「異常 アノマリー」
エルヴェ ル テリエ (著), 加藤 かおり (翻訳) 。「フランス生まれの人生文学おしゃれ版ってところなのかな・・・、あれ、でもこれ早川書房だよね?」と何度か訝しみながら読み進め、中盤で「あぁーーーーあぁーーーーうん早川書房だわこれ」となった本作。その中盤にたどり着くまで離脱する人が多そうな、週刊少年ジャンプだったら絶対にない第一部なんですが、たどり着いたあとはもうジェットコースターに。安っぽいハードボイルドあり、アメリカのバリキャリ(死語?)連続ドラマ風展開あり、社会問題告発系ドラマあり、ウディ・アレン風恋物語もありのてんこ盛り、そしてだいたいがアメリカのせいの黙示録(大げさな!)、そしてその下敷きにあるのが早川書房風味な物語・・・とまでしかわたくしの口からはお伝えできませんわ、面白かったです。
生きづらい明治社会 不安と競争の時代
お江戸の時代から激変した「明治」に放り込まれた日本人たちの心のありようをちびっこ向けに解説してくれた岩波ジュニア新書。「それって自己責任でしょ」という言葉のおぞましさにぞっとしながら「せめて自業自得といえばいいものを」となんとか平成後半を生き延び、老後資金が足りないのはお前の準備が足りないせい、いま非正規な身分なのもお前の努力が足りないせい、なにかに騙されるのもお前が情弱だから、そうやってすべて「自己責任」の名のもとに切り捨てられていく冷たい社会、東京砂漠なんてもんじゃない。しかし明治の時代にも「It(それ)」はあった。当時は「通俗道徳」とそれを呼んだ。
「がんばって働き、倹約して貯蓄すれば、かならず経済的に成功をおさめることができる。貧困におちいるのは、がんばっていないからだ。これが、明治時代のメインストリームの価値観、『通俗道徳』でした。」
そらそうですよね、明治時代という大変革の中、時流にのってうまく生き延びた人もいれば、敗軍についたばかりにその後の人生をうまく立て直すことができず新天地を求めて北海道に渡ったり、とにかく腹一杯になれればと軍隊に入ったりした人もいたことでしょう。でもそれが明治の「自己責任」論で一刀両断されたとしたらなんとも冷たい世の中じゃぁござんせんか。
新政権の新治世から取りこぼされてしまった人は、一体どうやって生きていったのか。そんな時代を生き延びた男たちの物語があるんですけどね、ええゴールデンカムイっていうんですけれど(突然の宣伝!)。
中国経済の属国ニッポン
なるほどーあれがこれしてそうなって属国化していくというわけか。アメリカと中国に挟まれてこのあとどう舵取りしていくのかな。グレタさん的な情緒的な運動かとばかり思っていた脱炭素化が苛烈な覇権争いの幕開けとはまった気がついてなかった。また、トランプのやらかしがなければまた違う東アジア情勢があったのにと思わされたりもした。またもアメリカのせいで!!!
「ヒトラーとナチ・ドイツ」
稀代の弁論家ヒトラーの誕生と総統になるまで、そして総統になってからなにをしてきたか、ドイツという国はどう向き合ったのかを368pにまとめた本。ナチ・ドイツの誕生から滅亡までの歴史をざっと読むことができる。東方生存圏なんて思いつかなきゃよかったのに。国から追い出すだけでよかったのに。マダガスカル諸島にみんなを生かしたまま送り届けるだけでよかったのに。まぁそういった淡い目論見が、チャーチルの徹底抗戦や日本の真珠湾攻撃で頓挫したりしてしまい、ホロコーストにつながっていったのだけど。しかしなんでそうなるの、なんで極端にあんな手段を選んだの!?
「太陽の子」
灰谷健次郎の。子供の頃読んだような記憶があったのですが、児童文学って感じでもないのになぜ手に取ったのだろう。当時のわたしが、沖縄出身の人たちが集まる神戸のある町で居酒屋を経営するやはり沖縄出身の夫婦の家に生まれた一人娘(しかも先生にえこひいきされるような美人で成績も優秀)の気持ちなんてわかったのだろうか、わかるはずないよなぁ、絶対理解できていなかったろう、ほんとうに読んだことがあるのかな、どうかな。
今日マチ子戦争シリーズ
沖縄のひめゆり部隊、アムステルダムのアンネ・フランク、長崎で「ぱらいそ」という名の絵画教室に通う少女たちを描いた作品。おねいちゃんがいるから妹でいられたアンネフランクの話が一番きたかな。おねいちゃん!!
まさか「鎌倉殿の13人」のサブタイトルが「バカ姉弟」だったとは・・・最終回直前にそんなことにようやく気がついた12月の平日に。