ゴルゴ13 おすすめの一冊 119巻『白龍昇り立つ』

この巻のタイトルともなった「白龍昇り立つ」は1999年1月13日発表作品。

舞台はヒマラヤ山脈。チベット仏教の世界では、二人の生き神様が指導者となりますが、ひとりが観音菩薩の生まれ変わりとされるダライ・ラマ、もうひとりが阿弥陀仏の生まれ変わりとされるパンチェン・ラマ。パンチェン・ラマは1989年に死んでおり、その後継者選びが行われ、ここに二人のパンチェン・ラマが現われた。ひとりは中国政府が仕立て上げた少年、もうひとりがダライ・ラマが選んだ少年・ラモン。

中国政府にとってラモンは共産化をはばむ邪魔な存在、危険を察した僧侶たちは、ダライ・ラマが亡命しているインドへラモンを送り届けることにした、ヒマラヤ山脈を超えて----。

しかし、ラモンたちを封殺しようとする中国軍山岳部隊が追いかけてゆく。一方、インドにいるダライ・ラマは、パンチェン・ラマのボディガードをある男に依頼していた。その男とは、ゴルゴ13・・・

 

という話。もし、この作品を、1999年の掲載当時に読んでも「またまたー☆んなことないでしょ」という認識しかなかったことでしょう。しかし、中国国境警備兵がチベット人を射殺(銃撃?)したシーンを撮影した動画を過去にyoutube で見たことがある人間としては、ありうる話なのだ、とおののくわけです。

ゴルゴはチョモランマを超えるのにアルパインスタイルを採用します。中国山岳部隊でさえ「極地法など登山家の恥だっ!」と言い放ちます。吹雪の中、クライミング中のゴルゴの姿を双眼鏡で確認した山岳部隊は、こんなやりとりをします。

「なんと狙撃者は東洋人だ!高度の岩登り(クライミング)技術と最新の装備を持っているとなると・・・」
「日本人ですか?」
「あり得ん!
 何度も日本隊と合同で登ったが、
 クライミングが粗雑で極地法しか出来ぬ
 未熟で馬力のない連中だ!」
「(双眼鏡を覗きながら)まるで武道家のような険しい顔つきですね」
「まてよ、世界に評価された日本人が二人いた。
 フリークライミングの平山、それと冒険登山家の山野井だ!」

そう、そこで山野井さんの登場です!

垂直の記憶 (ヤマケイ文庫)

このエピソードは、脚本担当した人の山登りへの愛がみちみちています! 
読んでるこっちがニヤニヤしちゃうくらいです!
今は、極地法で話題の若者もいるようですけど、そこらへんはまた別の機会に。

パンチェン・ラマを送り届ける話なんかは映画化してもいいくらいのテーマだと思うのですが、それを実際に映画でやると政治的にも予算的にも障壁画盛りだくさん! しかし、漫画なら、紙とペンと知恵があれば、漫画なら実現できる! そういう物語のダイナミックさも含めて、面白い作品です。
この巻には、ゴルゴ13と間違えられ殺しの現場に駆り出された日本人サラリーマンのコミカルな小品「間違えられた男」(若き高倉健にやっていただきたい!あるいは両さんか!)、高層ビルを狙った爆弾テロを追い詰める話「臆病者に死を」も収録。政治色の強い「白龍昇り立つ」とあわせて大変バランスのよい詰め合わせとなっております。この機会にぜひお買い求めください☆

 

ゴルゴ13(119) (コミックス単行本)

2 COMMENTS

はつき

ゴルゴは実家にいる頃、父親が「ビッグコミック」を買っていたので毎号、楽しみにしておりました。(思えば読書に関しては雑食の父に私も似たのだなあ)
うう、読みたーい。
ゴルゴとエロイカで、世界政治を理解していたんですよ、若いころの私は(^^)。

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スガ

>ゴルゴとエロイカで、世界政治を理解していたんですよ、若いころの私は(^^)。
わかる!麻生さんもそうだったみたいよ!
初期のゴルゴは長い説明的なセリフが多くて読みにくく、ちょっと少女漫画っぽいんですが、これが70巻あたりから今のスタイルに落ち着いてきます。ゴルゴの眉毛も今のちょうどよい太さに、それまでのゴルゴは小賢しい東洋の小悪党みたいな眉毛でしたものね。
実は、エロイカはセリフが長くてちゃんと読んだことがないんですが、老後の楽しみにとっておきます☆

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