かくも若者は酒を飲む 角田光代「愛がなんだ」

私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ」--OLのテルコはマモちゃんに出会って恋に落ちた。彼から電話があれば仕事中でも携帯で長話、食事に誘われればさっさと退社。すべてがマモちゃん最優先で、会社もクビになる寸前。だが、彼はテルコのことが好きじゃないのだ。テルコの片思いはさらにエスカレートしていき・・・・。
直木賞作家が濃密な筆致で綴る<全力疾走>片思い小説!

テルちゃんとマモちゃんは酒ばっかり飲んでる。
テルちゃんの友達の葉子とも、また別の友だちの山中さんともよく飲む。
マモちゃんはすみれさんが好きで、すみれさんはマモちゃんがあんまり好きじゃなくて、
そんな二人を見つめているテルちゃん、しかしこの3人でもよく飲む。
とにかくよく飲む小説で、飲むか、ぼんやりと仕事しているかのどちらかで、
 私も二十代後半ってこれだけ酒飲んでたかもーと思いながら読む。
そして最後、自分自身が物語の中に入ったように、ダメな女友達を心配するように、
「テールーちゃーん!!!」と、片手でクッションをバンバンやりながら、
大きく突っ込んで物語は終わる。「テルちゃーん!!!」
片思いすげぇ。執拗にすげぇ。夜中の渋谷のカフェで、「うわーん、あの人、他に好きな人がいるに違いないー」と友達が泣いてるときに、「ぐへへへへ、それはそうともう一杯飲んでいい?」と返すようなトンチキな女には、この片想いのエネルギーのでどころがよくわからない。
テルちゃんとマモちゃんら登場人物たちの暮らしぶりはリアルで、この物語が書かれたのは2003年、そのまま元気に生きていれば登場人物たちは今は35歳くらいか。twitterとかやってるのかしら。たんぶらーとかやってるのかしら。テルちゃんは、どこか職につけたのか、あるいは誰が読むともわからないヘタレ恋愛ブログでも書いているのか。「おれ33歳になったら会社やめるわ」といいながら神楽坂のデザイン事務所で働いていたマモちゃんは、紙ものデザインをやめてウェブ制作の会社にでも入ったんじゃなかろーか・・・・などと、読み終わってから、ちょっと物思いにふけったりした。
2010年度版子羊文庫から。

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