葛河思潮社の「浮標」

http://kuzukawa-shichosha.jp/
世田谷パブリックシアターで。4時間にも及ぶ大作です。
あらすじは、チケットぴあのサイトから。
軍靴の足音が次第に高まるなか、洋画家・久我五郎は、千葉の郊外にある海辺の借家で、肺を患う重病の妻・美緒の看病に明け暮れている。美緒の回復を信じながらも、その病状は悪化の一途をたどるばかり。さらに、美緒に財産の譲渡を迫る家族、五郎を組織の政治に利用しようとする画壇、経済的不安などといった逆境にさらされ、次第に追いつめられていく五郎。戦地へ赴く親友との再会に五郎の心は一時和らぐものの、その矢先に美緒の容態は急変する─。
主人公の久我五郎を田中哲司さんが演じているのだが、これ以上の配役はないのではなかろうか、というくらいのぴったり具合。臨終間近の美緒を演じる松雪泰子の、死を間近にした人だけがもつ清らかな透明感といったら! グラビアアイドルのイメージのあった高部あいちゃんが頑張ってました。あの子、写真で見るよりずっとスタイルがよくってよ。久我の友人で戦地に赴く赤井は、平岳大が演じてますが、舞台映えする人ですな。演出・出演の長塚圭史は、まじめに演劇に取り組んできた人なんだなぁと思わせるものがあり(しかしその最中、長塚圭史のお父さんの顔が思い出せなくて蟹江敬三の顔がちらちらしてチラチラして、うわぁぁぁー)、見応えのある舞台でした。舞台装置はほとんど動きがなく、静かな静かな芝居で、4時間があっという間・・・・というと言い過ぎかもしれませんが、小刻みに入る短い休憩のおかげか、長すぎる、とは全く思いませんでしたよ。
なにより照明が素晴らしかった。シンプルな舞台装置にあわせたシンプルな照明で、海辺の家の一日の光の変化を巧みに表現しており見事でした。
「浮世が練習だと思って生きていて間際になって慌てるのかね」というセリフが出てくるお芝居を見るのは、311の後の日本で見るのは意義があることかもしれません。(Minatoyaさん、このセリフ覚えていたら教えて!)
内容の濃さや舞台そのものの美しさなどを鑑みても、S席6,000円と割りとお得なので、ご興味ある方はぜひ~。世田谷は9月30日まで。
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/09/post_298.html

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