米沢紬・雪灯篭ツアー


青山・ゑり華さんご一行米沢ツアーに行ってきました。ゑり華と書いて「えりはな」と読みます。
さて、米沢は置賜紬などで知られる紬の産地。藩祖上杉謙信と、領地返上寸前の米沢藩を再生した上杉鷹山をまつった上杉神社で雪灯篭祭りが催されるというのでそれを見に。2月の第2土曜・日曜に開催されるこのお祭りには、年々観光客が増え、その二日間はホテルも満杯になるんだそうな。神社のそこかしこに灯篭が飾られ、夕方からはこなーゆーきー(レミオロメン)も降り出し、たいそうよい雰囲気。織り元をたずね、米沢を代表する染織作家さん三人と夜まで楽しく愉快に交流し、翌日には展示会がありその作家さんたちの作品を堪能し(堪能したり堪能したりお買い物したりですな、おとなの世界にはそういう買い物の仕方があるのです)、最後に原始布・古代織参考館を見学し、太古からの布というものの歴史に思いをはせる・・・という充実の二日間。
原始布・古代織参考館は、着物好きでなくても見る価値がございます。まず建物がいい。古い商家のたたずまいを残した建物の中には、吊り縄のついた階段箪笥や、囲炉裏、繊細な技巧を凝らした建具や指物があり、これで暖房完備だったらすぐさま住んでみたいと思わせるもの。展示内容も大変興味深く、アジアの海洋まわりの国々から集めてきた織り機や、植物から織り出されたあらゆる布、南部藩菱刺し刺し子なども展示されており、アジアの布の歴史、広くはニッポン、詳しくは東北・北海道の織物の歴史を見ることができます。木綿が生まれるまでの日本人の着るものなんて、現代人から見れば麻の編み物程度ですよ! ゴワゴワのスッカスカですよ! たいそう寒い思いをしてきたことでしょう、ブルル。
館内の方がわかりやすく丁寧な説明をしてくださいますので、歴史好きの殿方が着物好きの奥さんをつれていくとよござんしょう。ぜんまい紬の展示も行われており(おとなの買い物の世界では展示という言葉が、お買い求めいただけますという意味もございます)、気の遠くなるような作業の果てにできあがるぜんまい紬の展示もありますので、ぜひ見てください。ここで展示されているぜんまい紬は、ぜんまいの含有量(なんてぇ言い方)が大変高く、その撥水効果の高さに驚かされます。ぜんまい紬は、ぜんまいのさきっちょの丸まったところにぽわぽわとした綿毛が出ますが、それをつむいで作るもの。綿毛のあたりは、サトイモの葉のように細かい繊維で覆われており、それが織物になっても残っているわけですな。

ぜんまい紬の撥水の様子
ぜんまい紬は大変希少で、金額も目ん玉がぶっとぶほどですが、このストールがなんとも風合いよくモダンなデザインで、コムデギャルソンなどをさくっと着こなすY夫人らにぜひおすすめしたいと思います。4月にゑり華さんの店頭で展示会が行われるそうなので、ご興味のある方はゑり華さんホムッペをチェック。
2日間見てまわって思ったのは、東京では(東京だけではないかもしれませんが)米沢紬の評価がなんとなく低いような気がしてならないということ。染織のイロハもわからないただの消費者がこんなことをいうのは不遜かもしれないが、その織物が出来上がるまでの過程を比べたら、南の織物となんら引けを取らないだろうし、寒い中辛抱強くその作業に従事することを考えれば、南の織物よりも大変なのではないかとさえ思われる。
数年前、着物好きの女性と話していたら「私は、東北の織物にお金を出す気はあんまり起きない」という言葉を聞いたことがある。この言葉には、潜在的になにをかを思うものが下敷きになっているように思われる。確かに米沢の着物は、目の覚めるようなくっきりした色合いや、軽やかで光そのものような織物・染物は少ないかもしれない。しかし、どこかで見たことがあるような風景を思い起こさせる、素朴であたたかい風合いのものを作らせたらかなりいい線いってるのではないかと。でもそれは、残念ながら、全時代を通して審美眼ある人たちを屈服させるような織物・染物ではないのかもしれない。それが評価の低さにつながっているのかもしれない。しかし、消費者が着たいのは、そういう人間国宝クラスの技で作られた着物だけなのだろうか? ・・・・なんてことを社長と話しながら帰ってまいりましたよ。
沖縄を撃つ! (集英社新書 415D) (集英社新書 415D)帰り際、東京駅構内の本屋で花村萬月の「沖縄を撃つ! 」という新書を買ってみた。上の考えについての、なんらかの回答が得られるような。
土日の着物
・ぜんまい紬(古代織参考館のぜんまい紬とは作り方がまったく違うものです)の訪問着。染織作家の諏訪好風先生に「いい!」とほめられて、えっへんえへへ、調子に乗ってビール10本くらい飲めちゃいそうな気分に。
・絣で大柄の菊を織り出した柿渋染め。東京駅でばったり会ったゑり華の社長の知り合いのある産地のとりまとめ役のおっちゃんに、コートの裾をぺろっとめくられ(大胆なおっちゃん…)着物をしげしげと眺められてから一言「こりゃかっこいい」と。えっへんえへへ。組み合わせとしてはこの日と同じです。
・帯は二日間通して、塩瀬の梅の帯。Y夫人から頂戴した帯、どこにいっても大評判です。ありがとうございました。そして白いキモノにも、柿渋染めにも似合っちゃうこのステキさといったら! んもうぅー。
・足元は時雨履き。こんなへんてこなドームのついた草履いややーと思ってたけど、透明ドームは思ったほど目立たないし、雪の中でもざくざく歩けるのがたいそう便利。雪が振ったり、雪が溶け出して地面がぐっちょりしたりした中でも足袋が無事。買ってよかった。
・バッグは、人形町「紬の橋爪」さんで買った柿渋染めのバッグ。古代織参考館の方に素材をたずねられましたが、よくわかりませんすみません。このバッグは外にポケットが二つ、中には3つあり、着物と帯どちらか一枚だったら入っちゃう優れもの。一泊二日の着物旅行には最適なサイズ。
土曜の宴会の途中、「このかばん、着物が入っちゃうんですー」とみんなに話したら、ふーんという薄い反応だったんだけど、日曜の朝違う着物でホテルのロビーに集合したら、「えぇー、着替えをもってきたの?」「着物が入るってそういう意味だったの?」とみなさんにおのろかれた。本当に入っちゃうのよ、でもってそんなに大きくないの。35センチバーキンの大きさでその厚さを半分にしたくらいかしらね。仕事鞄にも使えるのよ。でもって軽くて底に鋲が打ってあるの。そしてなんといっても着物に似合うのよ。これは橋爪さんのセンスの偉大さを物語っているわ。去年の秋のきものサロンか美しいキモノに掲載されたとおっしゃってました。
・その他小物は、ラムの厚手の手袋、アラカルラー、ミンクのキャスケット。あぁ小動物たちに生かされている私・・。この形になっちまったからには、私が間違いなく成仏させるまで使い込んでやるから安心してね。
ヒグマ更新
あらっ、諏訪湖でお神渡りが!

2 COMMENTS

さくまり

>歴史好きの殿方が着物好きの奥さんをつれていくとよござんしょう。
おお、うちのことね!
米沢も行ってるんだけど、時間がなくて古代織参考館には寄ってないの。
ぜひ次回は行くわ、と博多の空の下で誓いましたとも。

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スガ

おぅ同士よ!(同士?)原始の時代に思いをはせることができ、すごく刺激を受けると思いますよ。北の国も奥が深くて勉強になりました。私はなぜか米沢を強く応援したいキモチになりましたよ。

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