七草粥の失敗

ポエム七草粥

七草粥を夜に食べようとしたらどこでも売り切れていた。
あれは7日の朝に食べるものなのか。

わたしはすでに全粥を仕込んできた。
あとは七草粥の具材だけがあればよかったのに売り切れていた。

あてにしていた私鉄系スーパーになく、
あまり好きでない巨大資本系ミニスーパーに立ち寄った。

ひとつだけ七草粥のパックがあった。
喜んで手にとった。
レジに並んだ。
なぜ残っていたのだろうと商品を眺めてみた。
ホトケノザがふっくらした形状になっていた。
カビだった。
カビだった。
まごうことなきカビだった。

私はそこから1キロ先のスーパーまで脚を運んだ。
ソ連の最後の数日間のような品薄の店内だった。
なかった。

スーパーの前の路上で「生鮮食品」とgoogle map で検索した。
そこから700m先のミニスーパーに期待を託すことにした。
なかった。

そのスーパーの前で、また別のスーパーを検索した。
900m先の巨大資本系ミニスーパーを目指した。

途中、地元資本の小さなスーパーに立ち寄った。
東南アジアの女の子が二人、レジに並んでいるスーパーだった。
なかった。

目指す巨大資本スーパーに到着した。
なかった。

あきらめた。

あきらめた。

私はようやく諦めた。

もう一度路上で、「七草粥」と検索した。

正月七日に春の七草を入れて作るかゆ。後世では、なずなまたはあぶらなだけを使う。

なずな、というか、あぶらな、ありましたやん。
最初のスーパーにありましたやん。
あ り ま し た や ー ー ー ん !

私は諦めた。
そこから1100m先の怪しげな業務用スーパーを目指した。

三つ葉を買った。
三つ葉を買った。
三つ葉と根菜のおかゆにしようと帰った。
全粥のとろとろと三つ葉の香りとシャキッとした歯ざわり、
それだけを楽しみに、1200m先の自宅へ戻った。

玄関の扉を開けた。
猫が迎えてくれる。
全粥、全粥、全粥。
わたしの楽しみの全粥。

炊飯器の蓋をあけたら、五分粥になっていた。
七草粥探検の旅が長すぎたので五分粥になっていた。

三つ葉は、
総距離4500mかけて買うものじゃない。

春は苦いものと、
足元でまとわりつく猫が慰めてくれたような気がした。

1 COMMENT

いち

猫が「お撫でなさい」と言ってくれてるよ、きっと!
手帳についてる来年一月のページを開いて、
一月五日の欄に「七草買っとけ」と書いとこう!

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