今日のご本 ムーミン谷の彗星

ムーミン谷の彗星
ムーミン童話の第一話、「ムーミン谷の彗星」。
恐ろしく気味の悪い彗星が地球めがけてやってきています。それはいつか地球にぶつかってしまうかのような勢いで、その日はそう遠くないように思われます。ムーミン谷で静かに平和に暮らしていたムーミンたちですが、どす黒くかわっていく景色に、不安を隠せなくなってきたある日のこと、おびえる子どもたちを見かねたムーミンママとムーミンパパは「そんなに心配だったら、おさびし山の上の天文台に行って調べてきたらどうかしら?」とすすめます。ムーミントロール(いわゆる『ムーミン』、この物語の主人公)とスニフは、ムーミンママの作ったサンドイッチをリュックにつめて、冒険の旅に出るのです・・・・
そしてその冒険の道中で、スナフキンに出会い、天文台にたどり着き、スノークのお嬢さん(アニメでいうところの『ノンノン』)に出会います。
スナフキンのトレードマーク、三角形の帽子に差し込んだ鳥の羽も、この旅の道中で見つけることになります。
この童話、定期的に読んでいるはずなんだけど、スナフキンの軽やかさといったらいったいどういうことでしょう? エコとか持たない暮らしとかそれ以前の漂泊っぷりというか漂々とした感じが素晴らしい。「荷物を増やしたくないんだ」、あぁ、高田純二と同じくらい素敵よ!
そんなスナフキンが歌う「こまったこまった」の歌。
こまった こまった
夜は つめたい
ときは 五時
おまえは ひとり さまよう
つかれた足を ひきずって
けれども 家は見つからない

暗いよ! 暗いよ、スナフキン!
ムーミン谷の物語は、このムーミン版指輪物語から始まるわけです。
世界を邪悪ななんたらが征服するのを阻止するというのではなく、宇宙からやってくる彗星にどう人間として立ち向かうべきか、を探る冒険。特にこの物語は、ムーミンと旅の仲間たちさながら、個性的なキャラクターが登場してきます。
うっかり八兵衛役であり、不平不満を常に口にしてばかりのスニフ、ニヒルでかっこいいスナフキン、主人公が守るべきヒロインはスノークのお嬢さん(この二人のこの物語での、お互い一目ぼれ→相思相愛っぷりはただごとじゃありません)、議論ばかりが好きで手を動かさないおっさんのスノーク(スノークのお嬢さんのにいちゃん)、切手オタクで人生になんも興味を持ってないように見えて、時々恐るべき洞察力に満ちた発言をするヘムレンさん・・・すごいキャラが立ってます。劇画村塾でテキストとして採用されてもいいくらい。
文庫本も出ていますので、お時間ある方ぜひー。スナフキンがなぜ愛されるか、その理由もわかります。各種のライフハック人間たちに読んでいただきたいよ、彼のシンプルすぎる、そして美しき生きざまを見よ!

2 COMMENTS

ようこ

まじでムーミン読みたくなってきました!
アニメにしても、私のように物心つくかつかないときに見たにもかかわらず、スナフキンの格好よさとか、ママとパパの暖かさとか、ミーの屈折した可愛らしさとか、キャラの印象は強く、それだけよくできた世界の物語だったんだなあ、と思います。

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スガ

スナフキンは、ニヒルだけじゃなく、周囲に大変な気配りができる人なのです。しかもそれがものすごくさりげない! 男にするなら彼に限ります!!
ママはやっぱり絶対な存在で、今回のようなカタストロフィの中でも「大丈夫、ママがなんとかしてくれるよ!」と何度もムーミンを勇気づけます。ここに人類の真理が隠されているといっても過言ではありません(過言だっつの)。
明言てんこもりな点もすばらしい。ほんとうに、人生を便利にする道具に夢中になるばかりに、人生を豊かにすることを忘れつつあるライフハックな人たち(失礼なこといってすみません)にこそ、ぜひー!!

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