島が産み島が育み夏上布/宮古上布のお話 宮古島ツアーその2

宮古上布という市場末端価格300~500万のお着物の産地を巡る旅に行ってきました。

宮古上布は、宮古島という歴史的背景・地理的条件・自然環境が噛み合って初めてできた織物なのだと強く実感せざるを得ないすごみのある織物です。お値段がすごいのは、問屋さんを何軒か経由していることも原因していますが、ただただ作るのが大変な織物だからなのです。

工芸センターで案内してくれた糸を績む人から「一反分の糸を作るのにだいたい一年かかるかな」と聞かされ、織り子さんからは「これは織り始めて四年目なんです」「一年に八反しか織り上がらないんです」というセリフが出てきて、砧打ちの男性から「麻袋でさんざん練習してから、やっと上布を打てるようになるの」「一万回打つって言われてるけど、それほど打ったりはしないねぇ」などとニコニコ話していただいてしまうと(その砧も4kgという重さです!)、あのお値段も納得するしかありません。

苧麻という植物から糸を績む作業を手伝わせてもらいましたが、なんというのでしょう、その間の静かな時間といったら! 初めて苧麻を触る人がほとんどなのに、みんながしんしんと黙って作業に没頭しているあの様子。東京に戻り振り返って考えますと、あれは「人類がカニを食べてる時間」と同じ種類の静けさだったように感じます。

苧麻績みの作業は大変な集中力を使っているのか、心も穏やかになるので、ストレス満載の人々が家で黙々と作業するのにちょうどいいと思います。そういうプロジェクトやれば、宮古上布の糸も量産されて、反物も増えて、価格も下がって、いいことしかないじゃないですか!!!! どうですか!? そういう事業をやってくれませんでしょうか!?

 

藍染の宮古上布はさておき、爽やかな色の色上布を織っている先生の工房にもお邪魔させていただきました。こちらは工芸展のポスターになるような作家先生のおうち。端切れを手にするだけで、みなさん興奮してしまうパワーあふれる、けれど爽やかな織物です。こちらもすごかった。アトリエのお庭にも先生の美意識が行き届いていてうなされました。

 

南の島の織物はどうしてこんなに魅力的なのか、それはさておき、買っただけでしつけ糸も切ってない与那国織が一枚あるがあれを私はいつ着るつもりなのか、それはさておき、機内で一緒になった男性が背負っていたざっくりした二泊三日前後の旅に耐用できるルイ・ヴィトンの布のバッグが素敵ではないですか、いま売ってるものかちらどうかちら、スイスイとネットで検索したけどなかなか見つからないわどうしたものかちら、などと種々の煩悩と戦ってまいりました。二泊三日で体重も2kg増え、あぁ恐ろしい、南の島!!!!

 

写真は砂山ビーチの仲良しワンちゃんたち。

 

 

3 COMMENTS

はつき

苧麻績み作業はマインドフルネス?
それはそうと、憧れの宮古上布はご購入されなかったのでしょうか?気になります。

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ukasuga

マインドフルネス、そうそれ!ほんとにそれ!みんな蟹(食べるとき)並に心が無ですよ。
宮古上布買うとなると、老後の資金ぐりから考えないといけないので今回は見送りですよー。

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ふなき

琉球舞踊に苧麻積みの様子を舞踊家した「苧引き(ヲゥビチ)」という演目があります。戦後復活したのですがもとは古典舞踊なので、貴族の装束で演じられますが、苧麻から糸をつむぐ手振りが美しい、静かな踊りです。読んでいて、それを思い出しました。地謡の歌詞に「あけず羽 御衣裳(蜻蛉の羽のように薄く美しい着物)」とありますが、宮古上布も薄く透き通るような美しさが憧れです(人頭税時代、布地が銭の穴を通るほど薄くなければ不合格だったとも聞きます)。

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