高村薫「照柿」「李歐」

 
「マークスの山」を読み終えてから、それでは過去の高村薫作品を読み返すべ、と思って、「照柿」「李歐」をたてつづけに読んでみた。
 過去に読んだはずなのに
 全然記憶に残ってない・・・
「照柿」は合田雄一郎シリーズ。彼の人生と作品の時系列は、「マークスの山」 → 「照柿」 → 「レディ・ジョーカー」 → 「太陽を曳く馬」 → 「冷血」 という流れ。今年一年の私の読んでいる順は(晴子情歌→新リア王→)「太陽を曳く馬」→「冷血」→「レディージョーカー」→ (ここで講演会) → 「マークスの山」→「照柿」。中年に差し掛かった合田さんの社会人人生を、若い頃に向かって遡った感じです。1958年生まれの合田さんも平成25年・2013年のいま、55歳だものねー。そろそろ定年後の暮らしを考えているのかちら、どうかちら!
「照柿」は「太陽が熱くて、人を殺しちゃった」なお話で、「現代版罪と罰」というキャッチコピーがついていましたが、どちらかというとアルベール・カミュの「異邦人」のがしっくりきたよ、ママン。WOWOWでは合田さん役を上川隆也が演じてましたが、ここはひとつ西島秀俊でぜひ。NHk BS でドラマ化した「照柿」、運命の女「佐野美保子」を田中裕子が演じたそうですが、えぇ、制作当時、彼女以外の適任はいなかったことでしょう! 
照柿ドラマ情報
酷暑・猛暑・炎暑の中、日本の土着刑事合田さんが地を這うようにする捜査の物語「照柿」と違って、「李歐」は壮大な青春の物語。あらすじはAmazonから。
惚れたって言えよ―。美貌の殺し屋は言った。その名は李欧。平凡なアルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った。ともに二十二歳。しかし、二人が見た大陸の夢は遠く厳しく、十五年の月日が二つの魂をひきさいた。『わが手に拳銃を』を下敷にしてあらたに書き下ろす美しく壮大な青春の物語。
うひゃー!!! 大阪、十三、町工場、殺し屋で踊り子、文革から逃れてきた中国人、南北朝鮮からやってきた朝鮮人、ヤクザ、拳銃密造、公安、警察、何も知らない善良な女たち、マニラ、香港、フィリピン、シンジケート、最後は大陸のど真ん中のハルピンで! ・・・・ こっこれはっ、気恥ずかしくなるくらいな壮大な青春の物語なんだけど、でもでもでもっ、そんなに夢々しくないのは、書き手が高村薫さんだから? 旋盤工の描写とか、ああいうところがしっかりしてるから!?
吉田秋生先生の手によって漫画化されないのでしょうか? 中村真理子先生の絵柄で全5巻くらいの物語として読んでみたくもあり、たなか亜希夫先生の絵柄で全20巻の長さにしていただいても!! 物語は日本のバブル景気絶頂の頃で終わり、その頃の大阪の匂いにどっぷりしたい方はぜひー。

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