極北でいま溢れ出すらるらりら/「極北で」ジョージーナ・ハーディング(新潮クレスト・ブックス)

極北で (新潮クレスト・ブックス)

あらすじは本の裏表紙から。

1616年、北極海。
たったひとりの越冬。

1616年8月、英国の捕鯨船が男をひとり極北に残して、
帰航の途についた--。英国人女性作家が400年前の
航海日誌から紡ぎだす、壮大なデビュー長編。

イギリスのサフォーク生まれの若者が捕鯨船の中で出会った同じ土地生まれの自分と同じ名前の年上の男。ひょんなことから、その男は、海図に名前ものっていない島で、誰も経験したことのない極地でのひと冬を過ごすことになり・・・・。

イギリスのサフォーク。

主人公が過ごしたグリーンランドの名前もない島。
スヴァールバル諸島。捕鯨船が行き交っていた極北の海。
地図を拡大してなんとなくの距離感つかんでください。
すごい移動してる、北欧版黄金の日日!

ノルウエー領スヴァールバル諸島にあるエデゲ島、google map で見るといきなりホッキョクグマの写真が出てきますから、どれほどの極地かおわかりいただけるのではないでしょうか。

日本でいえば大阪夏の陣の時代に生きる英国の捕鯨船乗りの男が、こんなに格調高い文章の航海日誌が書けるものなのか少々疑問に思っつたが、訳者あとがきでそのあたりの事情をうかがい知ることもできた、そうなんだ書けるんだ、全然暗黒の中世じゃない(あれ、中世っていつからいつまでの定義?)。物語全体に17世紀初頭の価値観よりも近代のそれがのっかっているような気配がしないでもなく、訳者の方も苦労されたのではないか(偉そう)。しかしオランダとイギリスの捕鯨事業はなかなかに凄まじく、そらーそこまでのことを過去にやってたら「捕鯨反対!」って現代で叫ぶのも無理もないかと(ああいうのは自身の後ろめたさもあるんじゃないかな)。

 

物語の最後の主人公の長台詞は、全文書き写しておきたいくらい迫力があり、悲しく美しいものでした、アシリパさんが父親が残してくれたものを見つけたときのセリフがこれだとしても全然違和感ないくらい。

新潮クレスト・ブックスで。あたい、ソフトカバーの本、だーいすき! 
新潮クレスト・ブックスの寒そうな土地の物語だとこちらも記憶に残ってる。毎年冬になると読もうと思うのだけど、厳しい土地の厳し物語で、いつもタイトルをちらと見て、そのまま読まずにしてしまうのだけど。

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

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