あらなにかしら面白そうと手にとって読み始めたら「あああーーあのひとかー!」と気がついた。
自分たちで作った古代の舟で沖縄の海(というか湾?)で航行練習し、「これで台湾から与那国島へ渡ってみようと思ってるんです」という実験をしていたあの海洋学者さんの本か。数年前、ニュースでその様子を見たことがある。なんとも頼りない浸水しまくりそうな草で作られた舟に、5~6人の大人たちが乗り込みえいさーえいさーと湾の中をぐるぐる回っていた。
こんなんで台湾-与那国島間を渡ろうなんて、学者先生とは大変なことを思いつくものですじゃ、どうぞご無事に完遂しますようと願ったものです。私がそのニュースを見たのは2016年くらいのことだったようで、その時の様子がyoutubeで公開されています。
あれから数年経過し2019年の夏、海部さんの実証実験も終わったようで、それらをまとめたのがこの本というわけだったのです。あの先生の本とは知らず、なぜ手にとったのか、それもまた運命。カラー写真もふんだんに掲載されていてプロジェクトチームの奮闘ぶりがよく伝わる。台湾から与那国島への間を横たわる黒潮がどういうものかを可視化した図もあり、とてもわかりやすい。2019年夏、台湾からの実験直前に日本で撮影されたPR動画がこちら。
筆者の海部さんは、台湾にいたサピエンスがなぜ与那国島を目指したのか、目指す根拠はなんだったのか、それを確かめるため、東の海に見えるであろう与那国島の姿を探しに花蓮市の立霧山を登ります。はたして彼は、そこから100km先の与那国島の姿を見ることができたのでしょうか。
台湾で実証実験が始まったときのニュース映像、そしてこの実験の結果を報じるニュースもご覧いただけます。 新年早々よい本に出会えました。2021年もよい本を!