時代にケリを! 映画『グラン・トリノ』


終わったあと、涙が止まらないのか、立ち上がれない女性客が何人もいた。余韻に縛られたようにして、エンドロールが始まっても、席を立つ客がとても少なかった。私も見終わったあと、トイレの個室で思い出し泣きをした。おろろーんと泣きそうになった。
Clint Eastwoodが暮らす、かつての古きよき企業城下町の新興住宅街。最初にその家を買った世代は既にこの地を去り、あるいはこの世から去り、空き家になっていく・・そしてそこに越してくるのは世界中からの移民・・・。あの風景は、未来の日本の、昭和に「新興住宅地」と呼ばれた街の風景なのかもしれない。
おりしも4月30日にはビッグ3のひとつクライスラー倒産のニュースが。みなが工場で働き、ものを作り、ささやかな消費を楽しみ、家の庭をいじり、自分の家の不具合は自分でなるべく直し、玄関のポーチには国旗を掲げ、アメリカ人であることを誇りに思いながら、暮らしていた古きよき時代にケリをつけるような映画でした。それは、劇中のあの爺さんの役割ではなく、Clint Eastwoodという俳優そのものの役割だったのかもしれません。
ココロある人には見てもらいたいと思う映画です。書いててまた涙が出てきた。デートムービーではなく、一人で、じっくりと、静かに、向かい合う映画と思います。

5 COMMENTS

カヲル

最後の決断の仕方が、
今のイーストウッドの判断なんでしょうね。
個人的に床屋での大人の会話で
死ぬほど笑いました。
どこの映画館でもエンドロールで立つ人がいなかったみたいですね。

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スガ

あのイタリア人の老人がいて、ポーランド人の老人がいて、モン族の青年がいる、というの、大笑いしながらも、よい場面でしたよね。アイルランド人はやっぱり酔っ払いだし。
なんかねー、打ちのめされるとかそういうんじゃないんだけど、本当に立ち上がれなかった。後追いで泣いたの初めて。イーストウッドさんは映画の神様に愛されまくってて、カヲルちゃんがいうように、うっかり召されたりしないか本当に心配。
あと、クリントさんが、何か気に入らないことがあったときの「うーーーー」とうなるところ、とても好きです。

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ナガ

ナガが見た映画館も、みんな座ったままだったよ。
あたいは、帰ってきて、少ししてから( TДT)ました。
後からくるものが大きい作品じゃったね。
床屋→工場のシーンいいよねえ。

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さよ

静謐・・・では、ちょっと違うかなという気もするのですが、悲惨な展開もあるのですが、総じて静かな作品、という印象でした。
自分から息子に電話をかけた場面あたりから、不覚にも涙腺ゆるみっぱなしで、終演後、場外の休憩スペースで目を潤ませている男性も何人か見かけました。若かりし時の回想シーンが一切入らない構成にも感心することしきりでした。あ、また思い出し泣き・・・(><)

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スガ

床屋→工場のシーン、ほんとにいい。
ああやって少年は大人になっていくんじゃよってところがじんとくる。
あういうことを教えてくれる大人に出会えた少年は幸せじゃよ。
私の隣には、五十代のビジネスマンが座っていたんですけど、うわーん、後半、おじちゃん肩が震えてるいたよぅー。

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