町山智浩の『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks)　町山智浩
映画コラムでおなじみの町山さんのご本。お堅い政治経済評論家があぁだこうだいうのではなく、近所の物知りにいさんがスターバックスでおしゃべりするように、わかりやすい口調で語りかけているアメリカの今。書評というほどおこがましいものではありませんが、以下、この本のエッセンスと感じられた箇所を抜き書き。
サブプライムの借り手は全体の３０％以上もいて、すでに多くが返済できずに家を差し押さえられている。
バカなヤツらと責めてはいけない。アメリカ人は住宅以外に老後を託すものがなかったのだ。
「リベラルの人たちはハンディキャップのある人が努力して社会で成功するのを賞賛しているわ。だったら、ブッシュのことも認めるべきよ。彼は、知的障害にもかかわらず、大統領にまでなったんだもの」
１７年間、ウォルマートの管理職の教育係を務めてきたウェルドン・ニコルソンはカメラに向かって言う。「新しい町に開店する時、管理職は地元の商店街に行って、このうちの何軒がいつまでに潰れるか、賭けをするんだ」
マケインは自分がイデオロギーや国の違いにとらわれず、弱者や兵士に共感できる人間になったのは軍隊のおかげだと言っている。
国民皆兵制度とは戦争に勝つためだけでなく、身分や肌の色が違う若者たちが寝食はおろか生死をも共にする経験を得るための教育システムなのだ。金持ちの生活しか知らない二世・三世議員ばかりじゃ、戦争や福祉につて庶民の苦しみを理解した政策を期待しても無理か。あ、日本もね。
シンプソン家の長男バートが「悪夢に苦しんでるんです」と精神科医に相談する。「自分がアニメのキャラで、商業的に成功したことで、狂った右翼プロパガンダのニュース局を支えてしまうという悪夢です」
（アメリカ大統領選挙の民主党から名乗りを上げた８人の公開ディベートで。質問はYoutubeで一般の人から寄せられた。総数2300本、そのうちの20本が公開質問となった）誰もまともに答えられない質問もあった。「候補者のなかに肉親を戦場に送っている人はいますか？」イラクで息子を失った親からのビデオだった。
マイケルムーアも映画にしたアメリカの健康保険の問題は、背筋が凍るものがあります。憤慨するほど保険料が高くても、まったくの健康体で全然病院にいかなくても、それでも「国民皆保険」のありがたさよ・・・。しかし、近い将来日本の国民健康保険も民営化される可能性がないわけではないと言われています。そのときに、映画「シッコ」の中で「なんて気の毒な！」と同情された人たちは、私たちになるわけです。アメリカほどアホで救いようの無い未来がこないと願いたいものですが、どうなることやら・・・。
ウォルマートの話も日本で同じことが起きているわよね。私の実家の最寄り駅の駅前商店街がみごとなシャッター商店街になっています。そこからさらに車で５分行ったところに、イオンのような郊外大型店舗が出来たから。かつてはのどかな田園風景だったそのど真ん中に！　雇用を作ったのも事実でしょうが、シャッター商店街も作っちゃったよね・・。こんなところもアメリカの後を追っているんでしょうかね。
巻末の終章にさす光が印象的でした。ペーパーバックのグリップ感もよい本なので、コリントのトイレとかにおいておくといいんじゃないかしら。
まだ読んでないけど、こんなご本もあるようです。

おまえが若者を語るな! (角川oneテーマ21 C 154)　後藤 和智
「下流社会』を描いた三浦展や、香山リカらに対して「おまえが若者を語るな！」と。三浦展は、要約すると「地方にイオンとかがたくさんできたから、いろいろとダメなんだよ！」という本を出していますね。

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)　三浦 展