広々ゆったり余白たっぷりの東京国立近代美術館で緑色の大きな絵を見たあと、地下鉄乗り継いでちまっとした空間の映り込みの多いガラスケースの並ぶ汐留パナソニック美術館へ。撮影OKの当展示会、館内はガラスケースだらけなので、黒い服で来るべきでしたと反省。
熱海のMOA美術館の紅白梅図屏風のところで使われていたガラスは、作品と自分の間にガラスが存在しないかのような透明さでしたよ。ガラスの存在に気が付かず絵に近づきすぎた人の皮脂がついていることで、初めてガラスというものがあることを知るという有様。パナやんも儲かったらこういうガラス使ってよぅー。
さて「特別企画 和巧絶佳展 令和時代の超工芸」は、1970年以降生まれの若手伝統工芸士を集めた展示会。レディー・ガガが履いた花魁高下駄風ブーツから超絶技巧の赤絵まで、陶磁器、染織、螺鈿細工、ガラスなどジャンルは様々。わたしが猫を捕まえて「肉球いいにおいーーー」「ふへええー足の裏の肉球、もっといい匂いー」などとスーハーやったり、ツイッターでお友達とおしゃべりしてる間に、この人達はたゆまない努力を続けてこられたのです。人生の時間の使い方とは!
漆芸作家 池田晃将さん
先月中旬「螺鈿細工が売れなくて困ってます」と工芸士の人が呟いたのがバズり、結果売上が増えたということがありました。
コロナの影響で4月から売上がほとんどなくなってしまい、なんとかしないとと思いTwitterを始めました。
今では「Twitterで一目惚れしました!」とご購入いただけたり、わざわざ遠方から店舗まで買いに来ていただけるようになりました。
本当に世界が変わりました。皆様とご縁を頂けて本当に感謝です。 pic.twitter.com/NadHWfRBdj— 野村拓也 螺鈿職人 (@takuyanomurardn) August 18, 2020
このツイートの流れで、池田晃将さんという漆芸作家さんの存在を知る。
https://www.terumasa-ikeda.com/
ぎゃばーん、なにこれかっこいい。本展覧会ではこの方の作品も展示されていました。自分の写真が下手で切ない。すみません。スマホで撮ってその場でSNSにアップして小さいモニターで見る分にはきれいな写真が撮れていたのです、ほんとうです!
ガラス工芸の山本茜さん
もうなんだか繊細すぎて眩くて語彙がゼロに。
加賀赤絵 見附正康さん
凄まじい。制作期間などお尋ねしないようにしておきます。
蝋纈染 安達大悟さん
かっこいい。ただただかっこいい。
その他、螺鈿細工の橋本千毅さんなど印象的でした。大事なことなので二度お伝えしますが、私が猫の肉球を吸ってスーハーしている間に、「ピカチュウゲットだぜ!」などとやっている間に、この方たちはたゆまぬ努力をされていたのです。人生とは!
上のバズった螺鈿作家さんのツイートのリプライを見て思ったのですが、螺鈿というものそのものを知らない人がこの世にたくさんいることに驚きました。「日本人のくせに、代表的な伝統工芸品を知らないなんて嘆かわしいことざます!」と言いたいのではありません。日本の伝統工芸品については経産省の肝煎りで支援事業・広報活動が多々行われていますが、工芸品を知らないひとたちにまったく刺さっていないのではないか、だからといって工芸品女子などという安易なプロモーションは絶対にやってほしくない(そんなことに血税を使ってほしくない)。「いくら美しいといっても、漆で日本のGDPがあがるわけじゃない」と村上龍も言っていた。個人のSNSでいくつか奇跡が起こることもあるかもしれないが、こういったものの存在を知らない人たちに届くにはどうしたらよいのか・・・ほんとうにどうしたらよいのでしょう。
特別企画 和巧絶佳展 令和時代の超工芸は 9月22日(火・祝)まで。入館料1000円。ご興味ある方はぜひー。
生活に馴染む感じでお財布が傷まないかわいい赤絵★