ようこそ極東の島へ!

打ち合わせ祭りの今日、最後の打ち合わせが終わりつつある頃、Mさんから「いま、銀座ー、お茶しないー?」とメール。仕事終わらせてスキップしながら銀座へ移動して合流。先日、私の業病・鞄病の打ち止めとなったバッグを、彼女も色違い・サイズ違いで購入し、『では、私はちょっと勝負感の高いブーツがほしいので靴屋さんにご一緒いただけませんかのぅ』と靴売り場へ移動。事件はそこで起きた。

そこはうなぎの寝床を90度回転させたような横長の店で、試着用にあつらえられたゆったりめのスツールが島続きに並んでいて、そこにはロシア人の若い家族が。店舗の一番奥の飛び石スツールに三十代の奥様、店舗入口の飛び石スツールに買い物袋をたくさん下げた旦那様がiPhoneでずっと仕事の話をしてる。一番長く連なる島続きスツールには4~5歳の男の子が靴を履いたままぴょんぴょん飛び跳ね、専有してる。靴を買おうとしている日本人の客は私たち以外にはなく、あらあら困ったものじゃのぅと思いながら最初は気にも留めてなかったのだけど、ちょっと気になるブーツが見つかり試着してみることに。

ロシアのちびっ子に「ごめんね、ここ使いたいからどいてね」と話しかけても、「なにいってんのこのアジア人?」という顔で一向にどこうとしない。「いや、ここ、あなたの家じゃないから頼むから跳ねるのやめて」と伝えると(日本語で)、右手に持っていたおもちゃのピストルの銃口を私に向けて「バーカ」と言った(ロシア語で、多分、あれはバーカという単語なんだろう)。

「あぁん、このガキャア、人様におもちゃとはいえ銃口向けるとはどういうことやねん」と父親に問い詰めようとしたらiPhone握りしめたまま会話をやめない。カッチーンとなにかが切れる音がして、ふんぬと立ち上がり、母親の姿を探すと、彼女は大変厳しい顔をしてこちらを見つめている。そして私に向かってすっと目礼し、自分の息子を呼び寄せる。

「お・・・おぉ、静かになるんならいいんじゃ、のぅ、広能」とブーツの試着を始める私たち。静かになった店内に、店員さんもやっと近寄ってきて(いままであなたは一体どこでなにを・・・・)「サイズお出ししましょうか?」と声をかけてくれる。ようやく普通に買い物ができるわい、とテンションあがりはじめた私達二人の耳に、しばらくしてからちびっこのえぐえぐ泣きが聞こえてきた。母親が「明日のディズニーランド、あなたはホテルでお留守番よ(ロシア語で)」という声も。さめざめとしたえぐえぐという泣き声は全然やまない。私とMさんは「日本人は決して怒らないって思って今まで旅してきたのかしらねぇ」なんてのんきに話しながら、先ほどの問題は解決したものと思い「あらやだあなたそれ素敵よ」「あなたこそー」とキャッキャウフフ。

しかし静かになったもんですなぁ、と思っていたら、私の前に、涙をボロボロ流しながらかのロシアの息子がやってきた。あらら、これはなに、と慌ててしゃがみ込み彼と目線を合わせる。

 「スミマセン、ゴメンナサイ、モウシマセン(日本語で)」

日本語で謝罪してきたーーーーー! 「もーこういうとこでゲロ吐いちゃダメ! 『ごめんなさい、もうしません!』は?」「にゃー」というウカちゃまとの展開と一緒だ!!!

「うん、大丈夫。もう怒ってないけど、ああいうことはしちゃダメだよ(日本語で)」とこたえる。母親のほうを見ると、彼女はまだちょっと険しい顔で「(こっちは)ダイジョブデス、スミマセン(日本語で)」と返してきた。そのあとエグエグ息子は、iPhoneパパの前に歩み寄り「ごめんなさいごめんなさいもうしません、いい子でいます(ロシア語で)」と謝り、パパは「ふむ」と話を聞き、なにか喋ってる。どんな内容なのかは、その表情からはさっぱりわからないし、試着したいブーツを店員さんが準備してくれたりしていたので、彼らのことは即座に視界から消え、その後、しばらくして振り向いたこの家族はすっといなくなっていた。

私は、何をあんなにカチンときたのだろう。
おもちゃとはいえ銃口向けられたこと? 
ロシアのちびっこに「バーカ」と言われたこと? 
子供の振る舞いに無関心でiPhoneでしゃべり続けていた父親に? 
まぁその全部だわな。
母親はいいです、お互いで親指をグッとさせたいくらいです。

Mさんとはその後、餃子屋さんで夕食をした。食事の後半、「私は何にあんなにカチンときたのでしょうねー」とふと思いついて質問してみた。

「うーん。まぁ、おもちゃとはいえ人に銃口向けるような子は、将来そういう機会がきたら必ず他人に銃口向ける子に育つから、こうやって東洋のおばちゃんに叱られたことはいい抑止力になるんじゃないの?」

そうかー、そうだといいねー。そして明日、彼らがディズニーランドで楽しく遊ぶといいな。そして、「怒るときは他人にしっかり怒る人がいる、あの極東おばちゃんみたいに!」という彼のトラウマが形成されるといいなー、などと思ったりした。

しかし、バカにされてる言葉は、言葉がわからなくてもキチンと通じるってホントですねー。どういう対応が正解だったのかいまだに悶々としてる、正解なんてないんでしょうけれども。「すみれファンファーレ」のロシアからの転校生ソンチェフ君はあんなにいい子なのにー!!!!

すみれファンファーレ 4 (IKKI COMIX)

2 COMMENTS

ふなき

むむ、その光景をちょっと離れたところから見ていたかった。ロシアのちびっ子、アジアのお姉さま方と自分のママンに怒られて、やっちゃいけないことを肝に銘じたことでしょう。それにしても、ロシアンママさん、日本に居たことがあるのかな?謝罪の言葉で「ごめんなさい」はさておき「もうしません」はなかなか出てこないと思う。・・・私の経験では、アメリカも東アジアも小さい子供ほど他人から注意されたり怒られたりしてもあまり気にしないけど、ママンから怒られるとシュンとしますね。日本では逆に母親が叱っても聞かず他人から怒られたらシュンとすることが多いような・・・。
それはともかく、バッグとブーツ、こんど見せてくださいませ。

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ukasuga

彼女の口から「大丈夫です、すみません」という言葉がでてきたとき、「・・・日本語わかる方だったんだ」と冷や汗でたことを告白しておきます。。。

ママとディズニーランドは強力ってことですよ! 今日は晴れたからよいディズニーランド日和になったことでしょう。

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