されている…)

(→ちょっと撮影者の手ぶれがありますが、大型モニターに拡大映像が映っているので良いかと…)

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