パリの調香師 しあわせの香りを探して（原題：Les Parfums）
気難しい調香師レディと、冴えないけれど心優しく善良な運転手の物語。よかったですよ。しみじみととてもよい映画でした。レストランで運転手が調香師に諭すシーンとかとてもぐっときた。またラストシーンのおちゃめな演出も。ちょっとつまらない平凡な副題がつけられちゃってますが、とてもよい映画でした。
テーラー 人生の仕立て屋
アテネで36年間高級スーツの仕立て屋を父と営んでいる寡黙なニコス。しかし不況で店は差し押さえられ、父親は入院、崖っぷちに追い込まれたニコスは・・・。ニコス自身も既に初老の年齢、そこからどうやって再構築していったのか、また、それを手助けした隣家の家族とのやりとりもとても優しく美しいものでした。監督は1982年生まれのソニア・リザ・ケンターマン。鑑賞後にこちらの記事を読まれるとよいかもしれません。
二本とも、中年が主人公で、人生と仕事というテーマの映画です。調香師の映画ではKUBOTAに、テーラーの映画ではSUZUKIにぐっときます。ぜひその目で確かめてー。みなさまもぜひー。
アフリカン・カンフー・ナチス(原題：African Kung-Fu Nazis)
第二次世界大戦後、ヒトラーと東條英機は潜水艦に乗ってガーナに亡命し生き延びていた。彼らは現地人を洗脳し、ガーナアーリア人として一大勢力と拡大させていた・・・・。こんな映画作って公開していいのかというとてもふざけた映画。ガーナ・ドイツ・日本の共同制作。空手とカンフー、そんなにみんな好きなのか！と呆れながら見た。でもガーナ発の映画を生涯で初めて見たことになり、「自分たちの好きなもので面白いもの作ったる！」というエネルギーに満ちた作品でした。でも、バカバカしい！！ほんっとばかばかしい！ 「必殺！恐竜神父」を微笑ましく見られる人でしたら、見る価値はあり。しかし君たち、ほんっと空手とカンフー大好きなんだね！blank13
監督：斎藤工、主演：高橋一生・松岡茉優・斎藤工・神野三鈴・リリー・フランキー。ギャンブルに溺れ、借金を残して蒸発し、13年間音信不通だった父が余命3か月で見つかった・・・。「万引き家族」へのアンチテーゼかな？ 高橋一生のやるせなくこの人生を選んでいるという佇まいが素晴らしかった。監督は斎藤工。「やるじゃないか、斎藤工」「ありがとう、斎藤工」。
田中澄江「夫の始末」
田中先生のお気に入りの着物と墨壺であしらわれた表紙のご本をめくると、そこから「結婚」に対する女８６年分の思いの丈が濁流のようにあふれてくる。「あなたがこんなに消極的なもんだから、50歳にもなってるのに私がたくさん仕事しなくちゃいけないんです！」といって仕事している田中澄江先生。でも先生は９１歳で没するまでずっと仕事してらした。さらに８６歳の時点でも3000mの山に登ってた。なんてパワフルな！現在、Kindle Unlimited で田中澄江先生の作品がたくさん解放されているので、ご興味ある方はぜひ。
妻のことを「おい！」と呼んだことをきっかけに、警官の夫を殺した教師の女の話が挿入されている。昭和27年に発生した荒川放水路バラバラ事件のことだと思われる。素行の悪い粗暴な夫の振る舞いに耐えかねた上での犯行。
長谷川町子のサザエさんにも似たような四コママンガがあった。路上で警官がある女性に向かって「おいこら！」と声をかける。見かねたサザエさんが「突然おいこらってなんですか」とつっかかる、警官は「いやしかし こいつはうちの家内でして」と言い訳をする。サザエさんは続ける、「夫が家内に向かって『おい こら』とはなんです！」と。この漫画も同じ時期に書かれたものなのかなーと思ったりしました。
Neverland Diner――二度と行けないあの店で 都築響一
「どこにあるかわかんねー」とか「もうなくなっちゃったよ」とか「事情があっていけない」、あるいは「くっそまずくてもう行かねえ! 」とか、そういう誰かの記憶に残るお店の数々を、人気芸人からアイドル、作家、ミュージシャン、映画監督、芸術家、マンガ家、イラストレーター、クレイジージャーニー、クリエイター、編集者に女王様まで、各界の著名人総勢100人が100通りの文体で綴る悲喜こもごもの人生劇場。東京の生活史・飲食店版。あ、もちろん東京以外の飲食店も多数登場しています。本の最終盤に登場するフィリピンパブのエピソードは、書き手の男性の狂おしいほどの愛にこちらが押しつぶされそうになる傑作でした。
先週の動き
中国がサウジアラビアとイランの国交仲裁を取り持ち、アメリカで銀行が2つ破綻して、そのあとクレディ・スイスにも飛び火、ビットコインが爆上がり（あたしゃ持ってませんけど）、なのに日本国民一丸となってＷＢＣに（というより、日本でプレーする大谷に）（あとちょっこしダルビッシュにも）夢中で商店街はあきらめムードの９回裏、日本戦の夜には早めに暖簾をしまっちゃうお店がちらほら。寒くなったり暖かくなったり桜が咲いたりと季節が動くことを感じた一週間でした。猫は元気です。その他カーリング世界選手権を見ています、がんばれロコ・ソラーレ！
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