なくなった線路探して500km/新千歳発・日高・えりも・中札内・釧路空港帰りの旅

ここ数年は路線バスでまわる北海道の旅というのにハマっておりまして、今年は日高線を巡るコースにしてみた。吉村昭の樺戸監獄誕生物語「赤い人」で、粗末な食事と衣服で一年中、過酷な道路づくりに従事させられた囚人たちの暮らしぶりを知ったが、大変な思いで彼らが切り開いた道や線路が、民営化や利用者の減少・自然災害などでどんどん廃線になっていく。

昨年は、旭川-留萌-稚内-ぐるっとオホーツク海をまわって女満別というルートで北半分を回ってみた。留萌駅が廃駅になることはその時点では知らず、その日は、なぜこのローカル線にこんなに人がたくさん乗っているのかと不思議に思った。カメラを持ったジジィが駅に着く度に座席を立ち、車内をドスドスと歩きバシャバシャ写真を撮り、電車が走り出すとスンと元の座席に戻る。割りと短い区間の路線である。「ずっと立ってろ」と思ったのは内緒です。春になってニュースを知り、「だからあのとき・・」とやっと気がついたのです。

今回行く日高本線は2015年の高波で線路が被災し、その後バスに転換された。苫小牧から様似駅までの116kmのうち、苫小牧から30km地点の鵡川駅が今は終点となっている。鵡川から様似まではJR北海道バスで行く。バス路線のすぐ脇の草むらに錆びてしまった線路や、海岸に残された鉄橋が突然現れる。元々赤字路線だったところにとどめを刺すように災害が起き、会社としては割りと諦めよく廃線にしてしまったのだろうか。

[乗りものニュース]50年前は4000kmあった北海道の鉄道、いまは2500kmに 「維持困難」でさらに半減か

しかし今回乗車したJR北海道バスは、Suicaで乗り降りできて小銭の容易も不要でらくちん。途中で整理券をなくしてオタオタすることもない。車両も新しく座面も快適。窓ガラスもまだ全然曇っていない。ゆっくり走るから沿線の暮らしぶりがよくわかって楽しい。でも私、もしかして路線バス好きって趣味がちょっと地味なんじゃないかしら暗いんじゃないかしらって少し不安に思っています。

旅程

新千歳空港から苫小牧まで移動して、苫小牧から釧路まで、北海道の下側に飛び出した三角形をほぼ海岸線沿いに移動しました、公共交通機関で!

1日目

08:xx 新千歳空駅
- JR北海道 快速エアポート+室蘭本線
09:xx 苫小牧駅

10:31 苫小牧駅
- 日高本線各駅停車鵡川行き
11:00 鵡川駅

11:49 鵡川駅前
- バス 日勝線:静内~向別~様似営業所
13:20 静内本町

13:40 静内本町
- バス 日勝線:静内~向別~様似営業所
16:02 様似

16:15 様似
- バス 日勝線:様似~アポイ山荘~広尾えりも郷土資料館行
17:10 えりも灯台口

2日目

08:15 えりも灯台口(バス)
- バス日勝線:様似~アポイ山荘~広尾行
09:11 広尾駅前

09:50 広尾駅前
- バス60 広尾線幸福・愛国・帯広駅(大樹・更別・中札内 経由)
11:12 中札内美術村

11:15 六花亭アートヴィレッジ 中札内美術村
- 徒歩
13:00 中札内道の駅
- タクシー
13:40 帯広駅

14:18 帯広駅
- おおぞら5号特急釧路行
15:51 釧路駅

1日目

苫小牧駅を出たらすぐ王子製紙の煙突

観光案内所の野田先生の色紙

タクシーで港までぐるっと一周してもらって苫小牧の話を聞きながら、出光カルチャーパークの近くで降ろしてもらう。ポケモンのマンホールがあるのです。

運転手さんがいうことには、「俺が学生の頃が一番アイスホッケーが人気あったね」「苫小牧が釧路を抜いちゃったからさぁ」「苫小牧にトヨタや大企業がたくさんきて結構潤ってるのよ」「16万人いるんだけど、そんなふうに見えないだろうけど」とのこと。まるでトヨタがきたのがつい最近のことのように話してらしたのですが、あとで調べたら苫小牧のトヨタの工場は今年で開業30年とのこと、なーるー。その30年も運転手さんにとってはつい最近のことなんでしょう。

きれいな王子製紙のスケートリンク

王子製紙の存在感たるや凄まじく、企業の名を冠した通りも大病院もあり、いかにこの町にとって大切な企業なのかと。こちらは昔からあるスケートリンク。

ちょうどよい時間になったので駅構内のコンビニでおやつを買って日高本線へ。

鵡川駅到着。車止めのない最終駅。切ない。

鵡川はししゃもの町。道の駅で休憩してから静内まで80分51駅のバスの旅へ。終点の静内の停留所は、かつてのJR駅であり、駅舎は現役として活躍していました。

日高エリアの静川駅は全面的にサラブレッド推しでした。

静内駅で立ち食いそばの店があったのでお稲荷さんを買って簡単な昼食。続いて様似まで2時間22分94駅のバスの旅へ。

海には鉄橋が残されており、これは確かに高波がきたらひとたまりもなかろうと。

日高エリアは馬牧場がずっーーーーと続く。見ていて飽きない。

様似駅。ここが日高本線の本来の終着駅なのだ。

様似からえりも岬まで55分48駅で。

えりも岬の灯台についた。

えりものはるはなにもない春です、吉田拓郎が作曲していたとは知りませんでした。
森進一は歌に恵まれた歌手ですよね、冬のリヴィエラ。

灯台から旅館街まで徒歩10分ほど坂を下って到着。今日の行程終了です。おつかれさまでした。

2日め

もう一度えりも岬に行く。北海道の下側の尖った三角の頂点にいるわけですが、これはどこまで見えているのでしょう。様似、浦河、新ひだか町、日高町あたりまで見えているの? えりもから直線距離で200kmの室蘭が見えているってことはないですよね? 与那国島と台湾が100kmで見えたり見えなかったりしてるわけですから、室蘭はないよねぇ。いやわからんぞ。

えりもから広尾まで56分27駅の旅を開始。晴れて気持ちの良い海を見ながら一路帯広を目指す。

途中コンブ漁をしているひとたちをちらほら見かけた。あの海岸沿いは大きくて立派な新しい家ばかり。も・・・儲かるのかい? ゴクリ・・・

後で知ったのだが、「黄金道路」「黄金トンネル」と呼ばれるこの道は2006年着工、2011年完成の比較的新しいもの。それまでは、大樹町やえりも町は帯広側からは雪に閉ざされ行き来ができなかったそうな。4941mの長いトンネルで、路線バスでこんなに長いトンネルを走ったことってないなぁとちょっと感心した。

広尾駅到着。ここも昔は駅だったんやで。いまは帯広駅まで1時間に1本ずつバスが出ている。今日はまずは中札内の六花亭アートヴィレッジまで移動、55分71駅。

六花亭アートヴィレッジは、広大なポーラ美術館みたいなもの。小さな美術館が点在している美しい森。整備された遊歩道や管理の行き届いた茅葺きの農家など六花亭の本気度を随所で味わう。

帯広駅に行くバスの時刻表を平日ダイヤと休日ダイヤで読み間違えてしまい、帯広市内のタクシーを呼び、中札内の道の駅で合流することに。広大な農道にしか見えない国道のあるかなきかわからぬ幅の歩道を歩いているときはほんとうに心細かった。車が速いんだもの。「まぁあのひと、貧乏だから歩くしかないのね、なんて気の毒なのかしら」と大きめのSUVの車内から後ろ指さされているような気がして(考え過ぎ)。アートヴィレッジから道の駅までの2kmの道のり、あんなに心細い道のりは今までに経験なかった。耕作地の一片の広さが味わえてよかったけど、あんなに心細く感じなくても。。

道の駅で合流した運転手さんは、苫小牧の運転手さんより都会的でスマートで、道央の経済や水産業、道路事情や人口動態など知りたい話を全部聞かせてくれた。あと広瀬すずがいかに素晴らしい女優であるかなど(へー 棒読み)。

六花亭の本店前でおろしてもらい、お土産を買う。アクセサリー入れにちょうどいい薄い平べったい小さい缶も見つけたので大量に買う。猫のちゅーるを入れる缶を探していたのだが、ちょうどよいサイズの丸缶があったので購入する。もちろんお菓子も詰める。

帯広駅で特急おおぞらに。在来線で釧路まで移動してもよかったが、鹿に激突して車内に缶詰になり飛行機に乗りそこねるという事態は避けたかったので、今回は早め早めに釧路まで移動した。その点を考慮すると、中札内から帯広までのんびり路線バスで移動していたら特急おおぞらには乗りそこねることになりかねなかったので、最終的には中札内道の駅からタクシーで結果オーライだったのでしょう、ナイス判断自分!! 中札内から帯広まで9000円、ナイス出費!

JR北海道の特急は、ネット予約すると直前でも安いようなことを広告で訴えていたので次回からは日程決まり次第積極的にえきねっとを利用していきたい所存。

帯広の欲張りセット。よつばのカフェオレ、東京でだったら280円取られても文句いえない代物でした。おいちい。

なおこの六花亭の 22x22x8.5cm の丸缶、ケユカの3300円のリュックにすっぽり入りますので。一泊二日の北海道旅行にぴったりですわよ、ケユカのリュック!

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・撥水加工です
・パソコンのスリーブがあります
・外側ポケットはファスナー付きが1個
・重量270g
・とにかく大きすぎない、厚すぎない、幅も細い
・街歩き用です。山には不向きです

海岸線沿いを行く特急。途中で鶴の家族もみた。

湿原を行く。ここに線路をひくのはほんとうに大変なことだったと思います。ほんとうに!

釧路駅着。駅前の市場で勝手丼を食べる。話題のホタテがとても美味しかった。日没近かったので、港をぶらぶら歩きながら夕焼けスポットを探す。

聞けば釧路の幣舞橋は日本三大夕景スポットというではありませんか。あの山並みが今回迂回してきた日高山脈です。山脈が長い!

そして釧路空港へ。阿寒の観光窓口でもあるので空港はアイヌ文化推し。

総括

今回は、交通事故での渋滞・鹿との事故によるダイヤの乱れが一切なく、出発前に作った旅程表の通りに行動ができました。以前、根室に行ったときは、日没後の暗い駅の待合室で「鹿が・・・鹿の野郎のせいで電車が到着しません・・・」とむなしく響くアナウンスを聞いていたもので、鹿に対しては大変警戒しておりました。ダイヤ通りに動けてなにより。

また、宿では「恐怖!執拗なカニ攻め」にあい、5年分のカニを一晩で食したのではないかと思われます。ほじってもほじっても毛蟹。私は天気運・乗り物運・絶景運はわりといいほうですが、旅先での食事は店選びから失敗しがち。食に関しては毎回消化不良のまま帰途につくことが多いのですが、今回はそういう思いをせずに羽田行きの飛行機に乗ることができました。素晴らしい。

こういう路線バスの旅は昔は実現が難しかったと思う。バスの時刻表を取り寄せるのだけでも大変だったし、そもそも都市間をつなぐ路線バスなんてなくて、国鉄でどこへでも移動できたんだし。

あんなに大変な思いをして切り開いたのに、文明とは。
文明とは。

情報のレイヤーが分厚い本書、おすすめです。
北海道旅事典 (テーマガイド)

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