啄木忌猫のご飯の伊万里皿/展覧会二本、根津美術館と橋本コレクション

根津美術館 「西田コレクション受贈記念 Ⅰ IMARI」

根津美術館で長く学芸員を務めた西田宏子さんが同館に寄贈した工芸品の展示。受贈記念は1~3まで行われるようで、「古伊万里のがすごくいいわよー」と友人に進められたので先月末に行ってきた。

西田さんと受贈コレクションについてはこちらの記事をどうぞ。
美術展ナビ:根津美術館に陶磁器を寄贈した西田宏子さんのコレクターと学芸員としての人生を聞く
こういう人生を歩んできた方がいらっしゃるんだなーと感服しました。

18世紀初頭、オランダのさる貴族が有田の窯元に「息子たちの結婚にあわせて両家の紋を入れたお皿作ってね」とオーダーしました。よくわからぬ東洋の国によくぞオーダーしたものだと思うし、作る側もその注文をよく受けたと思うし、きちんと納品し、その一家で愛用され、その器がひょんなことから西田さんの手に託され日本に戻ってくるわけです。なんという引きの強さ!!

そんなお話を読んでから根津美術館に行きました。鎖国していたのに、長崎のあんなに小さな入り口を経由してなんとたくさんの品物が西と東の国々で行き交っていたことか! 

伊万里を見て、清朝のひとたちが焼き物をものまねするのだけど、伊万里ほど細かく丁寧に描けなくて「まっ、このへんでいいか」と手を打っちゃった器とか最高でした。とはいえ、清国のほうが焼成温度が高く焼き物としての白さは際立っており、その強みと伊万里の柄に似せて作るようになった器が、地の利からか飽くなき探究心からか結局西欧で覇権とっちゃうのです。うーわーそういうのその2世紀後にも同じ事が起きるのかーと世の無常に思いを馳せました。

これらの系譜につながる私のお皿もよいお皿。先日入手した染付の芙蓉手の菓子鉢も素敵だし、猫のご飯の印判の膾皿も素敵(金継ぎ材料としてよく売られているような気楽なものです)。そんな自分の愛用の品物たちのルーツに触れることができた寄贈展でした。

根津美術館

国立西洋美術館 橋本コレクション「よりどりみどり」

国立西洋美術館と新宿御苑の入館料がどちらも同じ500円と今回初めて知り、びっくりした。いや御苑が500円とるのは理解していますが(値上げしてから改築・改修・道路づくり・建物づくりがずっと続いてますからね)、国立西洋美術館はあんなにいろいろ見せてくれてたったの500円でいいの? いいの? ほんとうにいいの? 

橋本コレクションとは、指輪のコレクターである橋本貫志氏が2012年に国立西洋美術館に寄贈した大コレクション。ローマなどの古い時代のものから近代のハイジュエラーのものまで。


たしかブシュロンの。


たしかカルティエの。

こういうのを見ると、ハイジュエラーが生み出したデザインとその意図、そしてそれを(ちゃっかり)引用しているデザインのものを見るのが楽しくなる。「あーーー、これ1950年代のカルティエみたいなことがしたかったんかー。でも華やかさでは叶わなかったんだね」とか、「1930年代のヴァンクリーフアーペルのばかみたいな精緻さまでは真似できなかったんだね」とか。

これを見てたらやっぱりブシュロンの猫ちゃんリング「ウラジミール」がほしくなっちゃったな。1500万するってんですけれども。レオパードのイヤリングもちょうかわいい、340万するんですけれども。こんなこうきゅうひんなのに、お鼻のもくっとしたところが丁寧に再現されていて大変に憎いざます、やるなー。

国立西洋美術館 橋本コレクション展

 

ほんとうにハイジュエラーのみなさんが、こういう精度の高い、自分の猫を想像させるフォルムで作るのやめてくださらないかしら! カルティエさんのこちらのリング、うちの猫ちゃんが疑似獲物をかぷっとやっている姿にそっくりでけしからんです。

 

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