バンコクも楽しかったと思い出す/ゲッツ板谷「タイ怪人紀行」

タイ怪人紀行 (角川文庫)

勢い余ってゲッツ板谷の「タイ怪人紀行」もあわせて読む。行ったことのある土地の旅行記は面白いものです。「いい年した大人がバックパッカーとはひと味違う視点で、現地の怪しげな人たちを尋ねてまとめる」という趣旨の紀行文です。しかしタイも複雑な事情を抱えた大雑把な国なんだぁ。

当時、バンコクに拠点を持ってた鴨志田さんが旅のアテンドをしたわけですが、名言揃いで目から鱗が落ちます。あるバックパッカーがたくさん泊まってるゲストハウスでのこと、卒業旅行にやってきた日本人大学生に向かって「どうしてここに来たの、と矢継ぎ早に質問するカモちゃん。

「旅とは?・・・・・・・ はい、君」
いきなり兵隊ヤクザのような男に指差され、面食らった様子のショートヘアの女のコ。
「よ、よくわからないんですけどぉ・・・・・・、こういう汚いところに泊まったりする経験って、将来何か大切な・・・・・・」
「答えになってないよっ、それじゃ単なる貧乏ゲームじゃねぇか! ・・・・・・旅とは? はい、そこのクリスタルキング」
髪が少し長いというだけで、藪から棒にそんなニックネームで呼びかけられるオレの左隣りに腰掛けている青年。
「-新しい自分を・・・」
「はい、ダメ! 旅なんかしたって新しくならない、君は!」

旅なんかしたって、新しくならないよねー、うんうん。

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