19世紀末から第一次世界大戦までフランスで活躍したスイス生まれの木版画家の展覧会だと思って見に行ったら、とても新鮮で、目を見張る作品が多く、フェリックス・ヴァロットンという作家は卓越したセンスをお持ちのグラフィックデザイナーではないですか! 若い頃は思想家や社会活動家たちとも交流していたが、裕福な家の娘と結婚してからは彼らともすっぱり縁を切り、自分の好きな作品作りだけ追い求めたヴァロットン、ふむふむヒューっやるねぇ。
その美術展の音声ガイドは津田健次郎さん。友人と一緒に行き、現場で音声ガイドのアプリを購入しダウンロードして聞いた(なので、美術館に行かなくても音声ガイドを購入してツダケンの声を楽しむことができます)。なかなか凝った構成で、展覧会を気ままに案内する猫ちゃんと、彼女を追いかけたり抱っこする津田健次郎のやり取りを聞きながら作品理解を深めるという仕掛け・・という仕掛けなんだけど、それがもうやりすぎでやりすぎで、イヤフォンつけてる友人とイヤフォンつけてる私とで要所要所で目を合わせ、親指を何度も立ててニヤニヤした。
津田健次郎が別の部屋から来た!
津田健次郎が背後に立ってる!
津田健次郎がそして隣に移動してきた(たぶん猫を抱いて)!
どうしよう、「ヴァロットン狩りだぜ」とかいい出したら!!
そんなセリフはなかったけれど!
どうしよう、「道理をやろう」なんていい出したら!
そんなセリフもなかったけれど!
三菱一号美術館ときたら、猫と津田健次郎という、女性(大きい主語)が好きなものをふたつ詰め込んできやがったぜ!! 弥太郎もびっくりしてることじゃろうて!!!
その夜、私はたまたまあんこう鍋を食べたんだけど(近所のスーパーは毎年冬になるとあんこう鍋セットを切らさないもので)、なんかわたしすごく尾形百之助が好きな人みたいじゃないですか、こわい(推しは門倉とキラウシニシパだよ)。
さて、ヴァロットン展、デザインに携わっているひとは足を運んでも損はないんじゃないでしょうか。館内で上映されたヴァロットンの作品を活かしたアニメーションの構成も巧みで、細部まできっちり計算された素晴らしい展覧会でした。丸の内のイルミネーションを楽しみながらぜひ。
2022年度版図録。友人の誕生日プレゼントにさせてもらった。