岡本喜八「日本のいちばん長い日」/「戦後補償」/「果てなき殲滅戦」/先週の #刺繍「大濠公園 イノシシ大捕物劇」

先週の刺繍。毎日新聞カメラマン須賀川理さん撮影の福岡大濠公園のイノシシ捕物劇をを刺繍しました。楽しそうー。印象派~。

岡本喜八「日本のいちばん長い日」

日本のいちばん長い日

8月15日。お盆に墓参りにも行けないでこの日は終戦記念日特集として一日を過ごすことにした。

岡本喜八の「日本のいちばん長い日」をAmazon Prime Video で見る。三船敏郎と笠智衆が格好良すぎてしびれた。

3月10日に東京の東側では空襲にあい十万人の人が死に街は焼け野原になっていたのに、市ヶ谷や霞が関、皇居のまわりはまだ無傷で、こんな終戦間際まで内閣が都心で機能していたことに驚く。無辜の市民は躊躇なく殺戮し尽くすが、戦争責任者たちは生かしておき戦後に戦争裁判にかけるのか、そうやって責任を取らせるのか、そういう絵図が連合国側にはもうできていたのか。そういうことなのか。
松代大本営にこっそり機能を移転していたわけでもなさそうだ。松代大本営が本格的に機能するような事態になっていたら、日本はもっと悲惨なことになっていたのだろうけど。

7月26日にポツダム宣言が出されてから少しでもいい条件を引き出せないかとあれこれやってるうちに、広島と長崎に原爆が落ちる、地方都市でも空襲が毎日起こるようになる。7月26日松山大空襲、平、徳山。27日鹿児島、28日青森、一宮、宇治山田。29日浜松、大垣、津市。8月1日には水戸、八王子、長岡、富山、5日に前橋、佐賀、今治。7日豊川、8日福山、八幡、9日大湊、釜石、10日花巻、11日久留米、加治木、12日阿久根、13日長野、14日岩国、光市、熊谷、伊勢崎、小田原、土崎。なんで3週間近くも引き伸ばしたのー。8月9日のソ連の参戦を食い止められていたら、シベリア抑留なども生まれなかっただろうに。

最後まで戦うことに固執していた陸軍は「ここまでやってきて五輪をやめるわけにはいかない」といった森喜朗に見える。「陸軍は馬鹿だった」という風潮を作ったのはこの作品なのではないか(まぁどちらかというと実際そうなんでしょうけれども)。しかし、日本中の誰もが「アメリカと戦争するなんて思いもよらなかった」のに、誰が真珠湾に奇襲をしかけたのか、誰がこの戦争を始めたのか今一度よく必要がある。暗黒日記を丁寧に読んでいこうと思う。

NHk特集「忘れられた戦後補償」

国家総動員体制で遂行された日本の戦争。310万の日本人が命を落としたが、そのうち80万は様々な形で戦争への協力を求められた民間人だった。しかし、これまで国は民間被害者への補償を避け続けてきた。一方、戦前、軍事同盟を結んでいたドイツやイタリアは、軍人と民間人を区別することなく補償の対象とする政策を選択してきた。国家が遂行した戦争の責任とは何なのか。膨大な資料と当事者の証言から検証する。
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/L3985LG29M/

岡本喜八の映画で描かれた陸軍のひとたちは戦争が終わったあとも生き残り(陸軍大臣は割腹するけど)、厚生労働省の役人に収まり、復員者に対して手厚い年金を払うようにした、市民には『自助努力でなんとかしてね』と市民には一切補償しなかったのに。鹿児島の川内市で空襲に遭い左足を失った当時6歳だった安野輝子さんは「なんの補償もない」といまも訴える。厚生労働省の成り立ちはこんなものだったのかと思うと、やりきれない思いになる。

「日本でいちばん長い日」高橋悦史さんが演ずる陸軍省軍務課井田正孝中佐は、その後電通幹部になり、えぇ、もうきみたち・・・。この歴史の地続きっぷりよ。電通の近年の嫌われっぷりたら大したものよね。全部五輪のせいだ。

陸軍大臣は切腹したけどそれで何の責任が取れたというのだろう。切腹なんて文化が日本になければよかったのに、明治維新のときに全部一掃されればよかったのにとも思う。

BS特集「果てなき殲滅戦」

75年前、九州は無残な殺りくの戦場となろうとしていた。昭和20年夏、アメリカ軍は沖縄戦後「オリンピック作戦」と名付けられた九州南部上陸作戦を進行。上陸する兵士は史上最大規模の76万人が想定されていた。今回オリンピック作戦の詳細を取材すると驚愕の作戦が次々と立案・遂行されようとしていたことが明らかに。背景には日米双方の敵国へのぬぐえない恐怖と憎悪があった。未完のせん滅戦の全貌に迫る。語り:大竹しのぶ

そのオリンピック作戦の川内市空襲で被害にあった安野さんがこの番組でも登場。アメリカがなぜ市民を虐殺するのに躊躇しなかったかというと、1938年に設立された国家総動員法をみて「なに、つまり日本には、非戦闘員は一人もいないって解釈でいいんだよね?」ということだったらしいです。法律は丁寧に吟味して出してほしい、為政者は日本語を丁寧に扱っていただきたい。「思ったこともいえなくなる」というくらいだったら最初から言わないほうがいい、もっと慎重に言葉を発してほしい。

戦後補償の番組では被害にあわれた方たちに「乞食根性」「欲張り婆さん」といった誹謗中傷の手紙が届いたことが紹介された。日本人のメンタリティ、1mmも進歩してない! ダメだよ、そういうの!

このコロナ禍が実弾の伴わない戦争だとしたら、どの国がいち早く抜け出すのか注意してみていきたいと思っていたところ、過去の失敗三作品をみたあとでは、日本はなかなか抜け出せないのではないかと・・・。

 

コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線 (朝日新書)

2 COMMENTS

ふなき

私もみました。
本筋のストーリーはもちろんですが、ポツダム宣言受諾を連合国側に打電するタイムリミットを気にしながら、宣言文の承認をいまかいまかと待ちわびる外務省職員の戸浦六甲さんや、NHKや外務省に対し宣言文完成の時間を「六時には・・・」「六時半には・・・」「七時、七時には!」と蕎麦屋の出前式に引き伸ばしながら閣議の行方をヤキモキしながら案ずる内閣書記官の加藤武さん、「急いでね」のプレッシャーのもと宣言文の清書をする職員の方などに、同じ宮仕えの身としてシンパシーを感じずにはいられませんでした。
いつの時代も事務方は大変。

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ukasuga

あの受話器をずっと持っていた職員のひとたち、いまも霞が関にいますよねぇ。明日の国会のためのレポート作っておいてね的な使われ方。。女性が出てこないのもこの映画としては意味があることでよかったです。死神博士もすごかった、神聖喜劇かと思った。8月に限らず、たまに見返していきたいと思いましわ。

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