この本を読め!佐藤愛子の「血脈」


<主な登場人物>
洽六(佐藤紅緑)・・・小説家。高い理想を持ちつつ、荒ぶる情念に引きずられる男。佐藤家を巡る物語の源である。戦前戦後を通じ少年小説で一世を風靡し、昭和二十余年死去。
シナ(万里子)・・・洽六の「宿命の女」。大正四年女優を志して上京するも、洽六の執着に負け、二番めの妻となる。生涯を賭けた舞台への夢を断念させられた。早苗、愛子の母、
八郎(ハチロー)・・・洽六の長男。不良だが、父譲りの文才と福士の慈愛を受け、詩人になる。
節(チャカ)・・・次男。その虚言癖で、度々金の問題を起こす。愛人と広島で原爆に遭い、死す。
弥<わたる>・・・三男。五歳で伯父の家にやられ、肉親の情愛を知らずに育つ。フィリピンで戦死。
久(キュウ)・・・四男。節の嘘のため、十九歳で女と心中した。
喜美子・・・長女。洽六に溺愛されるが、若くして肺病で世を去る。
ハル・・・洽六の最初の妻。シナの登場により離縁され、息子達を残して死ぬ。
早苗・・・洽六とシナの長女。
愛子・・・次女。洽六の愛情を一身に受ける末娘。
福士幸次郎・・・洽六が心から信頼する同郷の詩人。淳朴な人柄で、佐藤家の厄介事の始末を引き受ける。
昨年、Y夫人から借りたものの読まずに置いておいていたのだが、夏は女流作家のガチンコ長編小説を読むのがよいよねーと本棚から取り出してみた。文庫版「血脈」の表紙をめくると、佐藤洽六の血縁関係図と主な登場人物をまとめた折り込みがはらりと広がる。それが上の内容なのだが、ちょっと待ってください、なんですか、この波乱万丈っぷり。大正・昭和を駆け抜けたひとつの家族の実話なのだけれども、物語を読む前にがっくりと膝をつきたくなるようなこの凄絶さ。「兄に騙されて弟が心中」とか「その兄は愛人と、彼の人生に縁もゆかりもない広島の土地に偶然立ち寄り、原爆で死す」とか!!! 人気作家の佐藤紅緑も穀潰しども四人に仕送りするわするわしまくるわ、結婚した息子の所帯に毎月送金するとか、その息子もでっかい借金こしらえて父親に尻拭いさせるわ、えぇ? なにそれ? 一体なんでまたそんなバカ息子ができるわけ?  
そんなバカ息子ができあがり、ありとあらゆる迷惑をかけ、死んでいく壮絶な「血脈」の物語。
おもしろすぎる・・・・。「おれ、この仕事アップしたら、血脈の続き読むんだ・・・・」とつぶやきたくなる本格小説です。昨日も六本木で打ち合わせした後、まっすぐ帰ればよいものを、地下鉄でじっくり「血脈」を読みたくて、普段なら大江戸線都庁前まわりでさくっと帰るのに清澄白河まわりで50分もかけて自宅に帰ったもんですよ。だって面白いんですもの!!!!
今日、上巻が終わったので、これから中巻に。「ちゅうかん」と入力して香港の「中環」と出るあたいの入力辞書のいとおしさよ。よよよ。
自分メモ:みるみる映画2011 9月
・ハンナ http://www.hanna-movie.jp/
・サヴァイヴィングライフ http://survivinglife.jp/
・シャンハイ http://shanghai.gaga.ne.jp/
8月の映画メモ
・まほろ駅前多田便利軒 この映画も上の大鹿村騒動記も、年配のくせのあるおとっつぁんの役は岸部一徳が演じてる。日本には岸部一徳しか俳優がおらんのかー!
8月のテレビドラマ
・胡桃の部屋 火曜夜10時からのお楽しみの向田邦子のドラマ。松下奈緒、井川遥、臼田あさ美というありえない美人3姉妹がそれぞれにそれぞれの悩みを抱えながら、父親(蟹江敬三)の失踪とそれに伴う母(竹下景子)の変貌に戸惑いつつもなんとか乗り越えていこうとする・・・するのだが、ここにバブル到来直前の昭和のサラリーマンをよく演じる男「原田泰造」が登場だー!!!ぎゃー!!もー俳優でいいよ!お笑いやっててもいいけど、俳優でいいっすよ! うん、蟹江敬三の衣鉢を継ぐのは原田泰造でいいっすよ! 蟹江敬三のだめなおとっつぁんぷりがまたよくってねぇ。
NHKがこのドラマにいかに力をかけているか、それを確認するために、毎回正座してみてます。本気の向田ドラマだなー。、向田邦子全然色褪せないなー。
あとね、井川遥が美人過ぎて困る。
その他、ウカ様の帰還、超円高の毎日、同じ名字の打者が大活躍中の日大三高、明日はがんばれー、などなどいろいろでございます。みなさま、よい週末を。

2 COMMENTS

koyuki Y田

Y田です☆
確か、かなり前にこの原作、りえちゃんが主演で(シナ)ドラマになったような記憶が‥
詳細はあまり覚えてないんですが、庇髪に結ったりえちゃんのほんのりいろっぽい姿、紅緑さんがなくなったときの喪服姿が目に焼き付いています。
愛子さんの小説はユーモア系が好きでしたが、あらためてこのような作品を読んでみたくなりました。

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スガ

登場人物が吐くセリフのひとつひとつになまの息遣いが感じられて、物語の中ではない、生きていた人の言葉なんだなーと感じられます。

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