異次元の金融緩和をジャブジャブと/岡本勉「1985年の無条件降伏 プラザ合意とバブル」

1985年の無条件降伏 プラザ合意とバブル (光文社新書)

ぜんぶプラザ合意のせいだ

著者の岡本勉さんは、1978年東大卒業後、読売新聞に入社。千葉市局を経て83年に本社経済部の勤務となり、日銀担当に。87年からニューヨーク特派員となり、その10月にブラックマンデーを取材。記者として働き盛りのときに目の当たりにした85年8月の日航機事故、そしてその翌月ニューヨークのプラザホテルで取り決められたプラザ合意から「どうしてこうなった」な日本の三十年間を追った。出東洋経済に本書の内容をまとめた版時の記事があったので、こちらもどうぞ。

「貿易黒字一人勝ちの日本にちょっとお灸を据えてやる」つもりで取り決められたプラザ合意、まさかここまでの事態に陥るなんて誰も(日本をハメた欧米諸国も、『アメリカさんがそういっているなら多少は譲りましょうかねガハハハ』と笑っていた日本も)おもっていなかった。あれは日本が受け入れてしまった第二の無条件降伏だったのだ・・・・! 

しかし、無条件降伏だったとはなかなか気づくことができなかった。

これからは内需拡大だーと叫んでると湾岸戦争勃発。自衛隊を派遣することができないのでお金で解決、国民は反発(あら、気の利いたリリック★)。イー・アイ・イ事件(いま思うと、高橋治則さんは殺されたのかもわからんね)、ウィンザーホテル洞爺湖、損失補填、総量規制、不良債権といった単語が連日ニュースに出るようになる。バブル期にやったアレやコレやの後始末を始めたあたりで「あれ、日本やばくね?」と気が付く。失われた10年。

2000年発足の小泉内閣の構造改革で、竹中平蔵のもと「病人に乾布摩擦をさせている」ような経済政策をガンガン発動し、もういっちょ失われた10年。
2006年第一次安倍内閣、翌年福田赳夫、次の年は麻生太郎、その翌年に「ちょっとお灸を据えてやるつもりで」民主党政権、鳩山由紀夫、菅直人、東日本大震災、原発事故、9月野田内閣、円高加速、11年11月1ドル75円の最高値をつける。「あれは悪夢の民主党政権だったのだ」と2012年第二次安倍内閣。アベノミクスの三本の矢を解き放った。異次元の金融緩和をジャブジャブ八年間続けたが、日本はちっとも取り戻せてない。なぜなら産業が空洞化してしまったから。ジャブジャブマネーを撒けども、砂漠に水を撒いているようなものなのだから。

 

そんな日本はどうしたらいい? 経済大国でなくなったとはいえ、GDPはドイツを大きく離して世界三位だ(でも、ドイツの人口8300万人)、インバウンドも盛り上がってきた。なにしろ五輪がある(本は2018年1月出版)。日本人のマインドが「もはや戦後ではない」と目を輝かしていたあの時代のように元気になり消費が戻ればなんとかなるんじゃないかなーどうかなー(要約)(詳細は本読んでね)、と結ばれている。

しかし、個人的にはそんなマインドに戻る気配は薄いと感じる。消費するといっても、ゴミを出すのも一苦労、消費税の負担が大きい、断捨離だなんだと無駄な消費は悪という考えにすっかり洗脳されてしまった(これは結構大きいと思う)、派遣と正社員の格差は広がる、ギグ・エコノミーなどと耳障りはいいが人間を使い捨てるようなサービスが横行、社会保障費はあがる一方、そのうえコロナ禍、五輪も延期、おまけにレジ袋の有料化。アホかと! お買い物するなといってるの、それともバンバン消費してほしいの、どっち?  

著者の方は本人が三十代のときに目にした「元気だった日本」の残像が色濃いのかもしれませんが(1947年生まれのトランプさんが、彼が働き盛りのときに目にした日本の経済力がいまだに続いている勘違いしているように)、自分に勢いのあった時代の認識はなかなかアップデートできないもの。
それと同じようにうまれたときから窮屈な社会で生きてきたひとたちに「明日があるさ!」と元気になれっちゅってもなかなか厳しいと思いますの。断捨離に代わる消費を喚起・加速させるようなキーワードが生まれ、消費税5%に戻れば、内需も拡大するんじゃないかしらどうかしら。

さてわたくし、Instagramが流行りだした時、ビヨンセをフォローしていました。彼女のゴージャスな家のゴージャスなリビングの中央に、サムスンのテレビが置いてあるのをみて、あ、日本終わってるんだと理解したの。その答え合わせ本でもありました。とかいってたら、えっ、森永卓郎、とうとう年収二百万で暮らせ宣言を・・・・恐ろしい!! 年収300万時代の本が出た頃は「なにいってんの、わははは」とみんなで指差して笑ってたのに。。。なんてこったい!

 

年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学 (PHPビジネス新書)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください