特急の切符もとめて夏の駅

黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)
黄金を抱いて翔べ (新潮文庫) 高村 薫
高村薫のデビュー作『黄金を抱いて翔べ』を読んでます。
1990年第3回日本推理サスペンス大賞受賞作品です。
様々な過去を持つ六人の男たちが、住田銀行の地下金庫に眠る時価10億の金塊(今なら金価格が倍になったから20億ですね!)を盗もうってぇ話です。舞台は大阪、バブルのころなのでとにかく景気がいいのです! 先にも書きましたが盗む金塊は10億相当(当時)、その六人のうちの一人、コンピュータ会社の社員の野田は愛人との手切れ金がわりに5000万のマンションを手渡したり(一介のサラリーマンです!)、リーダーの北川のお給料も昇給して60万の大台に乗るところ、どこかから盗んできたソアラは派手に炎上させて別の窃盗に使いドカーン! ふぅ、派手だ。近頃は犯罪小説も小粒になっているのかもしれません、読んでないからわかんないけど。携帯電話とネットのない時代の強奪って骨太でいいわー。
村上龍の「半島を出よ」のように、その場所を自分の足でなぞって歩きたくなるような臨場感、緻密な取材、若くて硬質な文体、おぉーこれが初期高村薫なのか。
しかし、昨夜、主人公の幸田の腕に抱かれるようにして、北朝鮮から潜入した爆破エキスパートのモモが死んでしまうページをめくってしまい、そこを読み終えて、読む気が失せた。失せたといっちゃぁ失礼だが、モモはそれだけいとおしいキャラクターだったんだよぅ、バカー。
「金塊強盗部分が全体の1/5、それ以前の六人のやりとりの冗長さといったらなんじゃそら! 実力のある作家だからこそあえて苦言を呈したい(意訳)」というブックレビューを目にしたけど、そのやりとりと葛藤があってこその犯罪劇でしょー。あほかー。そういうこというヤツは、今後はどの映画もラストシーンだけ見るように! 素人のいう「あえて」に意味があることなんてほんとないよ。あほー。
さよならもいわずに (ビームコミックス)
さよならもいわずに (ビームコミックス) 上野 顕太郎
吉田戦車さんのtwitter で「読むべし」とすすめられたので。
若くして(本当に若い年齢で!)亡くなった奥様の死とその前後を綴った作品。淡々としているのは、その渦中にいた人の実感だからだろう。だからこそ、そのところどころで姿を現すココロの本当のところの表現に胸が打たれる。154pと155p、自宅に帰って来た奥様の棺の隣に布団を敷き、その中から祭壇を見上げる見開きとか、見ているだけで涙が出る。人が死に、人が残されるというのはこういうことかと。
帯は夏目房之介。
作品自体を
はるかに越える
「悲しみ」
「喪失感」が、
最後には
祈りのような
清々しささえ
もたらす」

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