ニッポンの到るところにモンスター/町田康「実録・外道の条件」/「させていただきます」の初出は

実録・外道の条件 (角川文庫)

収録されているのは以下の4編。

・ファッションの引導鐘 1995年5月
・ロックの泥水 1996年4月
・地獄のボランティア 1996年11月
・紐育外道の小鳥 1998年7月

いま、こちらもあわせて読んでるのですが、この頃の町田先生、文体がまだまだ揺らいでる!そこにしびれる憧れるぅ!

常識知らずのモンスタークライアント、自分がのし上がることしか考えておらず、そこで仕事に関わる人たちを単なる手駒としかみなしてないモンスタークライアント、「我らのボランティアの崇高な精神がわからないのですか!」と金に敏感なだけのさもしいモンスタークライアントなどなどに振り回される町田先生・苦難の日々を描いた短編集。読み終わっての感想は20年前の作品なのに、町田先生早いなーわかってらっしゃるなー。

この本を読んで二点、特に「地獄のボランティア」から、みなさまと分かち合いたい箇所がございます。

編集も印刷製本もすべてボランティアでまかなっている雑誌からの取材依頼がきて困惑した町田先生、「ボランティア雑誌なのはわかった、しかしこちらもノーギャラで仕事を受けるのは非常に難しいことを理解してもらいたい」と先方にFAXで返信したところ、「あのような弊誌を侮辱する内容のファクシミリを頂戴いたしましたことを考えますと、やはり当方が取材原稿料をお支払いできないことに対するお怒りなのでしょうか」と書かれた折り返しFAXがすぐに戻ってきた。

侮辱という言葉は刺激的な言葉で、通常の話し合いで、この言葉にたどり着くには相当の時を要するものであるが、堀部(注:FAXの送信者)はごくあっさりとこの言葉に到達、激昂しているのであった。

あ、ありますよね!! こういう人いますよね!!! ついったとか見てるといきなり激昂してくる人。えぇーなんでそんなに怒りん坊なの? なんですぐ怒るの? 「侮辱」とか「オスプレイ許さない!」とか「●●死ね!」とか激しく刺激的なきっつい言葉がすぐに出てくるの? あなたに対する他人の行動は、あなたの行動の鏡写しでございますことよ。熊本地震のとき、ある女性が「自衛隊が救助の見返りとして体を差し出せといってるんです!女性の人権はどうなってるんでしょうか!」とついったしてたけど、いやいやいや、平成のこのコンプライアンス重視の時代にそんなことございますの? というよりも、それってあなたの妄想?願望?そういう設定のポルノ動画が好きだって世界に向けて発信してらっしゃるということで理解してOK? みんなひとまず落ち着け。常に臨戦態勢でいる理由がわからない。スマホ閉じればいいですやん、そんなに他人のことにかまってる時間があったら、お家のお庭の草むしりしたり窓拭きしたほうがよほど生産的じゃないかしら。ただこういう「激しい言葉にすぐ結びついちゃうような人」と関わるとロクなことにならないので、今朝、佐々木俊尚さんが紹介してたこの本を読んでみようと思います。

次に「させていただきます」の件。
私は日常、消費生活や営業生活の中で相手方から「させていただきます」と云われると、「あなたの為を思ってるように見せかけてますがこれがこっちの決めたやり方なんでそれに従ってもらうからねって聞こえるんだけど、そういう意味じゃないの? 『いたします』でええですやん」といつもカックンと引っかかってしまうのだけど、ジェンガみたいに丁寧な言葉を積み重ねれば積み重ねるほど喜ぶ人種がこの世にいるのでしょうか。そういう人のためにある言葉なんでしょうか? へりくだっているように見えるけど高圧的、相手を気遣っているようでいてこれしか解決方法はないので悪しからずというコミュニケーションの断絶、というものを感じます。この言葉っていつくらいから世にはびこっているのかしら、と思ったら、この「1996年11月」とうたれた「地獄のボランティア」に掲載されていました。

新宗教の教団、或いは役所、或いは大学、或いは企業などにときにみることのできる、自らの属する集団の内的なルールに対してまるで疑いのない、「と、させていただきます」「と、なっております」「ご協力をいただいております」「ご理解をいただいて」という物言いに似た、攻撃的な排他性のごときを、ファクシミリの後半に改めて強く感じ(後略)

なんだー、この言葉は20年前から流通してたのね。そんなふうにギスギスしてるから、「あたしがんばってるもん!あたしの組織だとこれがルールなんだもん!侮辱したわね!きぃぃぃ!」なんてやってるから、家電産業の衰退で63兆円もの産業が半分以下になったり、みんなお金が無くなっちゃって、車のローンも組めなくて、若者にお金与えなくて、結婚がいきなり無理ゲーになっちゃって、猫の里親になろうと思ったら「えぇーその年令で飼いだすの?」「収入見せろ」「抜き打ちでチェックに行くからな」などと攻撃され泣く泣くペットショップに行ったり、老後のことを心配するあまりワニの鞄も買えないニッポンになっちゃったのよ! あぁシケてる! シケてる、シケてる!!!! みんなもっと「コグマが生まれました」「ユキヒョウのシポが素敵です!」「キリンの赤ちゃんが小鳥にびっくりしてる動画ですよー」などといったニュースに晒されればいいのよ! いいのよー!!!

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