2012年、デンマーク作品。
あらすじは「映画.com」から
「セレブレーション」「光のほうへ」で知られるデンマークの名匠トマス・ビンターベアが、「007 カジノ・ロワイヤル」「アフター・ウェディング」のマッツ・ミケルセンを主演に迎えたヒューマンドラマ。変質者の烙印を押された男が、自らの尊厳を守り抜くため苦闘する姿を描き、2012年・第65回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞ほか3冠に輝いた。
親友テオの娘クララの作り話がもとで変質者の烙印を押されたルーカスは、身の潔白を証明しようとするが誰も耳を傾けてくれず、仕事も親友もすべてを失ってしまう。周囲から向けられる侮蔑や憎悪の眼差しが日に日に増していくなか、それでもルーカスは無実を訴え続けるが……。
同時にやってきた人生の不遇な事件-離婚とリストラ-からようやく立ち直り、幼稚園の先生という職を得た43歳のルーカス。息子は母親に引き取られ、愛犬のファニー(犬種はスパニエルでした、猟犬なんだね)と一緒に暮らしている。ハンサムすぎる佐々木蔵之介のような容貌のルーカスは、男児にも女児にもモテモテ。ママとパパはいつも喧嘩ばかり、ティーンエイジャーのおにいちゃんは肌色多めの画像とか見せてくる・・・、お家の中でちょっと孤独を感じてる四歳児のクララは、先生であるルーカスに淡い恋心を抱くようになる。ある日「先生しゅきー!」と猛烈アタックするものの、ルーカスから「そんなこと大人に言っちゃだめだぞ!」と優しくたしなめられる。ショックを受けたクララは、幼稚園の年配の園長先生にこう告げ口する。
「ルーカス先生なんてだいきらい!
だって私におちんちん見せたりするだもん!
びびーんって棒みたいになってるんだもん!!!」
デンマークのことわざに『子供と酔っ払いは嘘をつかない』というものがあるそうですが、園長先生も子供がいうことを信じちゃう、怪しげな誘導尋問をしかける精神科医だかなんだかわからないカウンセラーを招いて『もしかして見せられたこと以上のことをされたりした?』などと問わせたりする、こんな怖いおじちゃんと話すのはいやー、あたい、お外で遊びたいと思うクララは聞かれていることの意味もわからずに「うんうんうんうん」と頷く、カウンセラーは「こりゃーやらしかたねー」と話をまとめる、園長先生は父母会で「こんな不幸なことがありました」とルーカスの不祥事を発表、彼らの暮らす小さな街では狩猟シーズンにもなると大人の男たちが集い合って仲良く猟にでかけるようなところなのに、そんなコミュニティの小ささが災いしてルーカスは一瞬にして村から孤立する、仲良くなりかけていた恋人からも「もしかして・・あなた変態なの?」と疑われる、「あのルーカスがそんなことするわけないじゃないか!」と援護してくれる人は息子と息子の名付け親となった友人のみ! スーパーに行けば「おまえに売る肉はない」と追い返され、怯まずにもう一度店内に入ればリンチを受ける。クララの父親であり、ルーカスの親友であるテオも一切聞く耳を持たない。誰も助けてくれない。
この加速する孤立っぷりにハラハラ涙がこぼれてくる。映画の終了まであと10分を切ったところで「どうかお願い、この映画をハッピーエンドで終わらせてください」とスクリーンを見つめながら祈る。そして衝撃のラストですよ!
あぁぁぁぁあ、すごい映画だった。
以下、ネタバレになるので白字で。
クララー、棒みたいになってるのは、おにいちゃんがiPadで見せた画像の中の人のやでぇ。
園長先生、そのカウンセラー、ちょっと怪しげやでぇー。
園長先生、クララママンとの談話のとき、別室で待ってたクララ兄ちゃんおったやろー、真犯人は概ねあいつやでぇー。
クララ兄ちゃん、純真な妹がエライ目に合わされたと思って涙ぐむけど、その原因は概ね兄ちゃんが作ったんやでぇー。
クララママン、クララが「あの話ねー、嘘なのー」と告白した時に、「いい子ね、クララ、人は悲しいことや恐ろしいことがあったとき、それを嘘だと思いたがるものなのよ」ってなにまとめてんねんー!
「衝撃のラスト」は、あぁーこういう手があるのかーというものでして、見終わったあと一時間ほど心底じわじわきました。もうね、主演のマッツ・ミケルセンが良い男過ぎて、クララを演じた子役のアニカ・ビタコプが天才すぎて、デンマークの片田舎・・のわりにみなさんしゅてきなお家にすんでてうらやましいわーとかいろいろ。『HUNT』って、狩る者、狩られる者、という意味だったのねー、とかもう本当によくできた緊張感あふれる映画で、デンマークの風景も美しく、なにもなければ本当に美しいコミュニティもひとたび恐慌が襲えばこんなふうになっちゃうのか、と恐ろしくもなる、見応えのある映画でした。みなさまもぜひ。
高橋ジョージさんの話を思い出しました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8
エピソード参照。
人間の思い込み程、怖いものはないよね。
私の周りにも酷い嘘つきがいて、よく私のせいにされたけど、こちらが違うと言えば言う程、誰も信じてくれないという経験を随分しましたよ。
そうなのよー、あの園長先生が、MISTのあのババァみたいに見えてきて、映画を見てる途中は「くそばばー!」と思ったものです。でも今思うと、きちんと調べなかったとはいえ園長先生にも園長先生なりの人間としての背景があったのだし、と思えてきてしまって。
この映画を日本で撮影した場合、役者さんたちはどんな演技をするのだろう、とも思いました。マッツ・ミケルセンのような演技ができるのだろうか、ただただ大きな声で自分の感情を全部セリフにしちゃうような脚本になったりするのではないかしら、などとも。
よい映画でしたー。