橘玲「専業主婦は2億円損をする」

専業主婦は2億円損をする

私が橘玲さんの本を初めて触れたのは、2002年発行の「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」でして、ええっとあれから16年! 16年経過しておりますが、人生の早い段階で、というよりも、橘玲さんのいうところの「人的資本」が旺盛だった頃に読むことができてよかったと思います。もともとゴミ投資家シリーズのご本で売り出された橘玲さん、その当時は「投資したくても原資がない」時代だったので、諸々実践するのにかなり時間がかかってしまいましたが、人生の組み立てにあたり役に立った本でした。

で、その橘玲さんがマガジンハウスから出された近著「専業主婦は2億円損をする」。女性の結婚・出産とキャリア問題を扱っています。読めば読むほど、「子供を産んで幸せになれない女性」の実態が浮き彫りになり、暗澹たる気持ちに。いまって平成なのに、もうすぐ2020年になるのに、日本の女性の生き辛さはまったく改善されていないではないですか。

この本は、女性の婚活ガイドブックの側面ももっており、そのあたりはなかなか痛快。アラサーになって婚活にあわててももう遅い、だいたいめぼしい人材は「同じ高校を出た相手」「同じ大学を出た相手」「同じ会社で出会った相手」と早々に片付いている。そんな状況で、女が賢くなってるけれど、「結婚」というものの実態を理解しつつある男だって相当賢くなっている。「長い人生を伴走する相手だ、どうせなら知的レベルも収入レベルも近い相手のほうが人生がより豊かになる。だから若くてかわいいだけの女はセフレにされても、結婚相手には選ばれない」「そういう同類婚を経た人たちが、ニューリッチという層になっていく」。ここを読んで、いつまでも選ばれるつもりでいる女の悲哀を覚えずにはいられませんでした。なんて身も蓋もない話なんでしょう!

そして老後のお金問題にも。橘玲さんは人が持てる資本を、働いて稼げる能力の「人的資本」など3つの資本で紹介しています。「だいたいみんな老後問題とか騒ぎすぎ! 定年になっても年間200万くらい稼げる方法を考えればいいですやん! 自分で商売するもありだし、なにかしら金になることあるでしょ? ずっと働いて、なんにも資本のない老後の時間を短縮すればええですやーん!」と夢と希望のあるエンディングまで一気に駆け抜けていきます。

あとがきで、初めて(私の観測範囲内では初めて)、プライベートなことにも触れられており、ちょっと感動。今の橘玲さんは、ツイッタを見る限り、年に三ヶ月フラフラ遊んでる気楽なライターのおっちゃんという感じです。こんな子育ての苦労もしてないおっちゃんに、適当なこと言われたくないわ、とプンスカ怒りながら読み進めることになるのですが、最後の最後のあとがきで「あらあらまぁまぁ橘玲さんってこんな実生活を歩んできた方なのー」と驚かされます。あのあとがきがよござんした。特に、2002年頃に謎のおじさんのご本をうっかり手にし、折に触れて新刊を読んできた私のような人間にとってはなかなか感慨深い内容でした。人に歴史あり、ですわねえ。よござんした。

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