四世紀有田を祝ふ椿咲く/d-labo 伊万里磁器と江戸時代の歴史

お友達のFacebookで「自分にいろいろが還元されるこんな愉快な銀行があるんやでー」と紹介されていたスルガ銀行の「d-labo」というサイトにアクセスしたら、ミッドタウンで「古伊万里を知る」というテーマでトークショーが開催されると知りました。今年は有田焼が生まれて400周年とのこと、現地でまた都内でもいろいろなイベントが開催されるようなので、その知識を仕入れるために行ってきました。

私自身は白に藍の染付の器が大好きで、毎日使う器はだいたいその色合いにモダンな山中漆器を添えるような感じ。一時期あっさりした染付のロイヤルコペンハーゲンのボウルにはまって、小を二つ、中を一つ、そのもういっこ上の中サイズを一つ、重くて持てねえよという大サイズをひとつ、合計5点を重ねて保管しています。あぁスタッキングできるのって素敵! 波佐見焼の箸置きや、山中漆器などとも相性がよござんす。実家には、派手なものはないけど、見ればほっとする見慣れた食器が食器棚を占めて、その中には気がついたら40年近く使っている器がちらほらとある。これが正しい家庭の器というものかもしれない。句会マダムのおうちでは、それはそれは素晴らしい染付の器や、ぼてっとした土物の器が登場し、この辺が審美眼と年季の入り方の違いだなと納得しながら毎回の句会を楽しんでおります。そのくらいの器に対する接し方でございます。そして得た知識は、器って意外と欠けない、割れない、長いつきあいになる、というもの。10年前のお友達の結婚式の引出物で使ったお皿を、その縁を欠けさせることなくいまでも毎朝使っています。15年前に買ったマグカップも、さすがに少々色あせてきたけどまだ現役です。この二つは「人生おつきあい小物」の最長不倒距離を目指していただきたいと思っています。

さて、そのセミナーなのですが、そんなほっこりした暮らしと器に関するあれこれ・・・ではなく、「古伊万里と日本史」のお話でございました。講師は日本骨董学院 学院長の細矢隆男先生。セミナー開始時に渡されたレジュメには、1568年信長入京から1871年の廃藩置県までの江戸と中国、欧州の歴史がびっちりと書かれている。真田丸の時代から新選組の時代まで、ぶんきゅーう三年! 「大政奉還はね、坂本龍馬がやったんじゃないですよ、あれは英仏代理戦争なんですよ、覚えておきましょう」、おっ、先生やるね、もしかして私の史観と似ているのではないかしら、この方とはすっごくお話が合いそうー! で、先生の駆け足陶器と日本史のお話。

信長・秀吉時代のキリスト教の話などを踏まえたあとで、「もう国内に領地がない!」となった秀吉は朝鮮出兵をする。ちなみに「もうやれる領地がない!」といち早く気がついた信長は、「茶器にえっらい値段つけてそれ与えることにしよ、そんで殖産もしよ、一石二鳥やん、俺ってあったまいいー!」とさっさと判断しその方向で政治を進めていた。朝鮮出兵ののち、半島からは陶工たちがたくさん連れてこられ、彼らは有田に住んだ。有田に磁器の成分となる土があることを発見した彼らは、徐々に有田焼を産業として成立させていく。さて、そんな頃、内乱のため荒廃しつつある明から輸入先を変えようとしたオランダ東インド会社から「磁器作れるのん? ちょっとやってみてくんない?」と陶器の大量発注を受ける。「えぇー俺ら半外様だしぃーそんなに作ってたら、江戸のみなさんに怒られちゃうぅー、チラッチラッ」と一度は断る鍋島藩、しかし外貨が入って生かさず殺さず程度に稼いでくれる分にはお江戸も潤うよね、「やりなよー、You、輸出しちゃいなよ」と1660年、輸出開始。輸出されたものはいわゆる柿右衛門様式。美しい素地と鮮やかな色絵の器は欧州でも大人気! 1709年には、これに目をつけたポーランド王、「これ、自分ところで作っちゃえばよくね? そしたらがっぽり稼げるんじゃね?」とJ.F.ベドガーという錬金術師をお城に幽閉し磁器焼成技術を完成させ、のちにマイセンが成立する。彼の地で磁器が流通しはじめると東インド会社の貿易量も激減、有田への注文も減ってくる、不況・飢饉・天災を経て享保お改革、かの時代の一億層活躍時代かなんか知りませんが庶民に意見を求めた目安箱なんかを作ってるようじゃぁだいぶの危機的状況でございます、有田も大変苦しい時代を迎えます。そしてとうとう1799年、東インド会社が解散! 「なんか極東の地に、俺たちがまだ植民地にしてない島があるんだって?」と各国がやってくるようになります。1853年ペリー来航、翌年日米和親条約締結、そして日本は開国の道へ! そして上の「英仏代理戦争」に話がつながります。つながった、なんだかよくわからないけど、私の中では有田と日本史がいまつながった!

トークの最中、古伊万里のよきものを先生がスライドにて紹介してくださる。大阪夏の陣から元禄までのよき古伊万里たち。それらを見せたあと、日本の陶磁器にインスパイアを受けた欧州の陶磁器が映り出された。マイセンとロイヤルコペンハーゲン。

「ロイヤルコペンハーゲンはですね、白磁に藍の染付に魅せられまして日本の唐草模様を西欧風にアレンジしたんですよね、これ原型は有田の蛸唐草です」

蛸唐草。

これが彼の地では、こうなる。

「で、この有田、高台の中に手描きの型番や波波の模様が入ってますが、ロイヤルコペンハーゲンにも入ってるんですよ。見てください」

はっ!そういえば、そうだ! 先日、有田焼のそばちょこがほしいなーと探していたところ、こちらの商品にヒットしました。そこで紹介されている高台のお写真、どこかでこの数字の描き方を見たことがあるなーと思っていましたら、自分家のボウルにも確かにそんなようなものが刻まれておりました。

「この柿右衛門なんかマイセンにそっくりなのがありますよ」

こっちがアンティーク柿右衛門。

こっちがアンティークマイセン。

「古伊万里は一時期すごいブームになりましたが、今は下火です。今なら面白いものに出会えるかもしれません。古伊万里も株と一緒で安く仕入れておいて、高く売ればいいんです! ね、簡単でしょう?」

いやいや先生、それができればみなさん甘利砲だのマイナス金利砲だのにアワアワせずに済むのではないのでしょうか。

「ちょっとでも怪しいなーと思ったら買ってはダメです。そこも株と一緒ですね」

先生がちょっとずつ株の小ネタを挟んでくるのはなぜ・・・。

講演が終わったあと、「ささ、ここに古伊万里持ってきたのでみなさんご覧になって」と壇上に呼び寄せてくださる。えっ、これ、1600年ころの器なんですよね・・・先生、こんなにさらっと見せてくれてよいの? こういう惜しみない中高年になりたいものですじゃ。先生の講演があったらもうちょっと聞きたいですわー、遅刻して残念でしたわー、会場のみなさん半数がコクコクと船を漕いでおられたけど平日午後7時開始ではそうなってもいたし方ないわよねぇー。

さて、最後に今日のまとめです。

・貿易は儲かる

・しかし隆盛を誇った東インド会社だって解散するんですもの、ビジネスには賞味期限がある。

・歴史のエンジンは経済だ

・器はなかなか割ったり壊れたりしないので慎重に選ぼう

これも買って読んでみよっと。
休日は、骨董 (祥伝社新書)

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