体液と粘液やらがでてばかり 村上龍も若かった 「限りなく透明に近いブルー」

 
島田雅彦さんが日経新聞の「日経新聞電子版買ってよぅ~」という企画広告のページ内でこんなコラムを書いてらした。経済紙ならではのちょっと強引なまとめ方とも思えましたが、大変印象的でした。いわく、
 「為替と小説は相関関係にある」
村上龍は1ドル360円、遠いアメリカに憧れていた時代の小説、村上春樹はアメリカ文化を「普通に」享受しはじめた1ドル200円時代の小説、外国の男性と対等にわたりあえる恋を描いた山田詠美は1ドル120円時代の小説、ということでした。
山田詠美が直木賞を受賞した「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」は1987年、昭和62年の小説。この頃の円は1ドル130円、安田火災がゴッホのひまわりを53億で買い、国鉄が解体されてJRが発足し、花王のアタック、アサヒのスーパードライが発売開始、鶴田浩二と石原裕次郎が死んだ年。バブルまっただ中のお話だったのね。
それでですな、鮮烈な記者会見のおかげでAmazonベストセラーランキングに登場した田中慎弥氏も話題になっていることですし、そもそも芥川賞ってなんじゃろうか、と思っていたところ、荷物を整理していたらこの文庫本が出てきて、まだ読んでなかったことに気が付き、読んでみたのです。
これは確かに1ドル360円時代の小説。小説に出てくる食べ物は、新人賞を受賞する青年がわざわざ小説に描くくらいなんだから当時はまだちょっと珍しく、ナウでヤングなものを選んでいたのだと思う。思うのだけれども、ドラッグやってる青少年が、ワイン飲みながら暴れてるとか読むとですね、えぇーワインで暴れるのかー、ワインで、ワインかぁ、ワインねぇ、ワインで暴れられるのかしら、ワインでかぁ、ワインじゃ酔いつぶれることはできるけど、セックスドラッグロックンロールぅぅーとか叫びながら、暴れることは私にはできないなぁ、とか。小説が発表されたのは1976年、1973年に変動為替制が導入され、それでも村上龍の青春は、その73年前後の固定相場の影響が強かったことでしょう。そうか、当時の不良はワインで、大事なところなのでもう一度いいますが、ワインで暴れたのかぁ。ワインで。えぇーワインで。ワインでかぁ。
※言葉足らずだったので少々追記。
ワインが当時、なうでヤングな飲み物だったということは認める!、認めます。なんですけれども、この登場人物たちはそんなにお金持ってないの。このコたちにふさわしい、安くて強くてもうちょっと凶暴なお酒が他にあったような気もするんですけど・・・。セックスドラッグロックンロールさまぁ~とワインが、私の頭の中ではどうもしっくりこなくてのぅ。
短歌でまとめるとこんな小説でした。
 体液と粘液やらがでてばかり 村上龍も若かった
さて、ではこれから1ドル80円、75円時代の小説はどうなんだろう。1ドル80円時代なのに、去年の西村賢太の苦役列車は「バブル期の俺の青春ってば・・」と内向きに振りかえる話だったし。ところで映画『苦役列車』の主演は森山未來なのね。彼は、モテキ以来、モテない青年演じさせたらナンバーワンという地位を確立してしまったのかちら、どうかちら!!! 西村賢太氏に敬意を払い、コミカルな映画になってると嬉しいです。

6 COMMENTS

ふなき

ワインといえば、30年ほど前の世間一般庶民のワインに対する考えをあらわした例としてこういうのがあります。
輸入ワインの添加剤に不凍液(ジエチレングリコール)が混ぜられており、これを飲んだ男性が死亡。輸入販売業者は全量を回収するという騒ぎがありました。当時、かなり大きなニュースになり、ワイドショーその他でも取り上げられたのですが、この事件に対するコメンテーターの口吻が一様に(みな一様に!)
「ワインなんてスカした飲み物を、えらそうに自宅で飲んだりするからだ!」的なものでした。
当時、ワインなんてお高いレストランで、ここぞというときに飲むものだったのでしょう。それを自宅でたしなんでいた被害男性に対する、世間のやっかみが感じられる出来事でした(1ドル220円頃のお話)。
今じゃワイン1本ワンコインで買えたりする時代ですもの・・・。昔はオシャレで最先端だったんですよ。ワインを飲む若者って・・・

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スガ

>今じゃワイン1本ワンコインで買えたりする時代ですもの・・・。昔はオシャレで最先端だったんですよ。ワインを飲む若者って・・・
わかる、そこはわかるの!
でもね、このコたち、あんまりお金持ってないの。そういうコにふさわしい、この時代らしい、もう少々凶暴なお酒があったような気がするのよねー。
※この点、上でも補足しとく~!

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ふなき

なるほど・・・把握しました。
70年代のセックスドラッグロックンロール イエ~イ!的なお酒・・・確かに難しいかも。
北島マヤが不良にはめられた時にはコークハイ飲まされてましたっけ。
もう少し前、富島健男の小説だと、1950年代の青春(性春?)の彷徨を象徴するお酒として泡盛が出てくるのですが・・・。曰く、安くてすぐ酔えるとのこと。今の泡盛とはちょっと別物っぽい。

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スガ

そうだ、コークハイ! コークハイと乙部のりえね!
昔の泡盛、すごいんだろうなあ。パタリと寝ていい環境で一度のんでみたいです。

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カヲル

この小説、高校生の時に読んで、あー美大生ってなんてハレンチなんだと思ってました。ムサビ中退だし。
でも作者を見て、創作の方が多いんだろうなと思いましたw

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スガ

破廉恥っていうか、なんだかもう、この時代にネットがあっても、ネットなんかする暇ないってくらいだらだらと忙しい青春だったのね~。ね~。ネットあってもしないわよねぇ~。

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