概況
1/8-1/14 読書読書読書三昧。仕事始め。刺繍。句会。映画「窓際のトットちゃん」「コンクリート・ユートピア」、どちらも見応えあり。
句会に着物で
冬の猫撫でれば喉が鳴る装置(鶉)
我ながらいい句だなぁ。
斉藤上太郎のジャージ着物に、とても〆やすい鳶八丈の半幅帯。裾除けは履かず起毛素材のぬくぬくレギンス、襦袢もTシャツ襦袢でらくちん装備。足元はUGGの厚底スニーカー。襟巻きは20年前に松屋銀座のバーゲン籠から救出したアライグマ風毛足ふさふさのマフラー、撫松庵のむかーし買ったウールのコートに、エではじまってルメスで終わる鞄屋のモグラ色のボリード。片手には句会で飲むためのスパークリングワイン。いい装備!
Tシャツ襦袢
ふぁんじゅのTシャツ襦袢。袖は筒袖、生地はコットン。スポッとかぶるだけで衿がビタっと決まる。マジか。着物業界は進化を止めたガラパゴス業界かと思っていましたが、こんな便利な襦袢ができていたとは。私にとっては一枚で肌着&襦袢を兼ねているので、腰紐が2本不要になる。マジか。
UGGの厚底スニーカー
以前友人にそそのかされて購入したものの、思っていたよりも厚底が厚くその分重量もあり重く歩きにくく、正直持て余していたのだが、1年くらい下駄箱に寝かしておいたら使い所がなんとなくわかってきて、最近ピンポイントで活躍し始めた。ハイヒールを履くまでもない、しかし常用のスニーカーで出かけるのもなんだしという時に着用するとよい。スニーカーで着物着るようになったらとても体が楽になった。
腰紐は嫌い(Tシャツ襦袢で腰紐2本減らすことに成功)、草履もつらい(スニーカーで解決)、足袋は足がくたびれる(スニーカーなので靴下で)、和装ブラは肩が凝って途中で泣きたくなる(最近はナチュラルなラインをつくる洋装ブラで済ませている)・・・どうしてそんな思いをしてまで着物を着てきたのか、我ながら本当に疑問です。まぁ着るんですけれども、たくさん買ってしまっているので。
映画「窓際のトットちゃん」
子供の頃読んだ「窓際のトットちゃん」が映画になって帰ってきた!
長野の山奥で暮らす小学生が字面からだけでは想像できていなかった戦中の世田谷区の富裕層の暮らしにクラクラした。戦争が進んでからの描写はとても控えめで、見る側がそっと気づくような表現が続く。首輪だけ残し姿を消した愛犬ロッキーの犬小屋の描写はたまらなかった(戦時中には外套の毛皮を作るため、飼い猫を駆り集めていたという話を聞いたことがある。物資調達でも戦略でもなんでもなく、単なるサディスティックな思いが原動力になっている徴収でしかなかったのでは)。
良作。シアターに私を含めて8人しかいなかったけど、良作でした。
映画「コンクリート・ユートピア」
あらすじはeiga.comから。
大災害により荒廃した韓国・ソウルを舞台に、崩落を免れたマンションに集まった生存者たちの争いを描いたパニックスリラー。
世界を未曾有の大災害が襲い、韓国の首都ソウルも一瞬にして廃墟と化した。唯一崩落しなかったファングンアパートには生存者が押し寄せ、不法侵入や殺傷、放火が続発し・・・・
音楽ヨシ、照明ヨシ、脚本ヨシ、演者ヨシ、CGヨシ、韓国映画の底力を存分に見せてくれるパニック・スリラー・ディザスター・ブラック・コメディ映画。団地社会や組織の話だからなのか、韓国語に取り込まれた日本語がたくさんでてきます。ちょっとびっくりする頻度です。
アジアの至宝・ソウルの原田泰造といわれているイ・ビョンホンが、冴えない中年男性を演じています。アメリカに赴任してフラッと入った美容室で「あーはいはい、アジア人ならこの髪型でしょ?」と乱暴に角刈りにされてしまったかのような髪型で登場しています、ひどい、ダサい、髪型って大事! この俳優さんはこんなに引き出しがあるのかと驚きました。素晴らしいですよ。脇役に朝ドラ「らんまん」の波多野さんというか波多野さんを演じた前原滉さんみたいな人がでてきます。波多野さんロスの人は急げ(でもほっこりはしない)。
見終わって劇場を出たあと、東京の街が崩壊していなくてよかったとじわっとした。それくらい没入できる映画です。大画面でぜひ、シアターに18人しかいなかったけれど。
「日本の鬼図鑑」
全鬼の能力をレーダーチャート付きで解説している本物の「鬼の図鑑」。第三章の「鬼になった人間」は、能楽初心者が目を通しておくと理解が進むであろうよき解説群。鬼への素養が深まり、ひいては日本文化への理解も進む良書です。
橘玲「無理ゲー社会」
「年をとった女はモテない」「貧乏な男はモテない」、えぐいー。
「政治(友情)空間が縮小すれば、その外側にある貨幣空間が拡大する。共同体の濃密なつながりに依存していたことをすべて金で解決するようになっている」、んだー、昭和の風景とそこはものすごく変わった。私の祖父の葬式は、ふすまを取り払い和室を三間つなげて執り行ったが、それ以降は近所の人も葬祭場で済ませるようになった。
「機会均等というものは、実際に適用されると、不平等になりうるということが社会主義者にはわからなかった」、リベラルとは。
「アメリカには、ロッキー山脈に沿って南のアリゾナから北のアラスカまで走る「自殺ベルト」がある」、映画でみたー。
「(アメリカの)絶望死の原因の大半が低学歴アメリカ人から長期的に機会が奪われたことにある」、エグいよぅエグいよぅ!!
私は塾にも通わず家庭教師もつけず自分の学習の積み重ねだけで進学をした人間なのですが、山奥の裕福でもない家の子が社会に出る足がかりを低コストで獲得できた最後の世代だったりしたのでしょうか? 今の子、大変!!
「若い子たちにこれ以上負担を背負わせるわけにいかないでしょ?」ということで「老後二千万円問題」をぶち上げてきたのでしょうけれども、社会全体の底意地の悪さ、デジタル化へのアレルギー、ばかみたいなガバガバのバラマキ政治、そういったぐちゃぐちゃしたものがいまの日本を作り、その中を生き抜いていかないわけで、いやほんと無理ゲー。でもアメリカの絶望死のくだりや「恵まれていない白人」の章を読むと、まだラッキーなんじゃないかなとも思う。
みなさまもぜひー。