あるところに小さな虫や動物が大好きやさしいおじいさんがいました。
おじいさんのおうちの近くに小川がありました。そこは葦や水草に囲まれた自然豊かな小川で、おじいさんはそこで源氏蛍の世話をしていました。春には餌をやり、夏には成長を楽しみ、秋には次の年また会えるように草の手入れなどをしていました。夜も暗くなってから蛍の様子を楽しみに見に行くおじいさんを、おばあさんは「怪我でもしたらどうするのか」と心配していました。
おじいさんが蛍の世話を始めて二十年も経った年の夏のある日の朝、おばあさんが病気で亡くなってしまいました。おじいさんはすっかり気落ちしてしまい、蛍の世話も忘れてしまいました。そしておばあさんのあとを追うようにして、その年の冬に、おじいさんも亡くなってしまいました。
それから何年か経ち、おじいさんたちが暮らしていた家に、新しい家族がやってきました。
「やぁ大きなおうちだなあ。ここで家族5人で楽しく暮らしていこう」
季節はもう真夏です。おじいさんの源氏蛍の季節は終わっていました。新しい家族のお父さんは、おじいさんとおばあさんのお墓に行き、「これからお世話になります」と線香をたむけ、挨拶を済ませました。家族みんなで家具を運び込み、みんなで「ここをキャンプ地とする」などと指差しながら楽しく引っ越しを済ませました。
その夜、みんなで楽しく、そのおうちでの第一回目の晩御飯を食べているときのことでした。大きな源氏蛍が一匹、おうちの中にやってきたのです。網戸もしまっているのにどうやって入ってきたのでしょう。大きな源氏蛍は、お部屋の中を一周し、そのまま玄関にふわふわと飛んでいき、扉を開けてあげるとそのまま空に飛んでいきました。
翌日、新しい家族のお父さんは「家にホタルがやってきましてね」と近所に住むおじさんとお話してました。おじさんは「あそこのおじいさんは蛍の世話をしていたから、挨拶にきたんじゃないかな」と言いました。お父さんは感心し、「お彼岸になればおじいさんとおばあさんの娘さんたちがお墓参りにくるから、そのときに話してあげよう」と思いました。
おじいさんがいなくなってから、小川の蛍はおじいさんの仲良しのおじさんが面倒を見ているそうです。「来年もまた蛍さんに会えるといいね」と新しいお父さんはお家でみんなと話しました。おしまい。
ちょっと待った-!!! その話をお彼岸のときに聞いた私と姉は「8月に源氏蛍はまず出ません」と前置きした上で、「それはほんとうにうちのお父さんですわ」と新しいお父さんにお伝えしました。「蛍になってまでお邪魔してしまい恐縮です」とぶんぶん頭を下げました。
「新しいご家族のみなさんの様子を見に来たんだわ」「お墓参りされたその日に、お邪魔するなんて反応良すぎる!」「まだなにか思い残したことがあるのかしら」「もー、知らない人たちの輪に入りすぎ!」などとぶつくさ言いながら、ちょっと涙ぐみながら、お墓掃除をして帰りましたとさ。おしまい。
お父さん、義理堅い方ですなあ。
「お墓参りしていただいて恐縮です」と、
早速お礼にうかがうとは!
新しく住んでくださるご家族もいい感じのご家族ですね。
いろんな人とコミュニケーション取りたがりおじさんで生前はヒヤヒヤしたものですが、ふえええ、お亡くなりになっても・・とおののきましたよ・・ふえええ。