田沼バブルの焼け跡に

損料屋喜八郎始末控え
損料屋喜八郎始末控え 山本 一力
田沼バブルの焼け跡に、深川神輿の囃子声。
最近、時代小説の売り場に必ず平積みにされている山本一力さんのデビュー作「損料屋喜八郎始末控え」を読んでみました。
棄捐令をめぐる金貸し屋の町人と与力に渡世人を交えての丁々発止の連続の物語。時代が変わっても、金がまつわる話となると、出てくる役者にはそう変わりはないようで、この空白の10年とやらのなにをかを考えながらも読めてしまう寛政経済物語であり、深川人情噺であり、お江戸職業図鑑であり、かなり読み応えのあるお話でした。鬼平犯科帳でうまーくぼかされていた大江戸事情もなんとなく伝わってくるうえに、文章は硬派で簡潔、途切れない緊迫と、繰り広げられる頭脳戦、ほんのちょっぴりの控えめなお色気と、雨の匂いが伝わってくるよなクライマックスの描写。やーん、あたい、こういうのが読みたかったのよー! おすすめです! 
これを読むと、ほんっとーに、江戸も平成も役者は変わらないってのがよくわかりますですよ。今は景気もいい人もいるようだから、数年前に比べて「喉元過ぎれば」な時代かもしれないけど、なんにだって波はあるもの。そういうことも肝に銘じたくなるよな。

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