今日のJMMから


 Q:1130への回答、ありがとうございました。尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の顛末に、わたしはびっくりしました。民主党が唱える政治主導というのは、大きな外交問題に発展した事件解決の結果責任を地検に押しつけるということだったのでしょうか。5年前、『半島を出よ』という長編小説を発表したとき、福岡を占拠した北朝鮮コマンドへの日本政府の対応の描き方について、「いくらなんでもこれほどまでにバカではないだろう」というような指摘がありました。
 わたし自身も、「本当にここまでバカだったら現実的にはやばいな」と思いながら書いたのですが、どうやら現実は作家の想像以上に深刻であるようです。中国漁船の船長を逮捕し、10日間の勾留延長が決まったとき、強硬な中国に対し、当然日本政府は何らかの外交カードを用意しているはずだと思いました。少なくとも最悪の事態を想定して対処しているのだろうと思ったのですが、結局、政府は何も対抗策を示さないまま、船長を突然釈放し、しかも那覇地検にその責任を押しつけました。最悪、釈放するしかカードがないのだったら、潔く指揮権発動によるべきだったと思います。
 ここまで無策・無能・無責任を晒したことの弊害は計り知れないと思われます。どう考えても、地検には「我が国民への影響や今後の日中関係を考慮して」処分保留にする権限はありません。地検が勝手に「我が国民への影響を考慮して」不起訴や処分保留にしたら、すでに危うくなっている検察という捜査・訴追機関への信用はさらに低下します。そして最大の問題は、非常に多くの国民が自尊心を傷つけられたと感じ、鬱憤をつのらせたことです。このような鬱憤は、外交にとどまらず、政治・経済にも甚大な悪影響を及ぼすはずです。

半島を出よ (上) 半島を出よ (下)
半島を出よ (上) ・ 半島を出よ (下) 村上 龍

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