光ってみえるもの、あれは 川上弘美

光ってみえるもの、あれは
光ってみえるもの、あれは 川上 弘美
人は物を借りることができるけど、人を借りることはできないのよ。祖母は僕の目をまっすぐ見ながら、言った。
できないの?
できないのよ。たとえそれが人まるごと全部じゃなく、考え方だけ、とか、心の一部だけ、だとしてもだめなのよ。借りられないの。まんいち借りられるとしても、ものすごく高くつくの。
「なんかその親友ってひと、あたしとは肌が合わない感じがするな」母は遠慮会釈なく感想を述べた。
「アタシもあんまり合わないけど」祖母はうなずいた。「でも、そりが合う人間と仲良くなるばかりが能じゃないから」
(大鳥さんが北川さんに宛てた手紙で)
・・・
それにしても、島というものはいいものです。
北川さんも、暇ができたら、来てください。
おいしいお酒もあります。
おいしい魚もあります。
というのが、終業式の数日前にキタガー君が見せてくれた、大鳥さんからの手紙の一節である。
「最後の二行は『泣いた赤鬼』を意識しているのでしょうか」とキタガー君は首をひねっていた。

今までのぼやぼやぁっとした物語ではなく、随分と輪郭が明瞭になっている物語。著者近影の写真も美人度があがっていました。
最近仕事で目にした珍しい名前の土地に、主人公の高校生が友達を連れ立って夏休みに旅に行く(旅に行くというか、逗留しに行くというか)。こういうかたちで、自分とは縁のない土地の名前が自分の記憶に刻まれていくってのはなかなかにステキなことですね。

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