毒な親てふもののあり秋時雨/高嶋あがさ「母を片づけたい~汚屋敷で育った私の自分育て直し~」/至言目白押しの立て直し録

母を片づけたい~汚屋敷で育った私の自分育て直し~ (バンブーコミックス エッセイセレクション)

前回「母は汚屋敷住人」で壮絶な汚屋敷暮らしを詳らかに描きつづってくれた高嶋あがさせん。汚屋敷住人であるところの母がいかに「毒親」であったのか、その毒親から逃れて自分を立て直すまでの経緯を漫画にしてくれました。汚屋敷もすごいけど、こっちのが壮絶だった。

 

「菓子パンと冷凍食品はごちそう」「給食だけが命の綱という状態でした」という食生活の中で育てば、発育もよくなく身長も伸びず、毎日同じ服を着ていて、栄養失調のために知能も若干疑いたくなるレベルに。え。ネグレクトってここまでの結果を招くものなの? 

「新しい服で行くと嫌味を言われてお金をせびられる」から、汚い服を選んででかける主人公。私も実家に帰省するときはきれいな格好で帰らなかったけど、それは移動中に身軽でいたいのと帰ってすぐ家事をするからであって、「お金をせびられる」なんていう理由じゃない。

娘の性に異常に干渉してくる、毒親のことを周囲に理解してもらえず孤立を選ばざるをえない・・・。毒親問題は成人になってからも尾を引き、「自分がちゃんとしているかどうか」「自分がつくったこの料理はおいしいのか」「片付けるってどこまでやればいいの?」などとあらゆる面で確認しなくてはならなくなる。

読み進めてくらっとしてきた。そこまで親は子育てを放棄することができるのか、と。いや、わたくし、子供おりませんし、人並みに介護を終わらせることもできて、肉親とどうこうするというのも両親の兄妹と私の姉2人と大人のつきあいをするだけです(そこそこ仲良し)。いやいやいやいや、それにしても毒親という生き物は、ここまで子供の面倒を見ずにいておきながらも、成人後にも親として君臨し続けようとするものなの? のひぃ。

 

衝撃で頭の血が抜けてしまい青ざめたままふらふらと読み進めなければならない重い前半が終わると、後半は彼女がどうやって自分の人生を立て直したのかをまとめています。筆者は、汚屋敷の反動で大変な清潔好きになっていきます。こちらは有益な情報がたくさんで明るい気持ちで読み進めることができます。

高嶋さんはいまでも「自分はもしかして本当は汚屋敷好きのDNAがあるのではないか」と自分を疑っています。なので、脳の仕組みを調べながら、自分がやりやすい方法はないか、無理をせずにできる方法はどれか、そういった目線の中で自分なりの片付け術を真摯に模索していく様は圧巻です。読んでいるこちらも「そうか、断捨離の先にその手があったか!」と膝をうつこと何回か。

高嶋さんも書いているけど、すきま収納とか収納ですっきり整理術といった言葉に踊らされて収納用品買い足したらダメなんですよ。収納用品が増えたらその分、季節の衣替えの範疇を超えた死蔵品が家の中に増えるっていうことなんですよ。世のトレンドは「収納術」から「ものを減らす」方向へ進んでいますが、目に入らないものって本当に使わないもの。「あれ、これなんだっけ?」の不毛な時間はもういらないんやで!!!

あと103ページの「大掃除を年末にやらない」、わかるわかる。中掃除を季節の変わり目にやるといいよね。あと無印良品の窓拭きのカッパギツール、すっごいよね。たった10分で窓ピッカピカ。時間惜しまずに月に一度やるといいよね。

「三角コーナーを使わない」、うんうん。私、この20年使ってない。あのスペース邪魔ですやん、ちょっと放置するともう触りたくなくなりますやん。生ゴミはすぐまとめて捨てる、水がでるときは新聞紙にくるんで捨てる。若者の三角コーナー離れを進めたいところです。

そうやっていろいろなことを試みて、毒親から解き放たれていくところで物語は終わります。がんばって!高嶋さんがんばって!

 

私の母親は、体調が悪くなる前に、お金周りの書類はすべて一箇所にまとめ、普段着る洋服もひとつの簞笥にまとめておくようなしっかりした人でした。着ない洋服は古い簞笥に入れっぱなしでしたが、私達が中学生になる頃から洋服簞笥など大きな「入れ物系家具」は導入せず、家具を増やさずにしてくれていました。嫁入り道具に婚礼家具を一式買い揃える時代の人です。ほぼほぼそのときの家具と新たに買い足した洋服簞笥ひとつで人生を乗り切ってくれました。あぁこれってすごくしっかりしたひとの事例だったんだなと今となって思います。

ところでそんなしっかりした母親ですが、それでもやっぱり人が死んでしまったら残されたものはゴミとなってしまうので、粛々と片付けをしているところです。この話はまた改めて。

 

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