今週の本と映画と魚料理/「おろしや国酔夢譚」など

概況

11/28-12/4 映画「首」を見た。私は好き。小林薫のたぬきっぷりが最高でした。google画像検索の精度がどんどんあがっていて驚嘆する。夕飯の時間を一時間早め魚料理中心にしたらするする体重が落ちた。素晴らしい。その他井上靖祭りを開催。

井上靖「穂高の月」

ヤマケイ文庫 穂高の月

ヤマケイ文庫。井上靖のエッセイ集。父親が軍医だった関係で生まれは旭川第七師団の官舎、伊豆湯ヶ島で育つ。43歳で芥川賞受賞、翌年から本格的に作家活動、50歳から登山を始め、上高地や穂高に毎年のように通うようになる。ヒマラヤにだって行っちゃうし、取材旅行で敦煌にも行っている。プロになってから残した作品は膨大な量で、さらにこの移動量、なかなかの体力お化けだったのでは?

井上靖「おろしや国酔夢譚」

おろしや国酔夢譚 (文春文庫)

遭難した伊勢の船頭・大黒屋光太夫は7ヶ月の漂流の後、ラッコ猟遠征にきていたロシア人たちが暮らすカムチャッカのアムチトカ島に運良く漂着。ロシア人毛皮猟師たちを迎えに来る船に便乗させてもらい、ロシアに行くことを目指すが、その船は到着の翌日あえなく破船し沈没。悲嘆に暮れるロシア人猟師たちを尻目にありあわせの材料で船を作りはじめ、やがてラッコ猟ロシア人たちの協力も得て、最後は皆でカムチャッカへ。アムチトカ島の4年の滞在の間にロシア語を習得した彼らは、その後、オホーツク、ヤクーツク、イルクーツクへ移動することになる。イルクーツクからは、彼らの日本帰還に奔走してくれたラックスマンとともに、モスクワ、サンクトペテルブルクへ3000露里の旅へ出て、とうとうエカテリーナ二世に謁見することが叶い・・・・。

移動距離っ!!! 9年9ヶ月の移動距離っ!!!

日本に帰国した彼らは、半分蟄居幽閉されてその生涯を終える・・・日本になんてかえって来なければよかったのにっ! ロシアの文明超よかったーーと帰還した光太夫と磯吉は思ったことでしょう・・・あわれ我が国の鎖国政策よ・・・・。光太夫はロシアで日本の地図や書物を多数目にすることになるのですが、出ていくものに関してはザルザルだった我が国の鎖国政策よ・・・。

などとあわれな気持ちで光太夫について調べてみたら、最近新資料が見つかり、そんなにガチガチの幽閉ってわけでもないことが判明。伊勢に帰っているし、割とのんきな暮らしだったらしいということもわかり、その新資料に基づき書かれたのが吉村昭の「大黒屋光太夫」。またここで吉村昭が! 読まないと!

大黒屋光太夫(上)(新潮文庫)

映画「おろしや国酔夢譚」

おろしや国酔夢譚

読後すぐ居ても立っても居られなくなり、映画の「おろしや国酔夢譚」を見てみる。制作は大映(現在のKADOKAWA)、1992年公開。好景気ジャパンの超潤沢予算の巨大ロケ敢行の大作です。

大黒屋光太夫を緒形拳(すごくよかった・・・)、現地妻とよろしくなってしまいロシアに残ることになる新蔵を沖田浩之(彼が生きていればいったいどんなよい役者になったことか)、厳寒期の長距離移動のため凍傷になり右足を失い、ロシア正教へ帰依し彼の国へ残ることを決断した庄蔵を西田敏行(野心に満ちた俳優の顔をしていてとてもよい)、ロシアまで行き根室に帰ってくることができたのに・・・の小市を川谷拓三。どうみてもそこらへんの日本人フェイスのアリューシャン列島の現地人たち、リアルなアザラシ漁(あのアザラシが死んでませんように)、雪原を走るトナカイ橇、駅で何度も乗りかえられて一目散に走っていく馬橇、氷の割れる川、沈まぬ太陽、シベリアとサンクトペテルブルクの充実したロケ! さすがKADOKAWA、金がある!!

光太夫の時代に開国していたら一体どんな世界絵図になっていたことか。。などと思いを馳せつつ。とてもよかったのでみなさまもぜひご覧あれー。

 

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