週末/飲酒なう「大阪の宿」

週末は実家で、両親の確定申告を手伝ってきた。何年か前から私の役目になっているこの仕事、親の懐事情や医者へのかかり具合などをよく知る機会でもあり、ここで得た情報を上の姉たちにさりげなくフォローすることもでき、家族にとっては大事な作業。世帯年収という数字だけ見れば低いほうに位置しているはずですが、心豊かになおかつ健康に暮らしていられるわけで、それはそれでありがたいこと。

移動のお供は、水上滝太郎の「大阪の宿」。気の利いた小説を読んだあとには「人の営みは時代が違っても同じじゃのぅ」という感想をよく抱きますが、これも大正時代の大阪の風俗やその息遣いが手に取るようにわかる良い小説。「実写で見たいものじゃのぅ」と思ったら、佐野周二・乙羽信子・左幸子らで実写化されておりました
以下、Amazonからあらすじ抜粋。
五所平之助監督が『煙突の見える場所』に次いで製作した名作。保険会社のサラリーマン・三田はある事件をきっかけに大阪に左遷される。彼が下宿した安旅館には、情夫に貢ぐ女中や“うわばみ”と呼ばれる芸者など、さまざまな人間が暮らしていて…。
「うわばみ」ちゃんは、たいそう酒癖の悪い芸奴で、気に入った相手とはコップになみなみと注いだ日本酒を飲み干しあうというカタチでしかおつきあいができません。「あてが飲む、あんたが飲む、あてが飲む、あんたが飲む、おゝしんど」、そうやってがぶがぶごくごく飲んだあとには、足袋を脱ぎ帯をゆるめて、すつかり機嫌がよくなるのです。ちょっとでも気に染まないことがあると、相手の頭からコップ酒をびしゃー。現代で実写化するとしたら栗山千明ちゃんしかいませんね!
主人公の三田さんもたいそうな酒飲みで、サラリーマンであると同時に隠れ小説家でもあります。仕事の合間に原稿を書きため、新聞で長編小説を連載しちゃったりしてます。会社の通勤途中にすれ違う若い女の子に恋焦がれつつも、近所のおみつちゃんや芸者のうわばみちゃんともココロ安からぬ関係、つーか、それはまるで「誰も寝てはならぬ」のハルキちゃん状態。あぁもう独身男のそんなにぱっきりとしてないもやもや恋愛模様。こういう人って今も昔もいるもんですなぁ。
特にどうこうといった事件は起きないのですが、物語の起伏はそれなりにあり、この時代、結構ゆるく暮らせてよかったにゃーとうらやましく思いつつも、なんというか「飲酒なう」的読み物、旧仮名遣いのゆったり文学、ご興味のある方ぜひー☆ #子羊文庫でした。

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