ヘザー・モリス「アウシュビッツのタトゥー係」/主人公の生還ルートをまとめてみた

アウシュヴィッツのタトゥー係

作品概要

イギリスで130万部、全世界で300万部を突破したベストセラー、待望の翻訳。第二次世界大戦下のアウシュヴィッツで同胞に鑑識番号を刺青する役目を割り当てられたユダヤ人の男がその列に並んでいた女性と恋に落ちて「絶対に二人で生きてここを出る」と心を決め、あまりに非人間的な日常の中でささやかな人間らしさと尊厳を守り抜くために重ねた苦闘と誓いの物語。「タトゥー係」本人の証言による実話に基づく。

「ナチスがユダヤ人家庭の青年男性を働き手として差し出せっていってるのだが」というスロヴァキア政府の要請に従い、家族を守るためひとりのユダヤ人青年が家を出る。プラハの体育館で5日待機させられ、トイレも窓もないコンテナのような家畜運搬車で2日間の劣悪な環境で移動した果てに到着したのは建築途中のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。24歳の主人公ラリは、1942年4月に強制収容所で「32407」という被収容者番号の入れ墨を入れられる。そして1945年1月のソ連軍接近の日までこの収容所であらゆる地獄を目にしながらも、また彼も、あらゆる所業をなしながら生き延びるのであった。

 

彼の代わりのように死んでいったとしか思えない人たちがたくさん登場する。
青年時代のラリの写真が掲載されていますが、この人に悪印象を抱く人は少なさそうなハンサムで、またドイツ語・ロシア語と五ヶ国語を操ることができ、顔と語学があれば人はどこに行ってもやっていけるということなのか。彼自身も常に注意深く振る舞い、観察や情報収集を怠らずしていて、こういうひとはどの時代に生まれても何をやっても成功するタイプの人に見える。
余談ですが、語学が堪能なために後半、ソ連軍にまつわる愉快痛快な出来事が発生します。満州や樺太で蛮行を行ったと聞かされているロシア兵が、スロヴァキアでお行儀いいのは日本人としてなんだか解せない、アジア人は人間扱いされていなかったということか。ひどい。

 

アウシュビッツから故郷まで

アウシュビッツとラリの故郷スロヴァキアの首都ブラティスラヴァまではいまなら電車で8時間の距離ですが、彼がアウシュビッツから故郷のクロムパヒまで帰還したルートはこちら、だいたい1000km。

アウシュビッツからマウトハイゼンの収容所までは貨車(多分家畜車)、マウトハイゼンからウィーンまではいろいろな手段で。ウィーンからプラティスラヴァまでは電車で1時間半(いまは1時間7分で移動できるそうです)。スロヴァキアの首都プラティスラヴァからクロムパヒまでの400kmの道のりは、荷馬車やトラック・馬に乗りながら、乗せてくれた人には幸福の王子みたいなスタイルでお礼をしながら徒歩中心で。

ちなみにクロムパヒからアウシュビッツまでは約200km。しかし帰還の道のりは1000km、3年と数ヶ月。

スロヴァキアといえば緑の貴公子ペーター・サガン

ちなみに自転車レースのピーター・サガンはスロヴァキアのサガンはジリナ出身、第四の都市で人口は8万人、チェコやポーランドの国境近く。彼のおじいさん世代は彼の地で一体どんな青春を過ごしたことでしょう。

ciclissimo(チクリッシモ) No.59 2019年4月号 [雑誌]

まとめ

ソフトカバーの350pの本で、文字サイズ、行間、どれをとってもとても読みやすいブックデザインで(あたい、ソフトカバーの本大好き!)、文章も気難しくなく馴染みやすいもので(しかし描かれているのは地獄)、日が暮れ始めた頃に読み始め、ツール・ド・フランス第16ステージ残り40kmくらいの時間に読み終わった。やっぱり有事のときは金だな、小分けできる貴金属だ、いやなにゲフンゲフン。

エピローグでは登場人物たちのその後の人生を知ることができる。
強制収容所に青年期の3年間を奪われた主人公のラリ、ギタ、チルカ、SSとして関わったバレツキ、それぞれのその後の人生。150万人といわれるアウシュビッツの死者のひとりひとりに人生があり、それは渋谷のスクランブル交差点を横断するひとりひとりに人生があるのとなにひとつ変わらない。なにひとつ変わらない。

関連作品

ハンナ・アーレント(字幕版)
過去にこの作品を見ましたが、「すみません。バカにはわからぬ映画です」でした。

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全部ギンレイホールで見た。
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